ミドリムシを極小ボールに入れ培養、世界1位に 長野の高校生3人

北沢祐生
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 長野県立飯山高校の女子生徒3人が、科学の世界大会で1位になった。ミドリムシなどの緑藻類を極小の球体に閉じ込め、効率的に培養することに成功。緑藻類は光合成の過程で二酸化炭素(CO2)を吸収するため、今回の研究が地球温暖化対策につながればと3人は夢をふくらませている。

 同校2年の大塚結愛さん、高藤陽菜果さん、藤沢佳美さんが開発したのは「二酸化炭素吸収ボールMBR(ミドリバイオリアクター)」と呼ばれるもの。直径5ミリほどで、外見上はまるでイクラのようだ。

 3人とも自然科学部に所属し、地球温暖化や環境問題に元々関心のあった大塚さんの提案で研究はスタートした。

 ヒントを与えたのは指導する中村英(すぐる)教諭(理科)だった。飯山高に再編統合された飯山北高の生徒だった20年前、アルギン酸ナトリウムと塩化カルシウムの水溶液を反応させ、ゲル状でありながら外側の膜だけが固まっているボールを生成する実験をしていた。

 中村教諭はミドリムシなどの緑藻類に興味を持っていた3人に「ボールに閉じ込めてみたら?」と勧めた。生徒たちは同様のやり方でミドリムシなどを外側の膜だけが固まったボール内に閉じ込めた。このMBRに光をあてるとCO2を吸収し、暗闇にすると吸収しないことを繰り返し確認。MBRの緑藻類が光合成することを実証した。

 さらに、20種以上の水溶液を用いてMBRを培養した。色や形状の変化を注意深く観察した。スーパーで購入できるドライイースト(酵母)によって急速にMBRの緑色が濃くなるなど緑藻類の増殖が促されることを突き止めた。

 こうして簡単な方法で費用をかけず、1週間ほどでMBRを完成できるようになった。1リットルのMBRを丸一日、光合成させると1.5リットルのCO2を吸収する計算という。同様の役割を果たす木の成長には多くの歳月を要するが、MBRは短期間で効果的に光合成する道が広がる。

 その成果を昨年10月、全国から約100チームが出場した高校化学グランドコンテストで発表し、文部科学大臣賞に次ぐ2位の「化学未来賞」を受賞した。日本代表に推薦され、1月に台北で開かれた世界大会(台湾国際科学フェア)で生化学部門の1位に輝いた。同大会には世界29カ国の60チームと、台湾の174チームが参加し賞を競ったという。

 コンテストに特別協賛している企業は「ミドリムシを生きたまま閉じ込めるという発想と、実際にチャレンジして達成できた点が素晴らしい。実験の過程で現れる変化を非常によく観察し、楽しみながら主体的に研究に取り組んだことが伝わる」と受賞をたたえた。

 ミドリムシなどは自然界に存在するが、異常に増えれば環境に悪影響を与えることもある。これを膜に閉じ込めたMBRにすれば、環境への負荷を減らしながら水中や大気中で二酸化炭素を回収し、酸素に変換する能力を高められると期待されている。

 世界大会では、英語を用いて自分たちのブースに資料を掲示したり審査員らに説明したりした。教員が手助けできない中で、3人とも堂々とコミュニケーションをとり「英語への興味が広がった」(高藤さん)。

 文化交流では浴衣を着たり、書道を披露したり。他国の伝統や文化にも触れ「視野が広がり、いい経験になった」(藤沢さん)という。

 3人ともさらに実験を深化させていく考えだ。将来は特別支援学校の教員志望という高藤さんと医学系への進学を目指す藤沢さんは「MBRのすごさを普及させたい」と意気込む。薬学部で研究したいという大塚さんは「MBRの能力をたくさんの人に知ってもらい、地球温暖化対策や環境問題の解決に貢献できるようになれば」と話す。

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