ソシャゲ世界って結局中堅勢力が一番良い空気吸ってる   作:しゅないだー

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ランダムQ&Aです、評価お気に入り全部嬉しいですけど感想がやっぱ一番励みになるので良ければどしどし送ってください!
本当は目を通した全部に感想返信したいんですが、多分それを書く時間に当てた方が……良い!


Q.レイって実装されてたらめちゃ強いんじゃね?

A.強いです。
自傷コストがいるとはいえ無条件でタゲ取ってくれるデコイを量産し放題なんで弱い訳が……ない!ゲームに実装すると素のステータスが他キャラに比べて貧弱、HPの関係で実質的な回数制限があるとかで調整されてそう。ヒーラーと一緒に運用すると強過ぎるので多分自傷が最大HPを削るとかそんな感じになりますね。
それにしたって器用な立ち回りができるキャラです、作中ではソロ活力負けお兄さんやってるせいで全く旨味が活かせていないですがはは!





#7 「開演」

 

 

 

 極度の緊張やら疲労で俺の頭があっぱらぱーになってなければ、多分3日経った。幸いな事に、初日に彩葉さんが狩り残してた1匹以外にケモノは見ていない。

 とは言っても何があるか分からないから、おちおち眠る事すらできない。

 

 ギリギリまで機能を削った猟犬を見張りに立てて、それでも30分の仮眠。

 そもそもこれ以上無駄に血を消費したくないというのもあって、なるべくそれも避けたかったのが本心だけれど。

 胡座をかいた俺の膝を枕にして寝息を立てているアリスを見ていると、こちらまで釣られて眠くなってくる。

 

「子供は飯食って寝るのが仕事だもんな」

 

 欠伸混じりでそう呟く。

 それにしても一週間ってあまりにも長い、俺が使ってた主人公君はよくそこまで逃げ切ってたもんだと感心する。やっぱゲームとリアルの壁はでかい。

 そもそも一週間で本当にどうにかなるのか、そんな不安が最近は頭の片隅をふわふわと浮かんでいる。

 

「……なにかお話して」

 

 目が覚めたのだろう、膝に頭を預けながらアリスがぼんやりとした顔で呟いた。

 

「そりゃ暇だよな、飯食って寝るしかやる事ないもん。春陽が『レイくんの枕、小豆のいいやつに変えてあげるね!』って言うんで渡したら、めちゃくちゃどんぐり詰められてて布団にアホみたいに虫湧いた話したっけ?」

「もうした」

「したか〜」

 

 春陽に今までされてきた非人道的行為だけで3日は繋いだが流石にもうこれ以上は厳しいか。うんうん唸りながら他に子供ウケしそうな話はないか考えていると、アリスがもじもじと俺の服の裾をこねている事に気付く。

 

「どうかした?」

「……あのね。おにいちゃんって呼んでいい?」

「うーん……まあいいか」

 

 なんだかこそばゆいから断ろうかとも思ったけど、今まで甘えられる相手もろくにいなかったであろう事を考えると無碍にもできない。

 

「いつもお話してる人たちのこと、おにいちゃんはすき?」

「……好きだよ。ずっと感謝してる」

 

 3年も同じ屋根の下で暮らして、同じ釜の飯食ってたらそりゃ情も湧く。本音を言えば家族みたいなものだと思っていた、は流石にキモいか。所詮雇われの身である事だし。

 

「でもアリスがいるから、けんかしちゃったんだよね」

 

 賢い子だよ、本当に。そう表情を陰らせたアリスの頭を撫でる。

 

「俺は後悔してない。これからするつもりもない。子供がいらない気を使うもんじゃありません」

 

 そう言うと、アリスは安心したような表情を浮かべた。ぐだぐだ面倒臭い事に頭を悩ませるのは、俺だけでいい。

 

 

 

 ─────────────────────────────────

 

 

 

 

 どさり、と何かが転がる鈍い音で目が覚めた。やべえ、寝てたか。涎を拭きながら音の方に視線を向ける。

 

「……ひっ!?」

 

 顔面が擦り下ろされたように潰れた死体が転がっている。服装を見るに異能省の人間だけど喜んでいいのかどうか。

 

「あれ、生きてたんだ?てっきり死んでるのかと思った」

 

 声の主はまだ若い男だった。20代前半くらいだろうか。

 青を貴重としたアロハシャツに目元を覆い隠すような黒髪のスパイラルパーマ。僅かに見え隠れする、赤く光る瞳は見覚えがあった。

 

 

 やばいやばいやばい、广(まだれ)泰児(たいじ)だ。

 

 

 自警団(ヴィジランテ)

 異能省と水生会を中心に都市が成り立つ前からこの地に住んでいた、触れてはいけない人間達。

 要するに地元民なんだけど、元は普通の人々だったのが幾度となく二大勢力が排除しようとしては失敗しを繰り返した結果、外敵絶対ブッ殺すマンの集まりと化している。

 今は都市の一角に不可侵地域として存在していて、真正面から殴り合えば異能省も水生会もまず無傷じゃ済まない。お互い不干渉の仮初の平穏を保てているのは、プラントを押さえられているというのが大きい。

 逆に言えば、飯握ってなければ今頃大っぴらに都市の連中が狩られていてもおかしくない。

 

 そんなイカレポンチ達の中でも目の前の男、广泰児は自警団の主力メンバーとしてプレイアブルにもなっている。異能こそ直接的に相手を傷付けるものじゃないが、シンプルにステゴロが強い上に頭も切れるオールラウンダー。

 

广(まだれ)、なんかあったのかよ……あ?見た事あるな、そいつ」

 

 いい加減にしてくれ、また一人増えた。

 ジャージを気怠げに着崩したその男は見た事あるような気もするけど思い出せない。そもそもクロスタってキャラ数多過ぎるんだよ、全部覚えてられる訳ないじゃん。

 ただでさえあまり良くない状況なのに、複数人いるのは不味い。何かあっても一人ならまだ煙に巻けない事もないが、こちとら子連れだぞ。

 

 どうすべきか悩んでいると、後から来た男はアリスを指差した。

 

「そのガキ異能省が探してた奴だよな?って事はあいつらと関わりがあるよな。それでそのガキを連れてるって事は……お前異能省の連中って事だよなあ!?」

「え、いやいや違います違います!」

 

 鶏が先か、卵が先か。

 いずれにしても、自警団の人間は異能省と水生会を初めとしたあらゆる都市の外から来た人間を憎んでいる。

 特に彼ら曰く「自分達を正義だとか何とか言って俺らを追いやった屑共の集まり」と評判の異能省の人間は、都市の外で見かけたら死体にされているレベルで。

 共同墓地の辺りにも自警団がたまに来るから、それも異能省からの目くらましに最適だと踏んでいたんだけど。

 

 この誤解は少し、いやかなり不味い。刺激しないようアリスを後ろに隠す。

 

「あの、俺はですね…………ぐえ!?」

 

 どうにか誤解を解こうと口を開いた瞬間、男が俺の喉を掴んで壁に押し付けた。その力加減から絞め上げる訳ではなく、ただ俺の行動を封じる為と分かる。息苦しさこそないが、相手が明らかに格上だと否が応でも認識させられた。

 

「なあお兄ちゃん。俺達は別にお前が異能省じゃなくても別にいいんだわ、異能省が探してるそのガキ殺して都市の入り口にでもぶん投げときゃあいつら嫌な気分になんだろ?それで十分なんだよ、おまけでお前も重ねて四つにしといてやろうか?」

 

 生きている場所が違う。そりゃこの世界がイカれてる事なんてとっくの昔に分かってるけど、こいつらは見ている物が違う。そうとしか思えなかった。

 

「や、やめて!」

「ちょ、待──」

 

 俺を離せと言わんばかりに突進してきたアリスを男は片手であしらうと、そのまま首根っこを掴んで壁に思い切り叩き付けた。鈍い音が廃ビルに響く。

 

「な、え、何、何やって」

「え?……ゴミ掃除?」

 

 一欠片の罪悪感も読み取れない男の表情は、本当にそう思っている事を物語っていて。頭を強かにぶつけたからかぐったりとしたアリスが視界に入った瞬間、喉元にかかっていた手を渾身の力で引き剥がして突き飛ばす。

 

「こんな子供にやっていい事じゃないだろ……!」

「あァ!?やる気かよ、嬉しいね!!」

 

 拳を構える相手に対してナイフを抜く。相手の異能は全然予想が付かないが、性格や振る舞いからして近接戦闘に強いと見た。それに1vs2の状況。

 なら悠長に猟犬呼んで手傷を負うより、百花さん達にしごかれた自分の腕っ節を信じるしかない。

 

 殺す。

 じゃないと俺達が死ぬ。

 

 

 ボクサーを思わせる軽いステップと共に男の拳が伸びる。

 カウンター狙いで前へ踏み込むと同時にナイフを突き出そうとした、その瞬間だった。

 

「ストップ」

 

 广が俺達を制止した。不満気に鼻を鳴らしながらも、男が一歩退く。力関係としてはそちらの方が劣るらしい。

 

「異能省は捜索を今日で取り止めてる、てっきり見つかったんだと思ったけど。その様子だと違うんだな」

「……え?止めてるんですか!?」

 

 捜索を取り止めている、という言葉に思わず声を上げてしまった。

 

「ねえ、お前どこの子?」

 

 ナイフを持つ俺に躊躇する事なく一歩踏み出しながら、广はそう俺に尋ねた。どこの子、と問われても困る。

 

 だがその瞳は此方を試しているようにも見えた。下手な答え方をすれば、終わる。

 

「い、伊勢屋っす」

「ふーん……」

 

 迷った末、ストレートに行く事にした。百花さん達がまだ俺の事を「うちの子」と言ってくれるかどうかは別として。

 果たしてその返事が功を奏したのかどうかは分からない、けれど。

 

「帰ろう、ゴミ捨ても終わったし。臭くて嫌いなんだよ、ここ」

「はぁ!?マジで言ってんのかよ、俺のこの燃え盛る闘志はどうするんだよ!?」

「知らないよ、その辺のケモノにでも遊んでもらえ」

 

 舌打ち混じりに引き返す男を見送った後、广は再び俺の方に顔を近付けた。

 

「伊勢屋の長女とは何回かやったけど。彼女、非戦闘員には手を出さなかったからさ。貸し一つ、な?」

 

 耳元でそう囁くと、男の後を追っていく。

 

「……助かった?」

 

 緊張していたのか笑う膝を叩きながら、床で目を回していたアリスを抱き上げる。

 

「大丈夫か、血は……出てないな。でも頭は後々から来るし医者に見せなきゃ、あーもうたんこぶできてるじゃん……」

 

 そう頭をさすっていると、意識がはっきりしてきたのかアリスが一言呟いた。

 

「……いたかった」

 

 じわりと目尻に涙を浮かべている。

 

「泣いていいから、庇ってくれて助かったよ」

「ぐす、いたかった、いたかったよ」

 

 そう訴える少女の頭を撫でる。その痛みが早く滑り落ちますように、と願うかのように。

 ぽろぽろと雫を落とすアリスが落ち着くまで暫くそうしていた。

 

 

 

 

 ─────────────────────────────────

 

 

 

 

 共同墓地からの帰路、男は自分の連れに先程の説明を求めた。

 

「なあ、伊勢屋っつったらあのイカレ三姉妹だろ?あー……駄目だ、全然話読めねえわ」

「仮定の話で良いからシンプルに考えればいい。あの状況だけ抜き出すなら、異能省が追っかけてた少女を伊勢屋の人間が連れていた。そして異能省は捜索を取り止めている。となると濃厚なのは異能省に雇われた伊勢屋が少女を探し当てた……って所なんだが」

 

 また出たよ广の悪い癖、と男は呆れ顔で吐き捨てた。

 

「あの彼の反応を見るに、マジで異能省が捜索打ち切ったの知らなかったぽいからな。別口だ、あれ。そうすると異能省が捜索を止めたのは、何かしらの働き掛けがあったから。これも言葉通り受け取るなら、伊勢屋だな」

 

 一つ一つ確かめるように指で宙をなぞる。

 

「異能省にノーリスクで圧掛けられる奴らはそう多くない。伊勢屋のお姉さん達は強いが連中にとって下請け、まあ格下だろ?それが直に働き掛けたって事は多分少なくない見返り払ってる。さぞかし大事なんだろうなあ……」

「あのガキが?」

 

 怪訝そうな顔をする男に、广は溜息を吐いた。

 

「男の方に決まってるだろ、三姉妹の誰かの彼ピッピかな?年齢的には三女だけど、案外長女みたいなお堅い奴の方がどっぷり依存しがちでもあるんだよな、こういうの」

 

 楽しそうにそう続ける彼の姿は、恋愛話に興じる学生のようでもあった。

 

「てっきり異能省のお偉いさんの子供か孫が家出、もしくは何かの拍子に(はぐ)れたかと思ってたが、あれ見るに違うな。誘拐って感じでもない」

 

 まあ、その辺は考えても仕方ない。無理に物語組み立ててもバイアスかかるだけだしな。

 そう广は考え、口を閉じる。

 

「そもそも今の話全部『本当に伊勢屋の人間なら』の話だけどさ。仮に嘘でもその面の皮に免じて許すよ、微妙に手出し辛いじゃん。良い所突いてる」

 

 生意気にも自分とやり合おうとしていた人間を評価されたのが気に入らなかったのか、男はそっぽを向く。

 

「でもあの周りにはとりあえず長女も次女もいなかったんだから、殺しても問題なかったんじゃね?なんでわざわざ見逃してやんだよ」

 

 不満そうにそう肩を回す男に广はくすくすと笑った。

 

「だってその方が面白くなりそうだから。情だとか、愛だとか、そういうのが一番付け入りやすいんだよな。将来あの三姉妹が終わるなら彼が原因になるよ、きっと」

 

 底意地の悪そうなその笑みに少し距離を取りながらも、男は一言尋ねる。

 

「それ、異能(・・)か?」

「いいや、勘。それより八神(やがみ)。お前、もう3歩くらい左にズレろ」

 

「あァ?」と訝しみながらも、言われた通りに3歩歩く。その次の瞬間。

 風で煽られたのか廃ビルから崩落したコンクリートの欠片が、八神と呼ばれた男が数秒前に立っていた場所で砕け散った。あと数秒遅ければ、瓦礫を八神の脳漿が桃色に染めていただろう。

 

「……っぶねー!?マジ助かったわ、お前本当人生イージーモードだよな」

 

 その言葉を受けて、广は顔を顰める。

 

「先が読めないのが一番面白いのに」

 

 つまらなそうに、そう呟いた。

 

 

 ─────────────────────────────────

 

 

 徐々に日が沈み始める夕暮れ。

 今から戻れば、都市に着く頃にちょうど夜くらいになるだろう。

 

「……さて、行くか!」

「うん」

 

 悩んでいても仕方ない。異能省が捜索を取り止めたのが本当なら、わざわざケモノがいつ寄ってくるとも知れない共同墓地にこれ以上いるのはリスクでしかない。というかさっきみたいなパターンもあり得るし。

 一週間はあくまで自分が前世の記憶を頼りに設定したものであって、もしかすると何か別の要因でそれが短縮されたのかもしれない。

 裏目の可能性がある事は否めないけど、食料の事やアリスの精神状態の事を鑑みればリスクを払う価値はある。ちゃんと帽子を被せて特徴の金髪隠してれば、そんな一瞬で見つかる事はないだろう。

 

 他に心配事と言えば、やっぱり水生会の襲撃。前世ではそれでアリスを守り切れなかった訳だから。

 水生会とエンカウントするなら、来るのは恐らく"銃殺刑(トリガーハッピー)"。ざっくり言うと、一定の条件で触れた物を弾丸として定義し、発射する異能。まあシンプルに暴力である。水生会の人間はこういうのが多いんだよな。

 

 

 墓標のように建ち並ぶ廃ビル群を抜け、荒野に出る。

 ちょうど都市と共同墓地の中間地点くらいだろうか。やっぱりまだすんなりクエストクリアとはいかせてくれないらしい。

 

 

 女が一人、立っていた。

 

 モノトーンでまとめられたコーデは、人形を思わせる女性の無機質な美しさを良く引き立てている。

 その横に控えるように、身動ぎもせず立ち尽くす男二人の姿が不気味だった。

 

 目が合った瞬間、感じた事がある。恐らく相手も同じだろう。

 

─────こいつは同類(・・)だと。

 

 

 

「『Hello,Alice!』において異能省を躱すのに必要な日数は一週間。それが3日に短縮、どういうルートを辿ったんです?」

 

 聞き馴染みのある単語で、さっきの感覚が確信に変わった。

 

「あんた、それどういう意味か分かって────」

「ありますよ、前世の記憶。君もでしょう?そうじゃなければ説明が付きません。ベストですもの、君の行動」

 

 まあ、あっても不思議じゃない。俺が転生してきたんなら、他のプレイヤーだってそういう事があってもおかしくない。

 

「自己紹介が遅れましたね、因幡柊音(いなばしおん)と言います。所属は……まあ水生会という事にしておいてください」

 

 水生会。まあろくでもないな。

 名前くらい教えてくださいよ、と微笑む彼女に警戒心を隠さないままぶっきらぼうに答える。

 

「……烏丸礼。別に誰の雇われでもない」

 

 多分こいつには伊勢屋の名前は虚仮威しにすらならない。それなら無駄に情報を与えたくなかった。

 

「烏丸君ですね、よろしくお願いします。傷だらけですけど大丈夫ですか?左腕なんて動かすのも辛いんじゃないです?」

 

 表面上こそ態度は丁寧だが、人引き連れて俺を、いやアリスを待ち構えている時点で大体狙いは読めている。

 

「張ってた訳ね、ずっと」

「はい、異能省の手が殆ど及ばず都市に程近い場所ってここ(共同墓地)くらいでしょう?隠れるのならきっとそうだろうと思って。まあ一応念の為に人をあちこちばらけさせてしまったので、3人しかいないのが申し訳ないんですが」

 

 ずっと待ってたんですよ、私。

 そんな恋する乙女のような台詞を吐かれてこんなにも嬉しくないのは初めてかもしれない。

 

「今回は私の勝ちですから、アリスちゃんを置いて行ってくれますよね?せっかく他PLに会えたんです、お友達になりたいなあって。手荒な事したくありません、ちゃんと相応の報酬もお渡ししますから」

 

 そんな気はしていた。

 

「……アリスをあんたに渡すとして、この子を()()()()?」

 

 一縷の望みを込めて、そう尋ねた。まあ駄目だろうな。

 

「そうですねえ、どうしてもらいましょうか?ネックレスも可愛くて良いですけれど、戦闘中に外れてしまうかもと考えたらブレスレットの方が良いかもしれませんね」

 

 なんで、どうして、どいつもこいつも。強く拳を握り締めた後、深く息を吸う。

 

「俺さ、あんたの事嫌いだわ。それにこれリベンジなんだよ、前世の」

 

 こいつを越えれば、トゥルーエンド。そういう事にしておいてくれよ、といる訳もない神様に祈った。

 

「ああ、バッドエンドだったんですね。残念ですけれど、今世もそうなりますよ。しかも今回はタダ働き」

 

 嘲るような口調で因幡は歌うように口ずさんだ。

 

「残念ですけど、始めましょうか───"道化芝居(サーカス)"」

 

 恐らく自らの異能であろう名前を呟くと、彼女は着けていた指輪を外し地面に放り投げた。

 それは地面にぶつかる事なく、煙を上げて姿形を変えていく。盛り上がる筋肉、励起する甲殻。それは既存のどの動物にも当てはまらない異形。

 ちょうど犬くらいのサイズではあるが、鋭く伸びた爪や鮫肌のような鱗で覆われた尾は明らかに何かを傷つける為にデザインされていた。

 

「ケモノ……?」

 

 隣に立つ男二人は虚ろな目をしたまま特に動きを見せていない。赤子の笑い声のような不愉快な音を立てながら、そのケモノは牙を剥き出しにした。

 

「さあ、開演ですよ」

 

 

 

 

 

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