第15怪 敵対しないことが最大のメリット

 時は舞達が部屋から退避した直後に遡る。


 僕の指示でショートカットの黒髪の少女が、おかっぱ少年を連れて出て行くのを確認して、僕はハングレ集団グレムリンの幹部共を眺め見る。

 僕と目が合っただけで失禁し、救いを願い始める。そんな奴らの願いを平然と無視して、奴らがしようとしていた人間ダーツを一人ずつ強行した。

 椅子に縛り付けられているNo2であったサングラスの男の四肢に突き刺さる料理用のフォークやステーキナイフ。店に置いてあったフォークやステーキナイフに【貫通力】の効果を付与して投げたのだ。

「……」

 遂に痛みで気絶したサングラスに無精髭の男を始めとする仲間たちの無残な姿を目にして、グレムリンのトップ我頭久留宜がとうくるぎは涙を流しながらも、許しを乞うたが、構わずダーツを実行しようとする。僕がフォークを投げようと振りかぶったとき――。

「な、なあ、わかってんのか! 俺のオヤジは四極会の一つ、南雀なんじゃく組の組長だっ!」

 決死の表情で懸命に喚き散らす。

「だから?」

「だからって……俺を傷つければオヤジが怒ってお前に報復するぞっ!」

 まさかこんな返答をされるとは夢にも思わなかったのか、慌てふためいて心底どうでもいい戯言を叫ぶ。

「私に報復ねぇ。面白いじゃないか。そうなったらなったで、潰すだけ。ぺんぺん草さえ生えないほど念入りにな」

「お前……狂ってるのか?」

 信じられないものでも見るかのように、目を見開き尋ねてくる。

「狂っているかか――さて、どうだろうな」

「狂っておいでですよ」

 部屋の出口から顔に十字傷のある男が多数の黒服たちを引き連れて入ってくる。

この男、美緒を誘拐しようとした何時ぞやの男か。

「あ、あんた元四極会北羅ほくら組の組頭、北畠羅運きたばたけらうん! 堅気に落ちたって聞いてたが、オヤジの頼みで俺を助けてに来てくれたのかっ!」

 九死に一生を得たかのように、

「そうか……お前ら四極会だったのか……」

 あの時の報復ということか。なら話が早い。僕はあのとき忠告をした。それを無視するなら、今度は手心は加えない。徹底的にやってやるさ。パキパキと両手の骨の関節を鳴らしたとき、

「おっと、勘違いしねぇでくだせぇ。あっしら、北羅ほくら組はあの事件以来きっぱり、足を洗いやした。というより、ある警察官に極道を続ければ未来に確実に、旦那と衝突することになると脅されましてねぇ。今や警察にある如何わしい組織の中で犬として汚れ仕事を担当していやす」

 そんなカミングアウトをしやがった。

 ということは、こいつら警察の関係者というわけか。なら、厄介さのレベルが跳ね上がる。国家権力と正面切って対立するには僕にはまだ準備が足りない。

「あ、あんたら、四極会を裏切ったのか、どうなるか――ぐがっ!?」

 必死の形相で喚き散らす我頭久留宜がとうくるぎに、顔に十字傷のある男は近づくとその鳩尾を蹴り上げる。

「テメエは黙ってろ。あっしは、旦那と話している」

我頭久留宜がとうくるぎに視線すら向けず、そう忠告すると、

「組織は旦那を探していやす。もちろん、あっしらが旦那のことを奴らに漏らすことはない。それはお約束いたしやす。だから、この馬鹿の処理はあっしらに任せて下せぇ」

 僕に右腕を前にして腰を折る。

 悪くない取引だ。だが、そうするこいつらのメリットが不明だ。ここははっきりさせるべきだろうな。

「僕を黙っていてお前らに何のメリットがある?」

「決まってやす。貴方に睨まれない、敵対しない。あっしらにとってそれ以上のメリットがあるとお思いで?」

 顔に十字傷のある男は、さも当然のように返答する。

 敵対しないことが最大のメリットか。面白いな。

「わかった。その取引乗ろう。ただし、こいつがしたことのケジメは取らせてもらう」

「ご随意に」

 僕は我頭がとうの前まで走ると、奴に弾幕を浴びせる。

 たちまち肉ダルマと化した奴に背を向け、僕はグレムリンのアジトを後にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る