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炎上しなかった「赤いきつね」。繰り返される非実在型炎上と、東洋水産のマッチョな企業姿勢

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講演、メディア出演、執筆などを通じて、炎上の「火消し」からフェイクニュース対策まで幅広く発信している小木曽健氏によるネットニュース分析、推察コラム。

穏やかな日曜の午後に「赤いきつねが燃えているぞ」という不穏な投稿を発見。東洋水産のSNS広告が炎上しているそうで、さっそく検索したんですが……どうもそれらしいコンテンツが見当たらないんですね。

うーん、コレかなあ、でも流石にコレは違うよなぁと思ったら、まさかのソレでした(「ひとりのよると赤緑 おうちドラマ編」で検索)。

女性が部屋でテレビを見ながら「赤いきつね」を食べているアニメ。ドラマに感動し、泣きながらウマウマうどんを食べている、ただそれだけ。それを「エロい(怒)」とバッシングしている人たちがいるそうで……えっ?

「うどんを吸う音が性行為の音」(えぇっ?)「頬が赤くてエロい」(えぇぇ?)「くねくね食べる姿が性的」(?!)とまあ凄いんですよ、その発想が。あの動画を見てそんな風に思えるって、日頃から脳内で相当どエロいこと考えてないと無理だと思うんですが、大丈夫でしょうか?

この騒動は「非実在型ネット炎上」と呼ばれる、ごく一部のユーザーによる、きわめて局所的な批判ムーブであり、炎上させようと挑んだが誰にも相手にされなかったモノ、なんですが……

あるメディアが「こういった声もある」と報じた結果、あたかも炎上が起きているかのように認知されてしまったんですね。非実在型ネット炎上のお手本みたいなケースです。

大勢が見る広告ですから、それを「嫌いだ」と感じる人がいても不思議じゃない。でも少数過ぎる意見に焦点を当て「批判が」「炎上が」と報道するのは、まさに「アテンションエコノミー」そのものです。流石にそろそろ考えた方が良いのでは、と感じました。

そんなウンザリするような今回の騒動ですが、面白かったのが、とある冷静なアカウントが「この広告を批判している人たちは、そもそも広告のターゲット外なんだよ」とコメントしたところ、批判派が、

「私に赤いきつねを食べるなっていうこと!?」

と噛みつき反論。ああこれ……永遠に会話が成立しないヤツだ、とちょっと笑ってしまいました。

ちなみに今回「炎上させようとした人たち」の中に「広告コンサル」という方がいらっしゃって、この広告に対して、

男性視線だからダメ

頬が赤過ぎだからダメ

アニメは女性を性的に扱う目線が強いからリスク

みたいな分析コメントをされていたんですね。どれもご本人のお気持ちでしかないんですが、頬が赤いのは性的興奮の表現だそうで、普段どういうコンサルをされているんだろう。その方、ネット炎上広告を分析して代案を提示する活動もされているそうな。

マッチョな東洋水産

実は東洋水産が「非実在型ネット炎上」の被害者になるのは今回が初、ではなく、以前「マルちゃん正麺」のSNS広告でも、ごく少数のアカウントからホントに意味の分からない言いがかりを喰らって、それがメディアで報じられ「炎上」扱いされたことがあります。お気の毒な。

ですが東洋水産の広報は、ちゃんとポリシーを持って活動されているようで、最終的には自社広告に問題なしと判断、当該のコンテンツはシリーズ最終まで走り切り、今でもネットで公開中です(「親子正麺」で検索)。「自信を持ってやれ、あとは俺が責任とる」というマッチョなボスでもいたんでしょうか。素敵です。今回も頑張って欲しいですね。

私たちは誰もが「嫌いだ」と感じる自由を持っています。でもその自由には「嫌いだからヤメロ」という権限は備わっていません。「嫌い」と「ヤメロ」は似ているけど全く違うものです。

もし仮に、今回の広告がどストレートに「エロい」意図を持って制作されたモノだったとしても、それは広告表現者の権利と責任によって発信されたものであり、誰も「嫌い」以上のカウンターは打てないし、それが正解です(詳しく知りたい方は「囚われの聴衆事件」を調べてみて下さい)。

コレ、大げさではなく「表現の自由」という、先人たちが血を流して手に入れた権利に直結する、大事な話なんですね。だからこういう案件はマメに見つけては都度「違いまっせ」とチクチク指摘することが重要だと思っています。

今後も見つけ次第チクチク指摘しますので、どうかお付き合い下さい。

 

Text:小木曽健(国際大学GLOCOM客員研究員)

※本記事のタイトル・画像はFORZA STYLE編集部によるものです。

 



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