第42怪 編入試験――学科
【慶皇館大学付属】の魔導科の校舎前は、編入試験を受ける受験生で溢れかえっていた。
もっとも――。
「こんなにいるのか……」
思わず心の声が漏れてしまう。
イレギュラーな編入試験だ。てっきり俺を含めて数人だと思っていた。ざっとみて100人近くいるぞ。
確か、この編入試験、半年に一度実施して補充人数は最大2人だったはずだ。付け焼き刃の入試対策で、本当に受かるのか? アルベルトたちは妙に自信満々だったけども……。
半年に一回の入試が一週間後にあるので受けろと指示されたのだ。十分な入試対策をする時間はなかった。だから、配点の高い魔術について重点的に対策したのだ。
魔術については、ロトから渡された本を読んで勉強した。エルドラの魔術師に教えてもらおうかとも思ったが、俺はオヤジから魔術の実践的な使用法につき手ほどきを受けただけで、魔術の基礎をほとんど知らない。一から十まで全て教えてもらうなど流石に厚かましすぎてできようもない。だから、ロトからもらった本の基礎編だけを可能な限り、何度も読み返した。
それで基礎編で書いてあった魔術につき、簡単な実践をした結果、多少なりとも扱えるようになっている。
とはいえ、所詮俺が扱えるような魔術だ。大したものではないんだろうけども。
試験官と思しきスーツの女性に受験票を示して、会場内に入る。
午前中は筆記試験だ。もちろん、怪人の俺は真面に一般教育を受けてきていない。だから、こんな難しい学園の一般教養問題など解けるわけがない。だから一般教養試験は端から捨てている。勝負は魔術関連の問題だ。
試験が開始される。
一般教養試験の問題の内容などわかるわけがないはずなんだが……どういうことだ、これ?
なぜか、問題を少し読んだだけで、その問われている趣旨からその解法まで、頭にはっきりと浮かんでいた。というか、聞いた事すらないはずの単語やロジックまでなぜ、俺は知っているんだ?
問題の解法が分かっているんだ。直ぐに答えは書き終えてしまう。
対して次の魔術の筆記問題は、逆にその趣旨が不明なものが多くかなり苦労した。というか、あの本と書いてある事が違い過ぎて、むしろ困惑している。
特に魔術の詠唱のスペルについては、明らかに誤ったスペルが書いてあったし、何より、そもそも論として魔術の本質は詠唱ではなく借用と支配だ。その本質なところがまるで理解していない問題ばかり。
この詠唱問題など、誤ったスペルの半分を埋めろという意味不明なもの。それでは中途半端な力しか発動できない。
あの本が誤っていたということだろうか? いや、実際に発動まで実にスムーズにできていた。むしろ、この問題の方が遥かに矛盾しているように思えてならない。
実際はともかく、この試験対策としては参考書の選択を誤ったことは否めない。何かしら知っている情報を書くしかないだろうさ。
午前の筆記試験が終了した後、中庭のベンチでお茶を飲んでいたら、
「さっきの試験、随分、余裕のようでしたわね?」
青色の正装を着用し、長い金髪をポニーテールにした女性が話しかけてきた。透き通るような碧眼に、真っ白な肌、ジパング人ではなく、西欧人だろうな。
「いや、魔術に関してはかなり際どかったぞ」
なにせ、なぜそれを問うのかという問題ばかりだったからな。
「魔術? むしろ一般科目の方が難解に感じましたが?」
「それだけ、あんたが優秀ってことじゃないのか?」
ここは魔導科。魔術を学ぶ場所だ。あの趣旨すら不明な魔術の問題が簡単に感じたのなら、相当優秀だってことだ。
「……それって本心ですか?」
「ああ、そうだが。なんでだ?」
「
一方的に俺にそんな宣言をすると、颯爽と立ち去ってしまう。
「あ、ああ、ソフィアの知り合いか」
ソフィア関連だとすると、エルドラ人だろう。まあ、俺には関係のない話しなわけだが。
そう考えながら、俺はお茶を飲みほしたのだった。
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