第19怪 合宿の始まり
時間まで魔術の鍛錬した後、荷物をまとめて秋菜駅前へ行くと、駅のバスターミナル前でブラウン色の髪をツインテールにした小柄な少女が僕に気付き大きく手を振ってくる。美緒は丈が短いズボンと肩を出したトップスの上にジャケットを着こんでいる。その小柄な体躯には不釣り合いの巨大な二つの胸がトップスをこれほどかというほど押し上げていた。
「カーくん!」
彼女は喜色満面で僕の右腕を抱きかかえる。
美緒は芸能人顔負けの美少女だ。特に今の彼女の刺激的な恰好と相まって集中していた周囲の視線は驚きともに僕に対する興味へと変わる。
こんな風に目立つから、美緒と一緒に行動するのは避けたいところなんだが、今回の拠点となる別荘は美緒の祖父の別荘だ。場所まで提供してもらって、ベタベタするのは嫌だとは言えず、こうして為されるがままとなっている。
「じゃあ、行こうか!」
目の前に泊まっているバスへと乗り込む。
バスに一時間半ほど揺られる。バスから降りて山道を歩くこと30分で小さなコテージへと付く。このコテージは有名な小説家である美緒の祖父が主に夏使用しているものであり、当面生活できるすべてが揃っているらしい。
もちろん、ここは此度のミッションのための拠点。僕はこの一カ月世界中を飛び回ることになるわけだが。
美緒は意地の悪い笑みを浮かべながら、コテージ内に設置されているソファーに腰を下ろすと、
「それで、カー君、ラインで送った案件はお気に召したかな?」
本題に入ってくる。
「条件次第だな。というか、先方は僕のような子供に依頼するものか?」
僕がウイズダムのCEOなら即断るような話だ。
「本件のターゲッドは、元々
謳うような口調で口遊む美緒の様子から言って、裏があるな。というか――。
「そんな兇悪な組織でなぜ、穏便なんだよ? それこそ、お抱え弁護士の時間ではないのか?」
「さあ、そこまでは知らない。弱みでも握られてるのか、それとも拉致された子供の安否が心配なのか。おそらく、後者だと思うけどぉ」
「世界中から公募を募ったってことは、選別方法は?」
「明日の正午に指定の場所に来いって」
そこで力を示せば雇われることはできる。おまけに今回は秘密裏に進めたいってことだから、主に呼ばれているのは裏の人間どもだろう。いい。いいね。
「受けよう」
僕たちには資金がない。雇われれば旅費など全額雇い主負担で、兇悪組織と丁度良い実戦の機会を得られる。まさに願ったり叶ったりだ。
「そう言うと思った。すぐにエントリーをしとくね。あとね頼まれていたものできてるよぉ――」
美緒は隣の部屋から紙袋を持ってくると机の上に上下の黒の衣服とマスクを置く。
黒のブーツにレーザーのズボンに装飾がなされたレーザーのトップス、黒のフード付きの外套。極めつけは顔のほとんどが隠れる黒のマスクに黒色の手袋。これでは、どこぞの妄想好きのイタイ餓鬼じゃないか。
「サンキュウ。でもこれ、僕が指示したデザインと違うんだが?」
僕はもっとこう、熱い如何にも怪人Aのイメージを体現したような絵を書いて美緒に渡したはずなんだ。
「やーよ。あんなダサいの」
「お前な……」
あっさり、ダメだししやがってっ! あれは僕にとって至高の姿なんだぞ! ま、此度コスチューム代の半分は美緒に前借りしている。文句を言えるような立場では断じてないわけだが。
「それよりさ。美緒、はやく今回の報酬もらいたい」
「わかったよ……」
肩を竦めて椅子に座ると僕の膝に美緒が乗ってくると恍惚の表情で抱きしめてくる。昔は姉と弟のようだった身長も、僕も背が伸びたからか、大分釣り合うようになってきた。
「ふむぅ」
美緒が小さな唇を押し付けてくる。その甘い感覚に不覚にもピリッと電撃が走る。僕の唇を啄んだ後、美緒は僕の唇を押し開けて舌を絡ませてきた。美緒の温もりが鋭敏となった感覚をさらに刺激する。僕はその抗いがたい甘い感覚に任せて美緒を抱きしめると瞼を閉じた。
美緒はようやく僕から離れると鼻歌を疑いながらご機嫌で台所で料理を作り始める。
美緒とは、この一カ月協力する代わりに、僕はこの一カ月可能な限り付き合うことを約束している。付き合うといっても彼女にもポリシーがあるらしく、『これ以上はカー君がもっと成長したらね』といって、決してキス以上は要求してはこない。ただ最近、そのキスがただの子供同士のお飯事のものから大人同士のするものに変わったぐらい。
美緒の作る少し遅い昼食を食べてからずっと彼女の全ての要求に従う。夜、彼女は僕を抱き枕にして眠ってしまう。普段なら、魔力暴走してから睡眠をとるのだが、この状況でスプラッターになるわけにもいくまい。この一カ月は魔力暴走は控えるべきかも。そんなことを考えながら僕は眠りという深い闇に落ちていく。
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