第40怪 ただいま

 話し合った結果、今後の活動をしやすくするためにあの指輪はエミ達白夜の幹部が身につけることとなり、順次、再測定の怪人の総称である『準人間』との認定を受ける。

 俺といえば、アルベルトから指輪などいらぬとの無茶ぶりをされて、再測定の会場へと送り出された。どうやら、アルベルト曰く、俺は既に調整が済んでいるとのことだった。

 再測定は血液検査、画像検査などの一般検査に始まり、魔力の測定など様々なものを考慮して行われる。最後の検査である半魔の俺の意思による自由な顕現が一番のネックだったが、検査官が半魔を呼び出すように横柄な態度で指示をしてくると、二足歩行の黒装束にマスクをした狐が現れて、俺に跪き深く首を垂れる。

 検査官は俺たちの光景を当初、ポカーンと大口を開けてみていたが、狐の頭部の魔物が立ち上がり、検査官に鋭い目を向けて威圧すると、試験官は這いつくばって許しを請い始めた。

 錯乱してしまった検査官が同僚に運び出されるというお茶目なアクシデントが起きる中、実にあっさりと、俺は『準人間』の認定を受ける。

 『準人間』という言葉通り、俺たち再測定で至った場合は、名誉人間と揶揄されているように、あくまで人モドキであり、害獣として即隔離又は処分されないという扱いに過ぎない。故に、現実問題として様々な社会的なペナルティーがあり、全うな職業にはつくことができないと言われている。それでもこのジパングで自由に行動できるとことは、極めて大きい。

 アルベルトは、俺が【慶皇館大学付属】の魔導科を合格できると信じて疑っていないようだが、気位の高い奴らが『準人間』に過ぎない俺を入学させるとはとても思えないわけなんだがね。

 ともかく、俺が『準人間』となると、その名前は英雄同盟に届けられる。もし俺を既に特定しているなら、俺が現住所として登録したエルドラの村に連絡くらいくるはずだ。一切のリアクションがなかったことからも、英雄同盟が俺を指名手配犯として追跡していない事は明らかだ。

 こうして、俺はイヴのいる【白月】に帰宅することが許された。混乱回避の観点からロトは外で待たせて俺だけ、孤児院の扉を開ける。子供たちの視線が一斉に俺に向く。皆の顔がぱっと輝いて、

「エージ兄ちゃん!」

「エージ兄ぃ!」

「お兄ぃ!」

 たちまち囲まれてしまう俺をいつもの隅の席でブルブルと身を震わせながら見ている金髪の童女。

「イヴ、元気してた?」

 優しく語りかける。

 こんな汚れ切った俺でも、イヴの前だけは、優しい兄であろうと思っている。きっとそのくらい許されるはずだから。

「エージ!」

 一直線で駆け寄ると子供たちを押しのけて俺にジャンピング抱きつきをかましてくる。そして俺のお腹に顔を押し付けてワンワンと泣き出してしまった。

 俺はイヴの小さな身体を抱きしめると、

「遅くなってごめんね、イヴ」

「エージ! イヴは! イヴはっー!」

 なんとか言葉を紡ごうとするが、感極まって言葉にならない。イヴが俺とここまで長く離れたのは初めての経験だ。この甘えん坊ならば、不安で仕方なかっただろうさ。

「ただいま、イヴ」

 俺は数週間ぶりの挨拶をしたのだった。

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