第41怪 慶皇館大学付属駅
久方ぶりの【白月】での弟や妹たちとの生活は、中々落ち着けた。こいつらの笑顔を守るためなら、何だってやってやる。そう思えるから。
ただ、イヴは俺と離れたのが相当嫌だったのか、終始俺から離れなくなってしまう。真夜中に突然起きて俺がいることを確認して安心して抱き着いて再び眠る。そんな塩梅だっただが、ロトのお陰で大分緩和されることになる。
精神年齢が近いせいか、ロトとイヴは忽ち仲良くなり、姉妹のようになってしまう。
最近は俺が【白月】を不在にするときは、ロトがイヴに一緒にいてくれている。そのおかげでイヴをロトに預けて今日もこうして安心して【慶皇館大学付属】の魔導科の受験会場へ来ることができた。
【慶皇館大学付属】は【白月】から電車を乗り継いて、慶皇館大学付属駅で降りる。
無駄に広大な駅の北口から外にでると――。
「なんじゃこりゃ……」
そこはまさにそれなりの規模の都市の風景だった。
大勢の人々が行きかい、メインストーリー沿いには様々な種類の店が立ち並ぶ。
他の街との違いといえば、行き交う者たちの属性は主に若者ばかりであり、サラリーマンはほとんどいないということくらいか。
この街全体が学園だってんだから驚きだ。ツムジちゃんが、あれだけ、喜ぶのもわかる気がする。
ツムジちゃんは来月からこの街で暮らすことになる。彼女は襲われたばかりだ。もちろん、ツムジちゃんの両親はこの街での一人暮らしすることに難色を示したが、学生寮に入ることで何とか説得したようだ。
まあ、実質的にみても、ツムジちゃんにどうこうできるものがいるとも思えない。なにせ、この前片手で数十キロもあるベッドを軽々と持ち上げていたし。おまけに契約精霊であるジンもいる。今のツムジちゃんをどうにかしたいなら、トップヒーローが複数必要だ。さらにいえば、正式にエルドラの【魔導騎士】になったことで、英雄同盟を初めとする他の主な勢力もおいそれと彼女にちょっかいは出せなくなった。
ともかく、ツムジちゃんはもう大丈夫だ。むしろ、俺の方が遥かに危険極まりないといえる。なにせ、今の俺はロトたちがいなければ基本役立たずだからな。
丁度今日、ツムジちゃんは、説明会に来ている。用事が済んだら一緒に昼食を食べることになっている。
大通りを暫く歩いていくと正面に巨大な校門のようなものがある。
「学校内にバスがあるのは初めての経験だな」
どうやら、校門前にバス停があり、初等部、中等部、高等部、大学、研究所など様々な施設行きのバスがでていた。
もちろん、俺にバスに乗っていくような余分な金銭はないし、その必要性もあるまい。
当初【白月】からの通学を考えていた。だが、俺たちが怪人であったことが明るみに出た以上、【白月】は近々移転しなければなくなるだろう。俺たちの弟と妹たちが怪人でなくなるその日まで、俺たちは必要以上【白月】に関わることはできなくなった。
もっとも、学校関係者以外の立ち入りを禁じている学生寮は、イヴやロトがいるから不可能だ。おそらく、この【慶皇館大学付属】の周囲で住まいを探すことになるだろう。この都市、賃料は高そうだし、当面はエルドラの世話になる必要がある。とは言っても、あくまで借りるだけだ。ダンジョンに入るようになって稼げるようなったら、すぐに返済するつもりだ。これ以上、借りを作るのは避けたいからな。
そういうわけで、この学園周囲の街に住むなら徒歩でも十分負担なく通学できることだろうさ。
「高等部はここから近いな」
徒歩10分程度だし、これなら無理なく通学できる。もっとも、あくまでこの学園に合格できたらだが。
俺は高等部へ向けて歩いていく。
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