第31怪 ウィルオウィスプ
【
試しに付与と同様の作業をしてみるか。
僕は蒼炎を鷲掴みするとこれに、『蒼炎を生贄にして召喚』を念じて魔力を1000ほど込める。突如、生じた禍々しい装飾のなされた扉。その扉はギギッと軋み音を上げてゆっくり開いていく。
その扉の中から、丁度サッカーボールほどの球体が青色の魔力をまるで霧のように周囲撒き散らしながら飛び出てくると、見るからに如何わしい扉はスーと煙のように消失し、この場は僕と蒼炎の球体だけとなる。
「もしかして、これがウィルオウィスプか……」
僕の眼前にプカプカと浮かぶ青色の球体は、まるで意思ある生物であるかのように小刻みに空中を遊泳している。
僕はこの青色の球体に鑑定をかける。
――――――――――――――――――――――――――――
【ウィルオウィスプ】
・火球に意思が宿った生命体。
・種族:魔種
・系譜:超神八皇の六、火のカグツチの下位の眷属
・存在強度:D(特級)
・限界魔力量:700
・恩恵魔術:【
――――――――――――――――――――――――――――
よくわからぬ表記となったな。
ともあれ――期待外れだ。
「あの蒼炎を発生させる奴だ。どれほどすごい生物かと思ったんだが、ちっとも強くは見えないな。デコピン一発で破裂しそうだし」
僕の独り言に、光の球体はプルプルと身体を揺れ動かす。
「しかも、火のカグツチ? 魔種? 要はあのサイクロプスのような魔物の一種ってことか?」
ウィルオウィスプはジグザグに動き周り、青色の火花を飛ばし始める。
「実際、呼び出したはいいが、こいつどうするかね? 召喚した存在は契約することにより使役することができるらしいが、こんな魔物、いても目立つだけだろうし」
魔導書の『第三章 魔術実践編』の最初のページには各魔術系統の説明もあった。そこの召喚系魔術の特徴として、呼び出すことのできる生物はその召喚系魔術がより上位であればあるほどより、高位の存在を召喚できる。そして、その呼び出した存在と契約することにより、加護を得ることができるんだそうだ。
もっとも、僕よりも圧倒的な弱いこいつの加護をもらってもこれっぽっちも強くなるとは思えないわけだが。
『§ζηρっ!』
よくわらかぬ擬音を上げつつも、ウィルオウィスプは突如、上空に浮き上がって僕に向けて青色の炎を放ってきた。
咄嗟に身体強化に魔力を一万ほど込めて『耐熱』の効果を付与する。
耐熱の効果により、熱すら感じない。ま、こんなもの、きっと仮に魔力を込めなくても、今の僕にとっては、カエルの面に小便のようなものだろうよ。だが――。
「お前、僕に敵意を向けたな」
僕は戦闘狂ではないが、敵対する奴を笑って許すほどお優しくはない。何より奴は魔物。魔物とは己の欲のために、その身一つで胸糞の悪い勇者という正義の偽善者どもに立ち向かう勇猛果敢な者ども。僕の目指す悪の怪人とその点で共通している。手心を加えるなど魔物という存在を侮辱している。徹底的にやってるさ。
『――――っ!』
擬音がさらに強くなり辺り一帯に響きわたる。
ウィルオウィスプの周囲の空を多い尽くす蒼炎。奴の本気ということだろう。
「ふむ、このままではここら一帯火の海だな」
僕は【
「これで無茶ができる。では実験だ」
僕は【
突如、僕の前に赤黒色の球体が生じつつも、グルグルと高速で回転していく。
「ウィルオウィスプはこいつ以外にもいるということだろうよ」
【
『――――っ!』
僕に向けて蒼炎が殺到する。僕は親指を立てて人差し指を奴に向けると、
「ショットッ!」
赤黒色の球体を放つ。
僕の意思により、赤黒色の球体は空を切り裂き疾駆する。そして、ウィルオウィスプを斬り裂き、僕を覆いつくそうとしていた蒼炎さえも瞬時に消し飛ばしてしまう。
直後、僕の眼前の空中に、『ᚢᚱᚢᛟᚢᛋᚢᛈᚢᛄᚢᚢᛣᛟᚴᚢᚾᛟᚴᛖᛁᚤᚪᚴᚢᚴᚪᚾᚱᚤᛟᚢ(ウィルオウィスプ従属の契約完了)』という真っ赤な血のような文字が映し出される。
ウィルオウィスプ従属契約? ウィルオウィスプを僕が従属したってことか? 僕があの蒼炎の球体を思い描いたとき――。
「うおっ!?」
突如、僕の眼前に蒼炎が生じる。それらはユラユラと僕の前を漂っていた。
「なんだ、これ? ウィルオウィスプの残りカスか?」
もっとも、攻撃してくる様子もなく、ただ僕の周りに漂うだけ。動くと蒼炎も僕の周囲を移動してくる。
「これはこれで困るぞ。こんなものにつき纏われたままでは町にすら出られない」
そう呟いたとき、瞬時に蒼炎は消失する。まさかな……。
再度、蒼炎を思い描いた途端、生じる青色の球体。試しに左右上下動くようにイメージすると、僕のイメージ通りに自在に蒼炎は移動する。
それから色々試した結果、蒼炎を僕の意思で自在に操ることができるようになっていた。この自在というのは比喩でもなんでもない。本当に僕が認識する場所ならどこでも蒼炎を発生、増幅させることができるようだった。
ふむ。情報を少し整理しよう。
この【
「いや、まだ、これも一つの推論にすぎん。やっぱり検証は必要だよな」
僕は偶然掴んだ法則の検証にのめり込んでいく。
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