第20怪 新章――魔術実践編の解放
早朝、寝苦しさに起きると、美緒が僕に絡みつきながら小さな寝息をたてていた。暑がりの美緒は毛布を引っぺがしており、パジャマから二つの大きな双丘が溢れている。
「風邪ひくぞ」
小さく指摘すると、私は美緒を起こさないように引き離すと、毛布を掛けて朝のトレーニングをするべく部屋を出た。
一階のリビングで本日の魔術の鍛錬のため、魔導書を開くと――。
「新しい章に入ったッ⁉ このタイミングでかっ!?」
僕は新たな章、『第三章 魔術実践編』へと突入する。
そこには【
各魔術は呪文なるものを唱えて発動し、身体強化、物質強化、自己治癒の三魔術は比較的詠唱破棄がしやすい魔術であり、戦闘にとって基礎の基礎だから無詠唱から記載されていたそうな。
ともかく、上記三魔術についてだ。
【
「やってみるか……」
魔導書の指示通り、魔力1ほど利き手である右手に魔力を集めて、『ᚥᚪᚱᛖᚱᚪᚵᚪᛁᛞᚪᛁᚾᚪᚱᚢᚴᚪᛗᛁᚤᛟ, ᛏᛟᛟᛗᛁᚾᛟᛏᛁᚴᚪᚱᚪᚥᛟᚪᛏᚪᛖᚤᛟ(我らが偉大なる神よ、遠見の力を与えよ)』と唱える。
直後、半径5メートルほどのドーム状の透明な膜が僕を中心に発生する。
「へー、これ、すごいな!」
視界が届かない場所までまるで自らその場所にいるかのように鮮明に視認し得る。確かにこれは便利だ。だが、魔力1で半径5メートル程度か。効果範囲は随分ショボいな。それに、なぜ、神にお伺いを立てねばならないんだよ。ま、いいさ、今の僕の魔力なら力押して効果範囲を増やせるし、この呪文についてももしかしたらより短縮できるかもしれないし。
次の【
最後の【
この魔術の実戦は家の近くでは危険だ。下手にコテージに延焼して丸焼けになってはたまらない。近くの湖に出て試すことにした。この5km内に民家はないし、おまけに今は午前五時、僕ら以外いやしまい。
湖の畔に簡易な的を作った後、離れて右手に魔力1だけ込めて、『ᚺᛟᚾᛟᛟᚾᛟᚱᛖᛁᛋᛖᛁᚤᛟ, ᚴᚤᚢᚢᛏᚪᛁᛏᛟᚾᚪᛏᛏᛖᛏᛖᚴᛁᚥᛟᚢᛏᛖ(炎の精霊よ、炎球となって敵を討て)』と唱える。直後、僕の右手の前にサッカーボール程の球体が発生する。
「ᚢᛏᛖ(撃て)!」
炎の球体は一直線に的に当たって燃え上がる。
炎を使えるようになったのは一歩前進だ。威力は魔力を込める量を調節すればなんとでもなる。ただ、やっぱり詠唱の問題は大きい。無詠唱で極限まで効率化した僕の身体強化の方が遥かに実践では効率的だと思われる。まあ、僕には効果の付与という技術もあるし、これも使い方次第かもしれない。
とりあえず、これ以上やるとバレる危険性があるし、魔力の調節をミスってここら一帯火の海となる危険性がある。この別荘は美緒の祖父のもの。これ以上彼女に迷惑をかけるわけにもいくまい。今日はここまでとしよう。
そのあと、比較的安全な【
「カ、カッコイイッ! やっぱり、マジでカー君似合うよッ!」
興奮気味に両拳を握り絞めてそう力説する美緒に、
「僕は最初のデザインの方が好みだがね」
そんな皮肉を口にする。
「美緒は断然、こっちが言い! というか、これ以外は絶対に美緒が認めないっ!」
瞳を強い決意に灯らせながらそう断言したのだった。
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