ジャーナリストの伊藤詩織さん(35)が、15年4月に元TBS記者の男性から受けた性的暴行被害についての民事裁判で弁護を担当した元弁護団が19日、文書を発表した。
その中で、2月20日に都内の日本外国特派員協会で開いた会見で問題点を指摘し、削除と修正を求めたドキュメンタリー映画「Black Box Diaries」の件で、伊藤さんから謝罪も、映画の修正に関する具体的な相談や提案も、修整された映像の提示も現状ではないことを明らかにした。
「伊藤詩織氏の声明から1か月を迎えてのコメント」と題した文書は、代理人だった角田由紀子、加城千波、西廣陽子の各弁護士の連名で発表された。元代理人弁護士側は会見で、15年4月に元TBS記者の男性から性的暴行を受け、調査に乗り出す様子を6年にわたり記録した「Black Box Diaries」をめぐり、被害現場とされるホテルの防犯カメラ映像を本人やホテルの許諾なしに使用したと指摘。また、海外では公益通報者にあたる捜査官やタクシー運転手、裁判で代理人弁護士を務めてきた西廣弁護士に関する無断録音や無断録画などがさらされている映像が、流され続けていると指摘していた。
<1>伊藤詩織氏が本年2月20日に、FCCJ(日本外国特派員協会)に向けて声明を発してから本日で1か月が経ちました。上記声明で伊藤氏は、西廣に対して「心からお詫び申し上げます」と述べ、また、映画「Black Box Diaries」について「差し替えなどできる限り対応します」と述べています。しかしながら本日現在、伊藤氏から西廣に対して直接間接を問わず謝罪はなく、また、映画の修正に関する具体的な相談や提案もなく、修正された映像の提示もありません。私たちは本コメントにおいてあらためて伊藤氏に対し、私たちが従前から問題としている4点(ホテルの防犯カメラ映像、捜査官Aの音声と映像、タクシー運転手の音声と映像、弁護団の音声と映像)について、所要の削除・修正をするよう求めるとともに、私たちが本年2月20日の会見で提起した問題、即ち、これまでの海外での上映に際して伊藤氏が上記4点についてどのように説明をしてきたのかについて、明らかにするよう求めます。
伊藤さんも2月20日に、元弁護団の会見の後、同じ日本外国特派員協会で会見を開く予定だったが、体調不良を理由にキャンセルした。同協会を通じて発表した文書の中で、元弁護団が指摘した点について謝罪。「証拠集めの中でリスクを冒してまで証言してくださった、タクシードライバーさん、ドアマンさんには心から感謝しています。彼らは私にとってヒーローです。映画には当初、ドアマンの証言を直接聞けた直後に連絡した、西廣弁護士との電話の『ホテルが止めにはいるかもしれない』というアドバイスの音声が入っていました。ご本人への確認が抜け落ちたまま使用し、傷つけてしまったこと、心からお詫び申し上げます」とつづった。また「映像を使うことへの承諾が抜け落ちてしまった方々に、心よりお詫びします。最新バージョンでは、個人が特定できないように全て対処します。今後の海外上映についても、差し替えなどできる限り対応します」とした。
元弁護団側は、さらに次のように指摘した。
<2>なお、伊藤氏が西廣らを相手方とする紛議調停申立を取り下げた旨の報道に、私たちは昨日接しました。私たちは伊藤氏が申立てを取り下げたことについてはこれを多としますが、伊藤氏側は、報道機関に昨日配布した声明においてなおも、西廣らを「弁護士倫理的には看過しえない」などと非難しております。しかし、西廣らが弁護士倫理に違反した事実はなく、よってかかる非難は前提を欠くものであることを申し添えます。
「Black Box Diaries」は、2日(日本時間3日)に米ロサンゼルスのドルビー・シアターで授賞式が行われた、第97回米アカデミー賞で長編ドキュメンタリー部門に日本人の監督の作品として史上初めてノミネートされたが、受賞はならなかった。伊藤さんは、一夜明けた3日(同4日)に日刊スポーツの取材に応じ「日本の劇場で皆さんと一緒に見られるように励んでいきたい。その日を夢見ています」と日本での公開を目指す考えを示した。一方で、プロデューサーのエリック・ニアリ氏は「次は難しいパートへと再挑戦です」と語っている。