第44怪 魔術実演試験
次が、魔術実演試験だ。
好きな魔術を的に当てるというシンプルなもの。もっとも、これについては、俺がマスタークラスにまで至っている魔術を使用すべきだろう。
怪人ではマスタークラスにまで至っているのは皆無だった。だが、ヒーローどもや魔術師ならば、相当高レベルの魔術についてマスタークラスに至っていると思われる。
調査したところ、俺が至っているのが判明している魔術は、【
これらは、【
【
マスタークラスになると俺の魂を介してこの世界に受肉するので、自在にこの世界で行動することが可能となるようだ。
「受験番号44番」
今までは俺が呼ばれたのは中間ぐらいだった。なぜ、トップバッターなんだ? 身体能力の測定の試験が上位だったせいだろうか? まあいい、この試験、俺の弟と妹たちの人生がかかっている。落ちるわけにはいかない。
「あの標的に最も得意な魔術を放ちなさい」
得意と言われてもな。マスタークラスは、自分の思うように扱えるから得意とは少々違うんだ。ただ、【
ならあと攻撃魔術は、【
俺は左手の小指側を下に向けて拳を握り、親指と人差し指を開いて鉄砲の形を造り、その照準を的に固定する。
別にこんなポーズをとらなくても魔術は行使できる。だが、それだと俺が放ったかがはっきりしない。無詠唱はこのような試験ではある意味難点だ。
さーて、どうしようかね。あの本の索引には【
今回は溶解の力を加えようと思う。
人差し指の先に水が出現し、それらは大きな矢の形となって超高速で回転していく。
「無詠唱! しかも何、その魔術⁉ 水系の魔術⁉ いえ、この禍々しい魔力、違う! 絶対に違う! これは――――ッ!」
ボブカットの試験官の女性の裏返った声が聞こえてくる。
「ショット!」
俺の台詞とともに、高速で放たれた水の矢は的を撃ち抜いて一瞬で溶解させると背後の鉄の防護壁に衝突してドロドロに溶かしてしまう。
「あー、くそ!」
大慌てで水を消滅させる。
まじった! 試験場の壁が溶解して穴が開いてしまった。これって絶対問題になるよな。もう少し、この結果を考えていればよかった。
「君ぃ!」
案の定、女性の試験官が目を血走らせて俺に迫ってきたので、
「す、すいません!」
思わず謝意を示すが、
「他の魔術は使えないの?」
俺の両肩を押さえて意外極まりない事項を尋ねてくる。
「できますけど。それより、あの壁……」
「どうせ学校が補修しますから、そんなの、どうでもいいです! あの的全て使っていいですからやってください」
女性試験官はそんな元も子もない台詞を吐いて俺に半強制的に命じてくる。
「はあ、じゃあ」
とりあえず、他の魔術を放てば許される流れだ。
今度は全力で手加減しつつ、空中に俺を中心に円状に十数個の炎球を出すと的に放ち続ける。コツは放った直後にすぐ炎球を補充することだ。これで永久砲台の出来上がりってわけ。
忽ち
静まり返る室内で、
「すごい! すごいです! 君、さっきの魔術は⁉」
唾を飛ばしながら問うてくる試験官の女性。
「ミウ、固有魔術を尋ねるのは、マナー違反ですよ?」
聞き覚えのある声に振り返ると、ソフィアが佇んでいた。
「えーーと、誰?」
眼を細めて、首をかしげて尋ねかける。
「第一声がそれですか。ソフィアですわ!」
「ソフィア⁉ えー、貴方、なんでそんなに若返ってるの!?」
驚愕の表情で素っ頓狂な声を上げるミウに、
「この姿は成り行きですわね」
ソフィアが肩を竦めて返答する。
「成り行きで若くなってたまるかい!」
至極もっともな感想を述べる女性試験官ミウ。
「ともかく、彼のさっきの魔術は彼の固有魔術です。あまり、詮索はしないでいただけませんか」
「あんたが口を出してくるってことは、この子はエルドラの?」
「ええ、彼は私たちエルドラの期待のルーキーですわ。今日は彼がやり過ぎないように陛下から言付かってきたのですが、少々手遅れのようでしたわね」
この会場の惨状にうんざり気味に見ながらソフィアは大きな溜息を吐く。
ミウは俺をみて、次いでソフィアを見てブツブツ暫く独り言ちていたが、
「わかりました。私の判断で受験番号44番の以後の試験の内容を変更します。君は以降、私と個別試験とさせていただきます」
一方的にそう終了宣言をしたのだった。
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