第7怪 信念に背く行為
「ひいいいっ!」
至ところで悲鳴と断末魔の声が上がる中、
「な、何なのよぉ、あんたわぁっ!」
ヒステリックな声を上げる白髪の女に、
「だから、僕は怪人アビスといったろ? お前ら二匹は僕を弱いと断じた。お前らのその強さに、僕は興味があるし、期待もしている。ほら、とっとと本性を見せて見せろ」
【腐り土姫】の力により、紫の剣を顕現し、その剣先を向けると、強い口調で指示を送る。
「イフリート、あれは八界の住人なのかっ!?」
エンマが先ほどの演技染みた口調とは一転、子供ような口調で泣きべそをかきながら尋ねる。
『違う……』
「違うって何がだよっ!」
『あれは、八界の爵位を有する存在強度、王級の
炎の二つの大きな角を持つ青年が半狂乱で叫ぶ。
「王……級? ふざないでよっ! そんなバケモノに勝てるわけないじゃないっ!」
白髪の女が後退りしながら、金切り声を上げる。
「結局、見込み違いだったわけか……」
こいつらの瞳の奥にある感情は、まさしく負け犬のそれ。戦意自体がもはやはありそうもない。
「本当にくだらないな」
こんな奴らのために、あのエルドラの男は娘を人質に取られて己の信念を曲げねばならなかったのか? こんな雑魚のせいで、幾多の子供たちが怪人と称され、殺されたのか?
『私はイフリートと申します。貴方様はどこぞの王とお見受けいたします。我らに敵意は――』
「ウザイ」
跪いてごちゃごちゃ御託を述べてくる炎の二つの大きな角を持つ青年の頭を、強化を付与して魔力を1万ほど込めた右手で鷲掴みにすると無造作に放り投げる。
「ぐががががっーーー!」
炎をまき散らしながら、倉庫を破壊しながら、遥か遠方へ消えていき、大爆発を起こす。
「お前らは私の不文律に背いた。お前らが生き残る術は、私を実力で殺すことのみ」
「そ、そんなの無理に決まって……」
ガチガチと歯を打ち鳴らしながら呟くエンマの全身を紫の剣によりバラバラの肉片になるまで念入りに刻む。
「なあ、痛いだろう? でも死ねないのさ」
奴の半分欠けた顔を踏みつけて唾を吐きかける。そう。
「許じて……」
腰を抜かし、涙を鼻水で顔をグチャグチャに汚しながら必死に命乞いをしてくる白髪の女に、紫の剣を片手にゆっくりと近づいていく。
「来るなっ! 来るなぁ!」
無様に地面を這いまわりながら、金切りを声を上げる。
僕は白髪の女の元まで行くと、紫の剣を振り上げて――。
「よい、悪夢を」
まさに右手の剣を白髪の女に突き立てようとしたとき――。
「エージ、そこまでよ!」
赤色の髪をポニーテールにした黒服の少女、エミが僕の前で両腕を広げていた。
無理に動いたせいだろう。氷結した赤髪の女の両足はガラスのように砕けていた。
「なんの真似だ?」
服装から言ってこの女は白夜という怪人組織の構成員だ。つまり、このヒーローどもの敵のはず。なのに、なぜ自分の身を犠牲にしてこのクズを救おうとする?
完璧に面食らっている僕に、
「これ以上はただのリンチであり虐殺。それは我ら白夜の信念に反するわ!」
そんな砂糖より甘い戯言を口にしてくる。
「信念? こいつらは根っからの外道だ。しかも、怪人を害虫とまで言っていたんだぞ? いまここで潰しておかねば間違いなくお前らの仇となる」
「わかってるわ。でも、それ以上は駄目よ! 少なくともエージ、貴方は絶対にっ!」
――エージ、我ら白夜の本懐を遂げろ!
「ぐっ⁉」
中年男性の声とともに、まるでハンマーで頭の中を直接殴られたかのような激痛が襲う。
左の掌で頭を抑えつつ、周囲をグルリと見渡す。怒りのままに暴れていて、重傷者がいたことすら気づかなかったようだ。
僕を中心に半径1kmの範囲でここら一帯を【
痛みにも似た頭痛はひどくなり、視界すらも歪んできている。
「貴方は――」
金髪の女が僕に何か言いかけたとき、僕は地面を蹴ってこの場を完全に離脱した。
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