第26怪 意図しないロトの篭絡

 綺麗にピザを食べ終えるとロトは両手を組んでモジモジと動かし始めた。

「どうした? 何か私に聞きたい事でもあるのか?」

「貴方は何者かしら?」

「私か? 怪人だよ」

 形の良い眉根を寄せて、

「怪人とは何かしら?」

 そんな疑問を口にする。

「怪人とは、権力者やヒーローという一方的で独善的な全体主義者からの理不尽な暴力から、己の信念と誇りを守るために日夜戦わなければならない存在だ」

 僕の原点を口にした。

「怪人というのは、皆、貴方のように強いのかしら?」

「強いさ。それこそが、悪の怪人の条件の一つだからな。だが、勘違いするなよ。この世界でいう怪人はただの人間だ。ヒーロー共は力のない弱い同じ人間を迫害しているに過ぎない」

 そうだ。僕が目指す怪人Aはいかなる苦難にもくじけず、悪を遂げるもののことを言う。悪いが、ヒーロー共から迫害を受ける存在を僕は怪人とは認めない。

「貴方はお父様よりも強いのかしら?」

「悪いがお前の父を私は知らない」

「暴食の王、ベルゼビュート」

 ベルゼビュートね。確か八皇とか言っていたな。異界の帝王っていったところか。

「実際にってみないとわからないが、負けるつもりは微塵もないな」

「うー……お父様に会ったら殺すかしら?」

 今にも泣きそうな顔でそう尋ねてくる。どうにも、やりにくいな。

「わかった。お前の父が私の矜持に反しない限り、決して殺さぬと誓おう」

 どのみち、異界の生物は軒並み弱いのは実証済みだ。仮にベルゼビュートとやらと戦闘となっても、手加減しても勝てる見込みが高い。

「本当かしら?」

「私は嘘をつかん。ただし、私のルールに反したら話しは別だぞ?」

「心配いらないのかしら! マスターのいう矜持とは人間界で流行っている漫画のヒーローのような奴なのかしら! お父様は竹を割ったようなひとで、悪道にもとる行為をするなと口を酸っぱく言っているのかしら。きっと、マスターと気が合うのかしら!」

「漫画のヒーローでは断じてないわけなんだが……」

 やっぱりだ。間違いなくこの娘、やりにくい。悪とヒーローとを一緒にしているところなど特に。

「よかった! マスター、絶対うちに来て欲しいのからしら!」

 腕にしがみ付いて、興奮気味にそう求めてくる。

「うーむ。機会があったらな。というか、私に殺されかけて、怖かったんじゃないのか?」

「さっきまでは。だって、なぜ妾が殺されかけたのか、わからなかったから! でも、確かにあの状況ならマスターやお父様は、ああするのかしら!」

「そ、そうか。ところで、ロト、頼みがあるんだがいいか?」

「何かしら?」

 頼られて嬉しいのだろう。目をキラキラさせて問いかけてくる。

「この身体の持ち主を助けてやって欲しいんだが、いいか?」

「任せるのかしら! 妾のマスターなんだから、当然なのかしら!」

「お前、マスターの意味わかっているか?」

「んー、メイドが妾のお婿さになる人だって」

 両方の掌を当てて悶えるロトに、正直頭が痛くなってきた。

 こんのクソメイド。一体、自分のあるじに何吹き込んでやがる!

 そんな、顔も知らぬメイドに悪態をついたとき、部屋をの扉が開き、赤髪ポニーテールの女が入ってくると、

「仲良さそうね」

 半眼でそんなしょうもない感想を述べてくる。

「そう見えるか?」

「ええ、まるで夫婦のようよ」

「夫婦? そんなぁ~」

 さらに真っ赤になって悶えるロトに、赤髪ポニーテールの表情に亀裂が入る。マズイな。おそらくこいつ……。

「それで、案内してくれるんだろ?」

「ええ、ついてきて頂戴」

「ああ、もちろんだ」

 赤髪ポニーテールの女の後をついて、僕も歩き出す。


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