第12話 塩沢兼人~吸血鬼ハンターDのこと~

文字数 2,098文字

 みなさんこんにちは。こちらは昭和に生きたアニメを切々と語るエッセイになります。
 今回のお題は声優シリーズ第3弾【塩沢兼人】さんです。
 残念なことに、市川治さん(第7回参照)同様、故人になります。



 2000年5月10日。46歳というあまりにも早く、突然の死でした。死因も衝撃すぎて忘れられない。
【自宅の階段から落ちて脳挫傷】
 そのニュースがオタク界隈に流れたとき、私はこう叫んでいた。

【ルードヴィッヒ様――――っ!】

 いろんな声をあてていらしたなかで、真っ先に浮かんだのは【未来警察ウラシマン】(1983年 タツノコプロ)の敵役、ネクライムの幹部【アドルフ・フォン・ルードヴィッヒ】(そんなフルネームだったのかとウィキ先生の力で知る)だった。顔色の悪い吊り目の美形キャラ。彼の言う【悪の美学】がたまりませんでした。
 ちなみにですが、ルードヴィッヒ様は寝るときマッパで、引き絵になったとき窓枠で大切な部分を隠すという技を見せてくれました。ほとんどどうでもいいが、いい思い出です。
 さらに付け加えると、ウラシマンというアニメは。主人公が1983年から2050年にタイムスリップするところから始まるのですが。2021年になった現在、2050年も見えてきました。果たして世界はネオトキオになっているのでしょうか。楽しみですね。

 誰にも真似ができない、一度聞いたら離れない高音ボイス。塩沢さんが演じる悪役は声だけで他人を支配できそうで、それこそルードヴィッヒや、【戦国魔人ゴーショーグン】(1981年 葦プロダクション)の美形敵役【レオナルド・メディチ・ブンドル】(そんなフルネームだったのかとウィキ先生の力で知る、其の2)などは赤い薔薇片手に「美しい」と言うだけで、黄色い声上げて気絶する女子アニオタもたくさんいたのではなかろうか。



 塩沢兼人と言われると、上記の【美】にこだわる2大キャラがパッと浮かぶものだが、私としては、どうしても菊池秀行先生原作の【吸血鬼ハンター"D"】(1985年 葦プロダクション)の主人公【D】が外せない。

 ウィキ先生によると、OVAと紹介されているが、私は劇場で拝見させていただいている。
 1985年当時、TM NETWORKの大ファンであったので、Dに関してはTM NETWORKが主題歌を担当するだけでなく、小室哲哉氏が音楽を担当するということでテンションが爆上がりして、原作に手を出して、寡黙なDのカッコよさに身もだえして【Dの声をあてるのは塩沢兼人さんしかいない】と思ったので、それはもう豪華何点セットなんだ? というアニメでした。いま、私の息上がっています。

 ただ、葦プロ制作で、監督も【芦田豊雄】さんであったため、キャラデが小説の挿絵である【天野喜孝】さんとはかけ離れすぎてしまい、ストーリー進行も疑問に思うところも多々ありました。
 それをカバーしたのは塩沢さんだった。彼のDはイメージにハマりすぎて、いくらでもご飯のおかわりができるほどだった。塩沢さんイケボのDならいつでもA型RH+でよかったら噛みついてください。と首筋差し出す用意はできておりました。

 音楽においても、1985年。TM NETWORKもまだ20代半ば。デビューしたてのフレッシャーズでしたので、小室哲哉がこの仕事をしたことを知らないFANKS(TM NETWORKファンの総称)もいるんじゃないだろうか。
 まだヒット曲がなかった頃のTM NETWORKによる主題歌【YOUR SONG】。当時26歳の小室哲哉によるサウンドトラック【VAMPIRE HUNTER”D”】の完成度はDの世界観にハマりすぎて、別腹でフルーツパフェとチョコレートパフェがつつける勢いでした。



 その後、劇場版2作目が公開された【吸血鬼ハンター"D"】(2001年 マッドハウス)こちらは結構天野喜孝さんの絵に寄せていたと思いますが、時すでに遅し、塩沢兼人さんが故人になってしまい、キャストが変わっています。
 塩沢さんが生きておられたら観に行っていたと思います。完成度も前作より良かったんじゃないかと思われるのですが、塩沢さんが亡くなったばかりで、イメージ消えずでDは大好きなのだが観に行くことができなかった。そういう思い出があります。

 ちなみに、原作のほうは、なかなかD(吸血鬼と人間のハーフ)が探しているとみえる父親(吸血鬼の親分)に会わないどころかかすりもしないので挫折してしまいました。完結したのでしょうか(遠い目)。



 塩沢兼人さん。生きておられたらまだ67歳(2021年現在)。張りつめた糸のような、緊張感あふれる声がまだまだ聞きたかった。
 階段から落ちた状況がわからないのだが、高さや落ち方、どこを打ったかを確認のうえ、本人が「大丈夫」と言っても信じないで救急車を呼ぶべきなのだろう。頭打って大丈夫なわけがない。それだけは肝に銘じましょう。
 助かる命なら、そのイケボがまだ聞きたいから。ご存命の声優のみなさん、そこんところよろしくお願いいたします。

~終わる~
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