エルニーニョ現象の”残り香”が2024年の猛暑の原因だったのか。北太平洋に溜まり続ける熱によって2025年の夏も暑くなるのか?
水深300メートルまで熱が溜まっている
──北太平洋の海水中に、どうしてそんなに熱が溜まっているんですか? ラニーニャ現象が起きると、太平洋で空と海の流れが変わることで、北太平洋に熱が溜まりやすくなることがわかっています。逆にエルニーニョ現象が起きると、北太平洋から熱が放出されます。 ラニーニャ現象とエルニーニョ現象が交互におきれば、北太平洋に熱が溜まり続けることはありません。 ところが、2020年から約3年にわたってラニーニャ現象が連続的に発生し、大量の熱が溜まりました。 2023年から2024年にかけてエルニーニョ現象が発生したのですが、そのときは北太平洋からうまく熱が放出されませんでした。その結果、今も海水温が高い状態が続いているのです。 地球の海全体の熱容量は、大気全体の約1000倍と言われています。大気の1000倍の熱を蓄えることができるということです。これは同じ量の熱が与えられた場合、海は大気よりも圧倒的に温度変化が少ない(温まりにくく冷めにくい)ということもできます。海の熱容量はすごいんです。 現在の北太平洋は、表面だけでなく水深300メートルほどまで温度が高い状態になっています。これほど大量の熱が溜まった状態はすぐには解消しませんので、しばらくは“湯たんぽ”状態が続くでしょう。
パラレルワールドで未来を予測する
──エルニーニョやラニーニャの今後の予測を示したグラフを見ると、たくさんの線が引かれています。中央の太い線が最も確率が高い予測ということでしょうか? 予測は、「SINTEX-F」と呼ばれるモデルを使って行います。モデルの設定や初期の条件を、少しずつ変えて予測を行うことで、たくさんの予測を行います。 状況が少しずつちがう「パラレルワールド」を作って、予測するというわけです。条件がちがうと予測結果は変わってきます。グラフの中に引かれているたくさんの点線が、それらの予測結果です。 予測結果がばらばらだと、どれを信頼すればよいのかよくわかりません。そこですべての予測結果の平均を取って、それを信頼することにします。グラフ中の太い線が予測結果の平均です。統計的には、平均を取ったものがもっとも当たる確率が高いといわれています。この手法は「アンサンブル予測」と呼ばれています。 ──平均から遠い予測が当たることもあるのですか? どの予測結果も、ある条件の下では起こりうる未来なので、平均から遠い予測が結果的に正しいこともありえます。 条件を少しずつ変えて予測の数をふやしていくほど、平均値の信頼度は高まります。たとえば予測結果が3個しかないのと100個あるのでは、その平均値の信頼度は大きくちがいます。予測する数をふやすのはたいへんですが、信頼度を高めるためにも、できるだけふやしたほうがいいと考えています。
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