トランプ氏「教育省解体」へ大統領令 DEI、学生ローン事業など標的

米ワシントンにある教育省の建物(ロイター)
米ワシントンにある教育省の建物(ロイター)

【ワシントン=大内清】トランプ米大統領は20日、教育省の解体に向けた措置を開始するよう命じる大統領令に署名した。教育省の機能や予算を撤廃・縮小し、各州政府に教育行政を委ねるとした。同省を通じて予算配分されてきた貧困層や障害者向けの教育支援への影響や、社会問題化している学生ローンの負担増につながる可能性が指摘されている。

トランプ氏は20日、ホワイトハウスで行った署名式典での演説で、「教育省を消し去ることは正しい。民主党も賛成するべきだ」と主張した。

教育省は1979年に成立した教育省組織法に基づいて設置されており、解体には法改正が不可欠。議会は現在、与党・共和党が上下両院の多数派を握るが、上院での議事妨害(フィリバスター)を回避して法案を可決するには民主党からの賛成票も必要となる。

大統領令でトランプ氏は、米国で進む義務教育段階での学力低下は「連邦政府の教育官僚が機能していない」からだと非難し、バイデン前政権が掲げた「多様性・公平性・包括性(DEI)」推進に向けた事業の廃止を改めて指示。教育省が大学進学者ら向けに提供する学生ローンの債務残高が1兆6千億ドル(約238兆円)に上るとし、こうした融資機能を「銀行に戻すべきだ」と主張した。

トランプ政権としては、教育省解体の法案が議会を通過するのは現実的には難しいと見越した上で、学生ローン事業の廃止や大幅な予算削減などを行政権限で進める考えとみられる。政権は、今年1月時点で約4200人いた教育省職員をすでに半数に削減したとしている。

銀行など民間の学生ローンは、教育省のものと比べて信用力が低い人には高利となるのが一般的なため、貧富の差による教育格差がいっそう進むとの見方も出ている。

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