第27怪 付与魔術のお披露目

 赤髪ポニーテールの女は自らをエミと名乗る。エミって、確か、ウイズダムCEOの娘と同じ名だったな。あの幼子も赤髪だったが……ありないな。そんな偶然あってたまるか。

 エミの後について一階へ降りていくと、階段したで待機していた青色の軍服を着た者たちが僕が通りすぎる際に一礼してくる。この者たちには覚えがある。あのエルドラの船にいた軍人たちだ。

 ロビーの前に待機していたイケメン軍人が僕の前までくると左の掌を胸にあてて深く一礼する。

「アビス様、このブラスが、我らが王の元までご案内させていただきます」

 恭しくそう発すると、歩き出す。

 ついてこい、そういうことだろう。僕が後に続くと、赤髪ポニーテールの女もその後ろにつく。ちなみに、ロトは僕の右腕から離れようとせず、ずっと張り付いていた。

 一階の大扉が開かれ中に入ると、そこの最奥には王座が置かれており、その前には数人の者たちが跪いていた。面倒な事になりそうだ。

 僕が近づくと、

「アビス様、私はアルベルト・エル・スペンサーと申します。エルドラの国王をしております」

 金髪の髭面の紳士、アルベルトが跪いたまま、厳粛した顔で僕に首を深く垂れる。

 傍の夫人と金色の髪を縦ロールにした長身の美女もそれに倣う。この縦ロールの女には、一度会ったことがある……気がする。どこだったか。

「私はアビス、怪人だ。何から話せばいいものか……」

 僕の今の状況は途轍もなくややこしい。事細かに話しても、理解はされまい。その根拠となる事実の提示が必要なのだ。さて、どうしたものかな……。

「恐れながら、我らが愚民にその御力をお見せいただければと」

 そう提案するアルベルトの声は著しく上ずっていた。そして、他の者たちもそれは同様で、跪いた状態で、顔から滝のような汗を流していた。

「力を示せか……確かに、それが手っ取り早かいかもな。何か、強化して欲しい武器はあるか?」

 僕の突拍子もない言葉に、重臣たちが顔を見合わせる中、

「それでは、私の方から武器を提供させていただきます」

 アルベルトはそう答えると、奥の部屋に小走りで走っていくと純白の柄の大剣を抱えって持ってきた。

「アビス様、これを!」

 震える手で渡してくる大剣を受けとる。

 使う魔術は付与魔術。これは武具や小道具に一定の奇跡を付与する魔術。

 僕は魔力を用いてあらゆる現象に魔力を媒介として効果を付与することができる。要は僕の【現象への効果付与】は、付与魔術の上位互換ってわけだ。

 さて、どんな効果を付与すべきだろうな。回復、支援系の効果ならば例え付与しても大した問題ならないだろうよ。だとすれば、仮にも魔導国家エルドラの王族が納得するような魔力だ。それなりの強度が必要だろうよ。 

 もっとも経験則上僕の魔力をそのまま流し込めば、破砕するのは目に見えている。だから、まずは、この剣の構造を変えねばならない。

 剣を受け取って魔力1万ほど使用して己の眼球を中心に【精密分析】の効果、さらに【永久強度】の効果を込めて【捜索サーチ】を発動。剣の分子一つ一つに魔力を通し、【永久強度】の効果を付与していく。

「こ、こ、こんな馬鹿なーーっ!」

 近くで跪いていたローブ姿の白髪の翁が、金切り声を上げる。

(可視できるほどの魔力か……我らの王という評価すら過小評価に過ぎなかったということか……)

 アルベルトが俯きながらブツブツと呟き、

「マスターならば当然なのかしら!」

 得意そうに胸を張るロト。

 大げさすぎるな。今のはただの物質強化の応用であり、物理的、魔力的強度を上昇させたに過ぎない。要はただ硬い剣にすぎないってわけだ。これに効果を付与して初めて、この作業は完了する。

 剣に今度は50億程の魔力を程込めて【修復】、【結界】、【効果範囲自由操作】、【身体能力、魔力強化】の効果を付与する。

「ちょ、ちょっとまってよ、アビスっ!」

 エミが焦燥たっぷりの声を上げ、

「う、嘘、妾の100倍以上もの魔力? こんなのあり得ないのかしら!」

 ロトも大声でそう捲し立てる。

「ひいっ!」

「ば、馬鹿な……」

「素晴らしい……」

 部屋の中を吹き荒れる僕の魔力に悲鳴を上げて蹲るもの、驚愕に目を見開くもの、恍惚な顔で両手を合わせて拝んでくるもの。三者三様の様相で、部屋内が混乱の極致と化す中、僕の付与はあっさりと終了する。

 これは一見何の変哲もない剣。だが、その効果は中々面白い効果がついている。

「それは癒し、結界、身体と魔力強化の効果を持つ剣だ。効果は自分で試せばいいさ」

 怪我をしなければ効果を確認できない修復とは違って、身体強化ならば、別にこの場でも証明可能だ。

「いえ、十分でございます。貴方様の御力を疑う愚か者はこの場にはおりません」

 アルベルトのその答えに、他の者たちも、大きく何度も頷いてくる。そのあまりの必死さに、若干圧倒されながらも、

「そうか、ならばいいさ。では、話しを進めさせてもらおう」

 僕は経緯を問題ない範囲で話始めたのだった。

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