斎藤元彦兵庫県知事の疑惑告発文書問題で、疑惑の真偽などを調べるために設置された第三者調査委員会は19日、県に調査報告書を提出し、公表した。第三者委は告発文書を公益通報として扱わず作成者を処分した斎藤氏らの対応について、「公益通報者保護の見地から見て、違法、不当なもの」と断じた。斎藤氏による10件のパワハラ行為も認定。原因や背景として、斎藤氏の職員とのコミュニケーション不足や批判耐性の弱さなどを挙げた。
告発文書を巡っては、県議会調査特別委員会(百条委員会)が今月4日、県の対応は「公益通報者保護法に違反している可能性が高い」と指摘し、文書には「一定の事実が確認された」とする調査報告書を公表。斎藤氏はその後も自身の対応の正当性を主張してきたが、第三者委はそれを真っ向から否定した格好で、改めて責任が問われることになりそうだ。
第三者委の報告書では告発文書について、報道機関などへの配布が「不正の目的」と評価できないとし公益通報に該当すると認定。作成者の元県幹部の男性=昨年7月に死亡、当時(60)=らへの事情聴取や、告発文書を作成し配布したことを懲戒処分の理由の一つとしたことなどについては公益通報者保護法違反だとし、この部分に関する懲戒処分は「効力を有しない」とした。
斎藤氏のパワハラ疑惑について、出張先の施設で自動車進入禁止のため20メートルほど手前で公用車を降りた際に出迎えた職員を厳しく叱責したことなど、10件の行為をパワハラに該当すると認定。 組織のトップには場面や相手に応じた対応が求められるとし、「相手を尊重し冷静な対応がとられなかった問題があり、パワハラを生じさせた原因」と結論付けた。
また、一連の調査を踏まえ、斎藤氏のパワハラや告発文書に対する違法な対応の原因として、「職員とのコミュニケーション不足」や「組織の分断や異論を受け入れない硬直的姿勢が生じたこと」などを列挙。そのうえで、「組織のトップと幹部は、自分とは違う見解もありうると複眼的な思考を行う姿勢を持つべきだ」と指摘した。