第20怪 不可解なリアクション

 俺がこの村に来てからよほど疲れていたのだろう。あてがわれた部屋に入った途端、急に強烈な睡魔に襲われてベッドに倒れ込む。


「……ぇ、ねぇ! マスター、起きるのかしらっ!」

 身体を揺らされて、寝返りを打つと、途轍もなく美しい女が俺を視点距離から見つめていた。

「……ロト……か」

「おはよ、なのかしら!」

 喜色満面の笑みを浮かべてロトは俺に挨拶をしてくる。

「ああ、おはよう」

 寝ぼけまなこで、起き上がると黒色のズボンに黒のタンクトップの衣服に着替えていた。

 あれ、俺ってあの中二病全開の衣服で寝たはずだよな。なぜ、こんな普通の服を着ているんだ? まさか、ロトが着替えさせてくれたとか?

「どうしたのかしら?」

 キョトンとした顔で俺の顔を覗き込み、話し掛けてくる。

 うーむ、俺を着替えさせてくれたのかと、そんなデリカシー皆無のことを聞くわけにもいくまい。下手をすればロトを傷つけてしまうし。

「いや、なんでもない」

 ま、いいか。別に観られて減るもんじゃない。次からしっかり、自分で着替えればよだけだ。

「じゃあ、着替えた後、飯でも食いにいくか」

「うん!」

 近くのクローゼットに近づき、中を開けると俺の着慣れた衣服が入っていた。それに着替えようとすると、

「――ッ⁉」

 ロトが耳先まで真っ赤になってそっぽを向いていた。

 うーん、この様子からロトが着替えさせたわけではなさそうだ。なら、エルドラの使用人たちの誰かだろうか? エルドラの流儀で客人を着替えさせるような風習でもあるとか?

 そんなことをぼんやり考えながら着替えを完了すると、ロトの手を引き、下の食堂へ降りていく。

 巨大な食堂には、昨日客間に列席していたエルドラの要人たちがそろい踏みをしていた。

 エルドラの要人たちは、俺が部屋に入ると、一斉に立ち上がって頭を深く下げてくる。

 おいおい、昨日より、恭しい態度がエスカレートしちゃいねぇか。というか、あれって絶対怯えているよな。昨日は若干、客寄せパンダのような状況だったが、今日はそれとは一転、檻から解き放たれた猛獣のような扱いだ。大方誰かが俺についてあることない事吹聴したんだろうよ。

「やあ、エージ君、昨日はよく寝られたかな?」

 国王夫婦とソフィアが入ってくると俺にそんなフレンドリーな挨拶をしてくる。なんだろうな、この周囲のエルドラの幹部たちとの態度の違いは。

昨日、国王は俺を王と呼び、終始敬語だった。それが、今朝は普通に話しかけてくれている。対して、この幹部たちの脅えよう。正直、意味がわからない。

 エミが食堂へ入ってくると、

「エージ……おはよう」

 そのいつもと異なる微妙な態度の違いに首を傾げながら、

「ああ、おはよ、エミ」

 右手を挙げて挨拶を返す。

(ねえ、エージ、皆どうしたの?)

 ツムジちゃんが、俺の耳元で丁度俺もいだいていた疑問を口にする。

(さあ、それは俺が知りてぇよ)

 小声でそう返答すると、

「じゃあ、皆、揃ったようだし、食べましょう」

 ソフィアがいたずらっ子のような笑みを浮かべつつも、席について皆を促す。

「ツムジちゃん、ロト、俺たちも席に着こう。流石に昨日から何も食っていねぇから腹減ったぜ」

 俺たちも席に着いて朝食を取り始めた。




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