英国メディアの現場から…

山上 暢(やまがみ のぶ)さん
出身地:名寄市
職業:テレビ朝日系列のHTB(北海道テレビ)より出向し、テレビ朝日ロンドン支局駐在記者

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ー 英国に来た経緯と理由は?
人事異動です(笑)HTB入社以来記者として活動し、道内で起きる事件事故や、自然を追ったドキュメンタリー制作など幅広く取材してきました。テレビ朝日の報道番組「報道ステーション」に出向していた際、海外ニュースにも携わるようになり国際的な視座に立った取材、「世界の中の日本・北海道」を見たいという思いを強くし、ロンドン支局への赴任を希望しました。

ー英国の報道・メディアに従事して、気づいたことなどありましたら、教えてください
いま、すさまじいスピードで「デジタル化」の波が押し寄せています。それは、単にニュースのネット・YouTubeやTwitter、インスタグラムなど他メディアへの掲載というだけではなく「取材ツール」としてのデジタルの活用です。SNSに投稿された動画や画像、ネット上に公開された政府の文書など、だれもがアクセスできる情報=オープンソースを利用した取材手法が確立されています。マレーシア機墜落事件や元ロシアのスパイ事件などで真実を暴いた英国の調査報道ウェブサイト「べリングキャット」などはその最たる例です。私も、BBCでオープンソースを活用した取材チームに所属する記者からレクチャーを受けましたが、テクニックさえ身に付ければすぐにでも始められることばかりです。この、取材手法はまだまだ日本では浸透しているとは言えません。ただ、このコロナ禍で気軽に海外などの現場に行きにくい今だからこそ求められる技術だと思います。

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日本でも注目されたヘンリー王子夫妻の「メグジット」騒動ではバッキンガムパレスからの
中継を担当

ー コロナ報道に対する日本と英国の違いなどはありますか
BBCのニュースを見ると、新規感染者の「数字」が毎日、ヘッドラインになっているでしょうか?日本のニュースを見ると日々、「東京都で●人超え」「●月以来」、こういった見出しが並んでいます。英国政府は早い段階から「コロナとの共生」を掲げているなど日英の施策の違いはあるのかもしれませんが、日本のニュースを外から見ていると「表層的」な報道に終始している印象があります(自戒も込めて)。よくネットのコメントでは日本の報道は「煽りすぎ」という意見を見かけますが、それが一因かもしれません。一方、英国の報道を見ると感染者数に触れることはあっても同時に入院患者数や重症者数にも触れる頻度は日本より多い印象があります。数字一つとっても表層的で終わらせることなく、専門家や記者を呼び多角的に解説するシーンが多くみられます。新型コロナという誰も経験したことのない「未知との闘い」だからこそ、うわべだけではなくあらゆる角度から冷静に分析していくことが必要だと肝に銘じて、日々の取材や原稿の執筆、VTRの構成にあたっています。

ー これまでで印象に残っている取材や人物などをおしえてください
IOCトーマス・バッハ会長の「笑み」です。東京五輪のマラソン・競歩会場が突然、札幌へと変更されることになった2019年冬のIOC総会を取材し、記者会見でバッハ会長に質問しました。「突然の札幌への会場変更で懸念はないか?」。これに対しバッハ会長は、少しの間があった後、笑みを浮かべて「ノー」と答えました。一笑に付しただけなのか、本当に自信の表れだったのか。その真意を探ることはできませんでした。おそらくトップダウンで決めたであろうことに、不安が残る影を覗かれたくないという思いも少なからずあったでしょう。思えば当時の日本には、札幌への嘲笑や悪口、いわゆる「札幌dis(札幌ディス)」の雰囲気が少なからずありました。浅草寺や東京タワーなど世界に誇る観光地がコースとなっていた東京から会場が変更になった札幌は「何もない」と。地元がディスられるいたたまれなさと、戸惑っているのは地元だって同じだという思いから「北海道テレビの記者」として質問したのがこの記者会見です。大会運営が果たして成功だったのかどうか、さまざまな面から検証する必要は大いにあると思います。ただそれとは別に、夏の乾いた日差しが豊平川の水面を輝かせ、北大を覆う鮮やかな緑のなかを世界のトップランナーたちが駆け抜ける姿をBBCの中継越しに見たあの深夜の時間は、何とも言えない高揚を感じました。あの時のバッハ会長の笑みは、札幌の風景が映し出される中継に夢中になる私の姿を予見したものだったのかもしれません…。思い込みですね(笑)

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世界的ストライカー C・ロナウドの復帰戦も取材

ー "北海道アピール"を英国人にするとしたら?
「四季を感じられる」ところでしょうか。英国の人たちに「北海道から来た」と話すと、「雪」、「スキー」と必ず言われます。でも北海道の魅力って冬だけじゃなく、メリハリのある四季を感じられるところだと私は思うのです。桜舞う中で鉄鍋を囲むジンギスカン(ラムだから英国人は好きなはず)、ラベンダーにひまわり・・・鮮やかな花が咲き誇る初夏~夏(ガーデニング大好きな英国人に刺さるはず)、お米にとれたての野菜、脂が乗り切った魚が胃袋を満たす収穫の秋(誰であろうと頬張るはず)・・・。いつ訪れても異なる表情を見せ、温かく迎え入れてくれる大地、それが北海道です。たまの晴れ間がとんでもなく嬉しくなる曇天のロンドンも愛おしいですが、移ろう四季を感じられるのは英国にはない、そしてほかのどの国でもどの街でも感じられない一番の魅力ではないでしょうか。

ー 英国の好きなところは?
「寛容」な街・人です。出張から戻りヒースロー空港から会社へと戻る道中、車窓を眺めるとホッとします。肌の色、出自、宗教、ありとあらゆるバックボーンを持った人が同じロンドンの曇天の下、暮らしているからこそこの街の人はどこか寛容な気がします。もちろん、地方部へ行けばどこか違った趣があることも確かです。そしてこの多様さを認めるかどうかの意思表示の一つとして「ブレグジット」という選択をしたのも事実です(国民投票は僅差でしたが)。それでも、この街の景色を織りなす多種多様な人々が作り出す「寛容さ」は変わらずにあってほしいと願っています。

ー 英国での特派員生活を通じて、ご自身の今後に対する変化や期待などがありますか?
北海道で暮らす外国人に目を向けた取材をしたいと強く思いました。言語、制度、様々な問題から日本で外国人が暮らすことは、我々が英国で暮らす以上にハードルが高いのではないかと思います。英国と日本では、移民に対する考え方や文化・歴史的背景などはもちろん異なります。一方で、入管施設で収容中の女性が死亡するなど難民をめぐる問題も起きています。北海道という魅力あふれる土地に根差す人たちが、国籍や人種の違いはあれども、みな暮らしやすく生きていくためには何が必要なのかを考えられる取材をしていきたいと強く感じたのは、このロンドンでの生活・取材経験があるからです。コロナ禍を乗り越えれば再び観光客も含め、多くの外国人が北海道に訪れることでしょう。あらゆるバックボーンを持つ人たちがどうすれば生きやすい世の中になるのか、それを丁寧に追い、伝えていきたいと思っています。

ー ご自身のPRなどありましたら、ぜひ!
新型コロナのみならず、英国を中心にさまざまなニュースを日々取材しています。感染者数の多さや、経済とのバランスをとり続ける政策の違いから日本からはどうも英国の事情が注目されているようです。みなさんのご家族・ご友人もそうですよね?そんな方には「いまイギリスこんな感じだよ」とこちらのような動画をおすすめしてください。

日々、ニュースを発信しておりますのでぜひ!
テレビ朝日のYouTubeチャンネル「ANN newsCH」 

北海道テレビのYouTubeチャンネル「HTB北海道ニュース」

これらのチャンネル登録よろしくお願いいたします!


編集後記:
大変な時期の英国特派員生活となった山上さん。特にコロナ関連では、ご自身も最前線に出向き、まさに体を張った取材が多かったのではないでしょうか。日本と英国の報道の違いについては、編者自身もいろいろと考えさせられました。「報道とは何か?」ー 今後の山上さんの活躍が楽しみです!北海道PRもどうぞよろしくお願いします!
山上さん、お忙しい中でのご協力、ありがとうございました!


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