「浦和レッズ」と「埼玉県」が繰り広げる「暗闘」の驚くべき実態…サッカーの聖地・埼玉スタジアムをめぐって「いま起きていること」
態度が一変した
まず、時間をさかのぼって、埼スタの運営・管理の変遷から説き起こそう。 そもそも指定管理者制度は、2003年、小泉純一郎内閣の「官から民へ」の行財政改革の流れのなかで、公的な団体に限定されていた公共施設の運営を民間企業やNPOなどに開く方策として始まった。埼玉県が埼スタに指定管理者制度を導入したのは、2020年だった。 指定管理者の代表は緑地協会だった。そこに構成員として、まずレッズが選ばれる。当時、自民党の埼玉県議で、県議会サッカー振興議連の会長だった故・野本陽一氏が、「いずれレッズにスタジアム運営を任せ、一本立ちさせたい」(埼玉県サッカー関係者)と考え、指定管理者に引き入れたといわれる。そして、野本氏が急逝すると、応募の土壇場で、造園業協会、ビルメン組合が構成員に滑り込み、4社のJV (ジョイントベンチャー)が組まれた。 JVの4社は共同責任を負うとされ、案件の合意を得るのに時間がかかった。造園業協会は植栽の管理、ビルメン組合は設備の管理や清掃、警備の仕事を請け負っており、委託事業者の色彩が濃い。スタジアム運営の企画を立案し、実行するのは、もっぱらレッズと緑地協会だった。 2023年秋から2024年春にかけて、レッズは、次の指定管理者の公募(2024年夏)に向けて、緑地協会と協議を重ねる。造園業協会とビルメン組合は実態どおりの委託事業者にして業務を発注し、レッズと緑地協会が「2トップ」で指定管理に当たる体制が話し合われた。 私が入手した文書には、2024年2月29日14時から埼スタ1階で開かれた会議に緑地協会側の埼スタ管理事務所長と課長、レッズ側の副社長と二人の担当者が出席したとあり、次のような議事要旨が書き残されている。 〈埼玉スタジアム2002公園(スタジアムを含む)は県の財産である。そのため、県の財産管理は県の外郭団体である緑地協会が、施設の維持管理はレッズが担うこととすることで整理できるとレッズ提示。緑地協会は理解を示した〉 2024年3月21日に埼スタ1階で行われた協議では、レッズと緑地協会の「基本合意書(案)」として、〈第2条 (指定管理者の)団体構成は緑地協会及びレッズの2団体による管理運営体制とすること、(代表団体となる者は今後協議で定める)を再確認し合意。基本合意書の締結に向けて緑地協会本部との調整に入ることを確認〉と記されている。現場レベルでは、レッズと緑地協会の「2トップ」での指定管理が確約されていたと受け取れる。 ところが、同年3月29日13時30分からのZoom会議で、緑地協会は〈協会幹部の人事異動により、合意締結が出来ない〉と態度を一変させた。そして、4月に埼玉県の「都市整備部」からの出向者が、緑地協会の新理事長に就いた。5月1日、緑地協会での会議で、新理事長らはレッズ幹部を前に「4社JVの形を維持継続していきたい」と「2トップ」の基本合意案をひっくり返した。 「これまでの協議は何らの意味がなく反故にされたと理解せざるを得ない。協議を継続したかったが、残念ながら別々で今後のことを考えていかざるを得ない」とレッズ側は反発する。緑地協会とレッズの間に深い亀裂が入った。 レッズは、「単独」で指定管理者への応募に動きだす。すでにJリーグでは、モンテディオ山形、鹿島アントラーズ、ガンバ大阪、セレッソ大阪、ヴィッセル神戸、サンフレッチェ広島の6クラブが、それぞれ、指定管理者として「単独」で代表法人に選ばれ、地元自治体のスタジアムを専門的な視点で運営している。レッズも、あとに続こうとした。