広島市は2022年度予算で確保していた中央図書館を広島駅前のエールエールA館(以降A館)閉店するための設計費などを23年度に繰り越す考えを明らかにしました。
昨年3月に市議会はA館移転への基本・実地設計費が含んだ2022年度予算を可決する一方で、「関係者から広く意見を聞くことが足りず、十分な議論が尽くされていない」として、予算執行にあたりA館移転・現地建替・中央公園内での移転の3案を比較検討できる資料を作成し議会・利用者・有識者などの関係者に丁寧に説明し理解を得た上で移転先の決定を行うという付帯決議を全会一致で可決しました。
昨年12月の市議会総務員会で市側は中央公園内に適地がないという理由で中央公園内での移転案を外した現地建替とA館移転の2案で比較検討資料を作成するようコンサル会社に指示を出し、その上でA館移転を結論としました。付帯決議が求めた3案移転も関係者への丁寧な説明・理解も無視したと言っていいでしょう。
広島市の松井市長は1月26日の記者会見で中央図書館の広島駅前への移転について「付帯決議に沿って議会など関係者に丁寧な対応をしたので年度内に基本設計・実地設計の予算を執行していきたい。駅前移転は昨年度の議会で予算が通ったので移転する方針は決まっている。執行する前に説明しろというのが付帯決議。図書館協議会や社会教育委員会会議の会としての反対意見は採用されてないのであくまでも個々の意見であり組織として反対ではないとした」と述べ、簡略な説明をしたことで付帯決議への対応は終了し移転を進めるとしました。
正直に言って議会が求めた丁寧な説明も理解もありませんし、そもそも議論が尽くされてないとして付帯決議が提案されたのに全く議論する場がありませんでした。
私自身は駅前の図書館も悪くはないと思ってますが市のやり方はあまりにも筋が悪すぎます。
例えば、市がA館優位としてる費用面ですが下記表を見ると確かにA館の方が割安です。
しかし、ここには補助金を除いた市の実質的な負担額は書かれていません。
中央公園、というより都市公園内での公共施設整備を対象とした社会資本整備であれば事業費のおおよそ半分が国庫より補助されます。だいたいこれは満額に近い数字が出ます。一方でA館への移転では市は公共施設の集約統合が対象や地方債が使えるとしています。これは事業はの90%が対象となりその50%が国から交付されるというもので満額対象であれば確かに遜色ありません。しかし実質的には3セクの赤字補填である不動産購入費が対象となるのか、更には築20年以上経つ民間ビルへの移転が対象となるのか不明です。市は国と具体的な協議には入ってなくても、選考事例を調べたりお伺いぐらいは立てているはずです。比較表に記載がないところを見ると返事が芳しくない、あるいはどの範囲までが対象かの目途すら立ってないのではないでしょうか。仮に移転費用の大部分が交付対象でないのであれば移転費用は議会を通らない可能性はありますし通すべきではないでしょう。更に委員会答弁では川側の壁を抜きガラス窓にする追加工事にも言及していますし、福屋への敷金返還もあります。これは8.9階であれば十数億円ですが6.7階も一旦引き払い南口母発が改めてテナントを探すということであれば30億程度になります。更には現在のテナントへの移転補償費なども発生するでしょう。
最初安く見せといといて後から追加経費がどんどん出てくる高速5号のトンネル工事の様な市がお得意のパターンになる可能性が高いです。
そういうわけで資金面から言えばA館移転の優位性はありません。
なぜ、ここまで広島市は強硬に移転を進めるのでしょうか?
少なくとも2020年まで市の作成した資料では中央図書館は中央公園で建て替えの方針でした。市民球場取り壊しの際に出て来た複合型文化施設もその候補でした。それが2021年9月に「エールエールA館」を運営する広島駅南口開発が、市に中央図書館などをA館に移転することを検討するよう求める要望書を出すと同11月に市がA館への移転方針を議会に説明。2022年3月に議会で移転予算が可決、9月に子供図書館のみを現地に残すことを松井市長が表明。12月にA館移転に決定。2023年1月に子ども図書館の代わりに青少年センターを入れた移転計画案を議会に提出しました。
先の市長会見では「市長就任時から球場跡地を含む中央公園内の老朽化した施設の合築や再配置の検討を始め、2012年にはイメージを出したがサカスタの話が出たので一時中断となった。当初は中央公園内で検討していたがサカスタが出来たので中央公園内で移転スペースは無くなったのでそれ以外の場所での検討をし、広島駅方面を含めた際に南口開発から自分のところで検討してもいいですよと言ってきたので検討をすすめた」と市長は答えています。
この答弁に猛烈な違和感をを覚えます。
2021年3月の市議会の議事録を漁ると、南口開発がA館への図書館移転が入居する商業施設への波及効果も高いとして入居テナントと調整の上で要望書を出したとあります。
しかしこの1年前には福屋と南口開発はエールエールの地下1階から9階まで10フロアの20年の契約更新をしています。同時に南口開発の広銀を頭とする債権団への返済計画を議会が承認しています。
この契約に先立ち広島市は南口開発に対する貸付金の金利を引き下げています。2021/2/24付けの中国新聞の記事で当時の沢裕二・広島駅周辺地区整備担当課長は「長期契約で安定した賃料を確保し、駅前のにぎわいをつくるために必要と判断した」と述べています。20年安泰ですと言って契約更新したわずか1年後にフロアの大幅な削減を自ら申し出るとは考えにくく、福屋がフロア撤退の意思を南口開発に伝えてたのは契約更新の前なのではないでしょうか?
経営責任を追及されたくないので福屋から撤退の意思を伝えられていたのにも関わらず、市と南口開発は20年の契約更新と金融団への返済計画を議会に承認させ、福屋が削減するフロアの賃料の穴埋めに図書館のフロア購入費を流用しようとしていると考えるのが妥当でしょう。
そういうわけで本当に筋が悪いのです。
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