エルニーニョ現象の”残り香”が2024年の猛暑の原因だったのか。北太平洋に溜まり続ける熱によって2025年の夏も暑くなるのか?
予測のばらつきから「信頼度」付きの季節予測を
アンサンブル予測における結果のばらつきのことを「ノイズ」と呼びます。結果のばらつきが大きいことを、ノイズが大きいと表現します。予測する数をふやすと、ばらつきの大きさが見えてきます。 予報モデルが正しいとすると、たとえば100回予測して、結果にほとんどばらつきがなければ、その平均値もかなり信頼度が高い(当たる確率が高い)ことがわかります。 ばらつきの大きさと結果の信頼度の関係については、台風の進路予想図を思い浮かべてもらうとイメージしやすいかもしれません。台風の進路予想もアンサンブル予測です。 進路予想図では、これから台風が進む可能性がある場所に予報円が描かれています。予報円の大きさが予測のばらつき(ノイズ)の大きさです。予報円が小さいということは、台風の進路をかなり正確に予想できるということです。 一方、予報円が大きくなると、台風は予報円のどこかを通るはずですが、実際にどこを通るかは予想しづらくなります。 ふだん目にする天気予報は、予測のばらつき(ノイズ)の大きさを元に算出された信頼度の情報を付けています。 私たちの研究グループでは、信頼度という考え方を季節予測にも応用できないかと考えています。
もうひとつの地球をコンピュータ内に作るには
──実際に、季節予測に信頼度が付くと、どのように使えるのでしょうか? 現状のJAMSTECの季節予測には、信頼度の情報は付いていません。でも実際にアンサンブル予測を行っていると、ばらつき(ノイズ)の大きさ、つまり信頼度の高さには差があります。 「今年の夏は暑くなるでしょう」という予測であっても、本当は「今年はほぼ確実に暑くなる」という年もあれば、「不確定要素が多くて、よくわからない」という年があるんです。そういった信頼度の情報を付け加えることで、季節予測をもっと活用してもらえるようになるのではないかと思います。 現実世界とそっくりな地球をバーチャルで再現したものを「デジタルツイン」と呼ぶことがあります。季節予測の研究でつちかった技術やJAMSTECの海洋観測の情報を組み合わせることで、地球の精巧なデジタルツインを作ることが可能になります。 将来的には、そうしてできた地球のデジタルツインにスマホのAIアシスタントなどを通して気軽にアクセスしてもらって、明日の天気から数ヵ月先の天候、100年後の地球環境まで、さまざまな情報が簡単に取得できるようになればと思っています。私たちが作った地球のデジタルツインが、いろんな場面でみなさんの意思決定をサポートできるようになるとうれしいですね。 取材・文:岡田仁志 取材協力・図版提供:海洋研究開発機構
土井 威志(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)
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