第27怪 次のステップへの扉
結局、ウイズダム社からは成功報酬として10億円の報酬を払われた。加えてアメーリア合衆国政府との取引により、10億円が入る。結果、此度の遠征の報酬は20億円となる。
そもそも、此度の報酬の目的は
次にジパングの活動拠点だが、これもクリフに協力してもらいジパングのある蔵戸町の郊外に会社設立を名目に、広大な土地とそこにある中古の三階建ての屋敷を買い取った。この土地に来月から僕らの拠点を建設する予定だ。この建物内にトレーニング施設や魔術の実験施設などの設備も格安で設置されることになる。やっぱり、クリフと手を組んだのは正解だった。立札でも立てて世界的企業ウイズダム社が協賛していると明示しておけば、誰も僕のような人間がこの地の所有者だとは思うまい。
美緒は結構古い屋敷だったので不満タラタラかと内心覚悟していたが、予想に反して終始ご機嫌だった。
また、今回の【
最も大きな成果は、魔術の発動の際に魔力に効果を付与す技術の確立だ。この技術が完成を見たおかげで、僕の魔術の自由度は爆発的に増した。
もう一つが、詠唱の法則だ。
シルバーナを玩具にいくつか試した結果、各術の詠唱において『神』やら、『精霊』がなくても術が発動したということ。しかも、その効果は逆に『神』やら、『精霊』を入れない方がやや高くなった。
具体的に【
『炎の精霊よ、炎球となって敵を討て』を『炎よ、炎球となって敵を討て』にしても同等以上の効果が得られるということだ。だから、てっきり単に僕の魔力を炎に変換しているに過ぎないかとも思ったが、魔術や既にある炎を基礎に魔力込めることはできても、何もないところに炎を出現させることはできなかった。
きっと何かに願って【
これは【
もっとも、【
そして、遂に【鑑定】という魔術が解禁される。この魔術の解禁によって僕の中での優先順位が逆転する。というより、僕にとってこの魔術以外のすべてのことがとるに足らないものとなっていた。そう。この魔術は文字通り、僕の魔導士人生を変えるものとなったのだ。
当初、【鑑定】は、色々なものを詳細に把握できたから、僕は楽しくなってウキウキ気分で色々なものを鑑定していく。そして、【
木材の材質から成分、強度、レア度など今まで以上の情報を摂取することに気付く。
さらに面白くなった僕はこの【鑑定】にのめり混んでいく。そして――僕は思いついた。そう思いつてしまったんだ! この【鑑定】の効果を全力でドーピングして魔術を鑑定したらどうなるのかということを。特に呪文は不明なことが多い。やる価値はあるはずだ。
まずは、僕の唯一の攻撃手段の【
これに効果を著しく向上させた鑑定を実施する。
――――――――――――――――――――――――――――
【
・術の効果:火球を放つ魔術。
・詠唱:揺らめき輝く青き炎よ、我に力を。
・根源:ウィルオウィスプ
――――――――――――――――――――――――――――
あーはいはい。あの魔導書、全て誤っていたわけね。呪文自体が全く違うし、力を借りていたのは、精霊なんぞというざっくりしたものではなく、ウィルオウィスプという明確な存在だ。
物は試しだ。実際に発動してみるとしよう。
僕は馬鹿に広い敷地の真ん中に木の棒に布を巻いた的を立てると、十分距離をとった上で右の掌を向けて、
「ᚤᚢᚱᚪᛗᛖᚴᛁᚴᚪᚵᚪᚤᚪᚴᚢᚪᛟᚴᛁᚺᛟᚾᛟᛟᚤᛟ, ᚥᚪᚱᛖᚾᛁᛏᛁᚴᚪᚱᚪᚥᛟ(揺らめき輝く青き炎よ、我に力を)」
魔力1を込めて詠唱をする。直後、右手の前に蒼炎の球体が生じた。
「
蒼炎を的目掛けて放つ。高速で回転した蒼炎は的を燃やし瞬時で蒸発させてしまう。
「……」
みためは同じ球体だが、【
それからも検証を重ねた結果、この蒼炎は僕の意思で自在に動かすことができることが判明する。これで同じ魔法というんだから、笑っちゃうよ。
ともかくだ。ここまで途轍もなく燃費のよいこの素晴らしい魔術を生み出すウィルオウィスプってのはどんな生き物なんだろうな。ぜひとも、会ってみたいぞ。
そしてこれは僕の勘だが、この生物と会う事自体が、さらなる魔導の壁の突破になる。そんな気がするんだ。
もっとも、会いたいといって簡単に叶うなら世話はない。というか、通常は妄想の類だろう。なにせ、世界に現象を引き起こしている不思議生物を呼び出したいというわけだからな。
だが、それをいうなら魔術が素人の僕が通常ではあり得ない魔力を得ているのだ。不可能として切り捨てるにはあまりに早計というものだろうさ。
「この本に何かあるとは思うんだよな……」
これは僕の勘であり、格別根拠があるわけでもない。もっとも、僕は確信をもってこの一見不可能といえる答えがこの魔導書にある。そう考えている。ああ、その通りだ。始まりはこの魔導書だった。僕はこの魔導書により魔術という力と魔力を得る。そして、承継した200弱にすぎない魔力を、この魔導書に発現した【
「直に魔術が解放されていけば、見つかるだろう。多分……」
自ら口にしてみたが、どうしても納得させることはきなかった。
このまま指をくわえて待つ? いつ解放されるかもわからぬ新規の魔術をか? それはだめだ。絶対にそんなに待てない。だって、もうじき……。
「うん? もうじき、何なんだ?」
突如己に生じる正体不明の焦燥。その心当たり皆無の想いに僕らしからぬ混乱をしながらも、このまま諦めて様子を見る気には微塵もなりえなかった。
「この中にあるとは思うんだけどな」
まだ真っ白のページをパラパラめくっていく。今までは何もないと思って気にも留めなかったが、ここに文字が記載されるのはどんなシステムなんだろうな?
「もしかしたら……」
丁度、【
ここで【
つまり、【
魔導書の未読領域の白紙に【
「ヒーハー! よし! よし! よ~~~しっ!」
思わず自室の椅子から立ち上がってガッツポーズをしつつ、歓喜に吠えていた。
これで大幅なショートカットが可能かもしれないから。
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