第35怪 13歳の誕生日 

 修業の後、今日も美緒の作った夕食を食べる。美緒の料理の腕はどんどん上がっているようで頬が蕩けそうなほど美味かった。

 夕食の後、美緒の勧めで屋敷に風呂に入る。いつも美緒は風呂の順番など大して気にしないのだが、なぜかこの日僕が先に入ることを強固に主張したのである。

「やはり、いいものだな」

 半端じゃなく大きな浴槽につかりながら、僕はそう呟いた。

 睡眠すらも魔力暴発に使用している僕にとって、風呂は鍛錬だらけの僕の中でも唯一の休息となりつつあった。

 ここの屋敷の持ち主は相当な金持ちだったらしく、年季は入っているがかなりの豪邸だ。浴槽もこのように小さな銭湯並みの広さがある。

「今後はこの屋敷もリフォームしてみるのもいいかもな」

そんなことを考えていたとき、扉が開くと水着姿の美緒が入ってきた。

「美緒……今僕が入っているんだけど?」

 もちろん、今まで美緒が僕が入っているときに浴室には入ってきたことは一度足りともない。

「ダーリン、美緒の水着、可愛いでしょ?」

 僕の非難に答えもせず、その顔から足先まで真っ赤に染めながら浴槽に入ると僕の前でクルリと回る。大きな双丘がプルンと揺れる。流石の僕もこれは目のやり場に困る。

「美緒悪ふざけは――」

 再度、注意を促そうとしたとき、美緒は僕に抱き着くと唇を押し付けてくる。そして僕の両眼を見つめると、

「美緒は本気だよ。だーーい好きッ!」

 そう一方的に早口で喋ると、再度僕に口づけをしてくる。美緒らしくもない様子に戸惑っている僕に美緒は僕の背中に両腕を回して強く抱きしめて僕の舌に自身の舌を絡ませてくる。

 美緒の女性特有の柔らかな感触と砂糖のような甘い口づけに、脳髄に電流が流れて全身の力が抜けていく。僕は一切の抵抗をすることなく美緒との行為に身を任せた。


 暫くして多分のぼせたのだろう。美緒は幸せそうな顔で、浴室を出て行ってしまう。

 結局、今回もキスだけだったが、普段とは段違いのインパクトだった。頭がショートしてしまうほど。為されるがままに美緒との甘い時間をすごしてしまっていた。

「これ以上は彼女のためにもならないよな」

 僕は既にこの手を血に染めてしまっている。対して美緒はまだ戻れる。僕にとって今や美緒は大切な相棒だ。僕のせいで彼女が不幸になるは我慢ならない。初音や司同様、いずれ彼女は元の生活に戻るべきだ。しかし――。

「今の僕にそれができるのか?」

 自問自答してみるが、答えなどでるわけもない。それほど美緒は僕にとって大きくなっているとういことかもしれない。

「いいさ。答えを出すにはまだ時間はある」

 僕は浴槽から上がり、脱衣所へと歩いていく。


 風呂から上がって居間へ行くと美緒はソファーに座ってTVを見ていた。僕と目が合うと真っ赤になって視線をさ迷わせる。美緒とは思えぬ挙動に気まずい雰囲気が流れる中、

「み、美緒、先に寝てるからすぐに来てね」

 美緒はそう告げると、やはり、真っ赤になって逃げるように部屋からでいく。

「どうにも気まずいな……」

 とりあえず、すぐに来いというのが美緒のオーダーだ。いくとしよう。

 ソファーから立ち上がったとき、ふと気付く。

「そういや、僕今日が誕生日だったな」

 その言葉を口にした途端、僕の周囲が真っ白な霧に包まれる。

「な、何だ、これ!?」

 周囲が突如、霧に包まれたのだ。気が動転している僕をよそに、白色の霧は僕を包み込み、意識は真っ白な霧に塗り替えられていく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る