「ひ、酷すぎる⋯」
第1級冒険者が2人住まうこの家で、1人の少女の悲しみの声がひびいていた。その原因は明白である。少女の眼前にある、料理どころか食べ物すら呼べない
「ま、まあ⋯最初は誰でもこんなもの⋯の、はずだ。気にする事はない」
リヴェリアに見せたら、苦虫を噛み潰したような表情をしながらフォローされてしまった。絶望である。
「と、とりあえず、だな。もう1回作ってみろ。今度は私も一緒にやってやる。」
「!わ、わかった!」
最も信頼できる人物の一人であるリヴェリアに手伝ってもらえるというのは、安心感しかない。よし、とりあえず作ろう。
そこからは苦難の連続だった。
「待て」
べしっ
「い、痛っ?!」
「なぜじゃが丸くんを持ってきた?」
「え?だってじゃが丸くんは美味しいし⋯」
「だからといって料理に使うやつがおるかぁ?!」
「ちゃんと水の量を量れ!感覚で入れるな!」
「火の元から目を離すな!火事を起こす気か!」
「まだ早く切るには拙すぎる!もっと丁寧に切れ!」
「あ、ああああぁぁぁぁ!!」
べしっ
「返事をしろ!」
「は、はいぃぃぃ!!」
ここでもリヴェリアの
「そこっ!余所事を考えるな!」
「は、はい!!」
「よ、ようやくだな⋯」
「うん、ようやく⋯」
「「美味しいカレーが出来た⋯!」」
私とリヴェリアは涙を滲ませながらその喜びを分かちあった。
特訓開始から、5日後のことである。
「さて、次はどうするか。カレーができたなら、次はハンバーグとかになるのか?いや、その前にスープぐらいは教えておくべき、か。アイズ?次に知りたいのは何かあるか?なければ、スープを教えるが」
「うーん、特にないよ。スープを教えて?」
「ああ、わかった。と、言ってもだな、スープは具がない分カレーより簡単でな、教えると言っても、レシピ通りにやれば今のお前なら出来るはずだ。今からやるのは、念の為の保険のようなものだな。今思えば順番が間違ってたかもしれん」
「いや、私が想定以上に出来なかったせいだから⋯」
と言うとリヴェリアは押し黙ってしまった。
「⋯。こほん、まあとりあえず作ってみろ」
「ん、わかった」
「うん、問題ないな。とりあえず、今日までに教えたことを忘れずに、レシピ通りにやれば、人並みには作れるはずだ。もっと上手くなりたいのならそれこそ
リヴェリアからお墨付きを貰えた私は、思わず心の中でガッツポーズした。よく頑張ったぞ、私。
「わかった。ありがとうリヴェリア」
私が感謝の言葉を告げるとリヴェリアは、まるでお母さんのように優しく微笑みながら撫でてくれた。
「いいんだ、これくらい。お前が普通の少女になりたいのなら協力を惜しむ気は無い。これからもどんどん頼ってくれ」
「⋯うん、分かった。ありがとう」
ふとあることを思いついたわたしは、部屋の扉に手をかけて、出る直前に
「今までありがとう、お母さん。明日からは掃除とかも教えてね」
と、声をかけてみた。扉を閉じてしばらくすると、その部屋からは微かに誰かの声が響いていた。
次の日、部屋を出る直前に頼んだように、他の家事を教えて貰えることになった私は、まず自分の部屋にいた。どうやら、とりあえず自分だけで片付けてみろ、との事らしい。
「よし、頑張ろう」
「ふむ、さすがに掃除はやれば出来るか」
「当たり前、さすがにリヴェリアに毎日掃除してもらう訳にもいかなかったから、頑張った」