水暖簾(みずのれん)
25, 2017 20:09
達筆で、詩とかを書くのも上手なおじさんだった。新聞への投書は数えきれないくらいしていたみたい。クレームとかじゃなく、いい話し、感動する話し、泣かせる話し…みたいなのが得意だった。
浅草に大きな花屋の店を構えているのに、商売とは待つものではなく、仕掛けるものだというテーマで、リヤカーを使って町中で花を売りさばく姿を週刊誌に取材されたこともある。リヤカーによる販売は本当の話しで、実際、ものすごい働き者で、仕事以外に道楽もなく、お金の無駄遣いは一切しない人だった。
ただ、週刊誌の記事も、自分で投稿する文章も、確かに読むと感動するレベルに仕上がっているんだけど、とにかく「ウソ」が多い。実話のように書いている内容は、実は創作だったというパターンばかり。
姪っ子である俺の母親をモデルに書いた新聞投書は、早くに亭主を亡くし、女手一つで2人の子供を育て上げた姪っ子が、とても不憫で哀れに感じており、叔父としてこれからも暖かく見守ってあげたい…という内容。でも、その時、ウチの父親は普通に生きてたんだけどね。こんな感じのウソの内容を投稿する。
もっと酷いのが、タイトルに書いた「水暖簾」という話し。これはフジテレビの「奇跡体験アンビリバボー」に投稿した話しで、いわゆる怪談話し。主人公はおじさんの身内で、実際に起きた恐怖の話しとして投稿、採用され、再現VTRも放送され、おじさんの家に撮影クルーも来て、自宅の庭でインタビュー画像を撮られ、それも放送された。
全国ネットのTV番組で、「実話」として放送されたウソの話しはこんな感じ。
おじさんの兄弟だか従兄弟だか、身内の人物が、占い師だかに「水難の相が出てる。〇月〇日までにあなたは水死することになるだろう」と告げられた。その人物は死にたくないので、海や川はもちろん、沼や池にも、小さな水たまりにも近づかないよう、告げられた期日まで生活を続けた。
いよいよ最終日、今日を乗り越えればもう大丈夫と思い、万全を期すため、その日は一歩も家を出ないようにしていた。
ところが、家族の誰かが家の中に吊るされている暖簾に、何かの間違いで水をかけてしまい、そのまま元の場所にかけておいたところ、水難の相が出てた当人が暖簾をくぐるときにつまずいて転んでしまい、濡れた暖簾が顔の上に落ち、鼻と口を塞いで窒息死、いや、水死してしまった…という話し。
これ、全部ウソの話しで、もちろんそんな死に方をした親戚なんか聞いたことがない。
おじさんにブログを書かせたら、きっと面白いブログになってただろうな。ちなみに俺のブログはすべて実話なので、ご安心を。
明後日、おじさんのお葬式に行ってきます。