Mrs. GREEN APPLEの「ライラック」が、MTVで最優秀ビデオ作品賞獲得の深い意義
Mrs. GREEN APPLEが、ミュージックビデオを表彰する音楽アワードである「MTV VMAJ」において、「Video of the Year」という年間最優秀ビデオ賞を受賞し、大きな話題になっています。
「MTV VMAJ」とは、MTVが全米最大規模の音楽授賞式「MTV Video Music Awards」の日本版として、2002年から開催している歴史ある音楽賞。
Mrs. GREEN APPLEは、「ライラック」での年間最優秀ビデオ賞受賞だけでなく、「最優秀邦楽グループビデオ賞」「最優秀アートディレクションビデオ賞」「最優秀撮影賞」も獲得したため、VMAJ史上初の2年連続4冠を達成する結果となったようです。
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もちろん、Mrs. GREEN APPLEと言えば昨年末に「日本レコード大賞」も2年連続受賞をしていますし、Billboard Japanの2024年のArtist of the Yearも獲得。
さらには今月発表された日本アカデミー賞でも「主題歌賞」を受賞するなど、国内の音楽賞を総なめにしているグループですので、今回の受賞も順当と言えば順当と言えます。
ただ、今回のMrs. GREEN APPLEの年間最優秀ビデオ賞受賞には、1つ大きな意義があります。
「コロンブス」のMV炎上を経て
もはや、ほとんどの人がすっかり忘れていると思いますが、Mrs. GREEN APPLEにとって、2024年は「ライラック」が記録的な大ヒットになる良い一年であった一方で、6月に公開した楽曲「コロンブス」のミュージックビデオが批判を受けて削除する結果になるという苦い経験をした一年でもありました。
参考:ミセスの「コロンブス」MV炎上であらためて考えるべき、アーティストを担ぐ組織の責任
この2024年6月は、Mrs. GREEN APPLEにとって非常に大きな危機に直面した月だったと言えます。
なにしろ、この楽曲「コロンブス」はコカ・コーラ社のキャンペーンソングにもなっていた関係で、日本コカ・コーラ社側が「いかなる差別も容認していない」とMrs. GREEN APPLEのMVとは一線を画す声明を発表して、キャンペーンソングの広告素材などの削除を実施。
参考:日本コカ・コーラ「いかなる差別も容認していない」、公開停止のミセス新曲めぐりコメント…MV内容事前に把握せず
さらには、直後に出演が予定されていたTBSの音楽番組である「CDTVライブ!ライブ!」で、Mrs. GREEN APPLEの出演を見合わせる、という発表がされる展開になってしまうのです。
参考:Mrs. GREEN APPLE、TBS『CDTVライブ!ライブ!』の出演を見合わせ「またの機会の出演を楽しみに」
もし、他の企業や他局もこうした判断に便乗していたら、Mrs. GREEN APPLEはいわゆる「キャンセルカルチャー」の犠牲になっていた可能性があったのです。
ミュージックステーションでの感謝
しかし、Mrs. GREEN APPLEにとって幸運なことに、直後の金曜日に放送が予定されていたテレビ朝日の「ミュージックステーション」は、Mrs. GREEN APPLEの出演自体をとりやめるのではなく、「コロンブス」の演奏を6年ぶりの「青と夏」に変更するという判断をします。
その日のミュージックステーションの演奏後、Mrs. GREEN APPLEの大森さんがタモリさんからの問いかけに対し「本当に、歌が歌える環境に感謝です。」と話されていたのは、非常に印象的なシーンでした。
参考:Mrs. GREEN APPLE、Mステ生出演 深々一礼「歌が歌える環境に感謝です」
その後、Mrs. GREEN APPLEは、無事に活動自粛や謹慎などに追い込まれることなく、活動を継続することができる流れになります。
実際、炎上直後の6月末には、HONDAがFREEDのテレビCMにMrs. GREEN APPLEの楽曲「familie」を起用することを発表しています。
ちなみに、このFREEDは最終的に、「日本カー・オブ・ザ・イヤー」に選ばれるという展開になっているのです。
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Coke STUDIOへの出演も見送りに
ただ、Mrs. GREEN APPLEのメンバーにとって、「コロンブス」のMVで社会から激しい批判を受けるという経験は、間違いなく忘れられないほどに厳しい経験だったはずです。
ミュージックステーションの出演以後も、Mrs. GREEN APPLEは無傷で済んだわけではなく、最終的に炎上から1ヶ月以上たった7月に、10月に開催されるCoke STUDIOでのMrs. GREEN APPLEの出演も、協議の結果見送る結果になったと発表され、一部の有識者から疑問を呈される結果になりました。
参考:『コロンブス』で物議のミセス、キャンペーン参加見送りは妥当? 日本コカ・コーラの判断に疑問を覚えるワケ
日本コカ・コーラのMrs. GREEN APPLEの広告素材等も、今も削除されたままです。
もし、他の広告主やテレビ局にも、こうした日本コカ・コーラ側の姿勢が伝播してしまっていたら、Mrs. GREEN APPLEの2024年の大活躍は途中で大きく止まってしまうリスクもあったと言えるわけです。
今回の炎上騒動においては、Mrs. GREEN APPLEを起用し続けると判断したテレビ朝日やHONDAの決断により、Mrs. GREEN APPLEは「キャンセルカルチャー」の犠牲にならずに済んだということができるでしょう。
若いアーティストが失敗をして、社会から一斉に批判を受ける状態になってしまったときに、周囲がいかにサポートしていくべきかという意味で、1つの指針になる対応だったように感じます。
ステージに立てているのも決して当たり前じゃない
そうした中で、今回「MTV VMAJ」というミュージックビデオを評価するアワードにおいて、Mrs. GREEN APPLEが2024年の年間最優秀ビデオ賞を受賞したということには、大きな意味があると言えます。
確かに「コロンブス」のMVの表現に問題があったのは事実です。
ただ、そこに悪意がなかったこともまた明白です。
だからこそ、MTVもファンも、Mrs. GREEN APPLEのミュージックビデオに対する姿勢を、炎上騒動でキャンセルすることなく、正当に評価して年間最優秀ビデオ賞に選ぶ結果になったと言えると感じます。
実は、今回のMTVのVMAJ受賞後のインタビューにおいても、大森さんがステージでの長いお辞儀の理由を聞かれて「ステージに立てているのも、決して当たり前じゃないから」と話されています。
もちろん、この言葉が直接的に「コロンブス」のMVでの炎上を指しているとは限りませんが、「本当に、歌が歌える環境に感謝です。」というミュージックステーションでの感謝の言葉と良い、そうした危機も経験したからこそ、より現在の一つ一つのステージを大事にされているということなのだと思われます。
授賞式の挨拶においても、大森さんが言葉を選ぶように「これからも面白いミュージックビデオを考えていきたい」と話されていたのも非常に印象的でした。
2024年の激動を乗り越えて、Mrs. GREEN APPLEのメンバーはさらに大きく成長したのは間違いありません。
2025年も引き続きMrs. GREEN APPLEのミュージックビデオから目が離せない日々が続きそうです。
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