今日も今日とて学園都市は平和であったのでした。
私、佐天涙子は初春を探して
やっぱり眼帯をしているせいで左半分が見えないから少しばかり不安だけど一日目ほど神経を使うこともなくてたぶん数日もすれば慣れる。
第一七七支部の扉を開けると、そこには眼鏡をかけたおっきなおっぱいの女の人、多分高校生だと思うけど、これは気まずい。
「あら貴女は確か初春さんに写真見せてもらったことあるわ、そう……確か佐天さん」
なにやってんの初春。まぁいいか。
「初春いますか?」
「あぁ、今日はたまたま居ないのよ。少しあってね」
そう言ってつぶやいてから笑う目の前の女の人。
まぁ私には関係ないことだからさっさと帰るとしましょ~。今日はどこ寄ってこうかなぁ。
なんて思ってたら個法先輩はパソコンをいじってた。帰って大丈夫かな?
「丁度良かった、貴女は今暇?」
「えっと……」
暇ですと言いたいのだけれど、どうなんでしょうか?
笑顔のまま威圧感たっぷりの目の前の“先輩”を見ているともう動けるわけもない。
なんかつい昨日こんなことがあった気がした。今回はカメレオンに睨まれたコオロギってところかな?
まぁともかく……。
「暇です」
なんて言ってしまった。
あぁこのパターンは。
「なるほど……ちょっと手伝ってもらいたいことがあるんだけど?」
ですよね。まぁそんな気がしてましたよ私は……なんたってこのパターン幻想郷で何度かあったから。
何度パチュリーさんの図書館に必要以上に駆り出されたことか、もう腕がパンパンになっちゃって……って、ほんと断れば良かった。
とりあえずそんな大変なことは任されないでしょう。
それにしても、これ断れないよね? はぁ~しょうがないかぁ~。
「はい、手伝います」
「じゃあ待っててね、少し着替えてくるから」
なぜ? まぁともかく一言……不幸だっ!
まぁ結局、私はお人好しというか押しに弱いというか……。
先ほどの女性と一緒に学舎の園へとやって来ていた。理由はただ単に頼まれたから、というだけ。
案内されたソファに座る私と先ほどの先輩こと“個法美偉”さん。
二人してなんでこんなデートみたいなことしてるかっていうと、ある事件を手伝って欲しいらしい。
「フフッ、
そう言って笑う固法先輩、恐い、なんか怖いっす先輩。
「特に、先日はレベル3の強能力者を倒したっていうのはすごいわよね」
笑顔で言う先輩だけど、あぁなんだかもうどうにでもな~れな感じ。
とりあえず初春に言わないでとだけ伝えてから、もう一度固法先輩を見る。
初春から話は聞いていたけど、まさかここまで“仕事熱心”な人だとは思わなかったっての。
「わかりました、手伝いますけど私に期待しないでくださいよ」
「まぁ一般人である貴女を巻き込むのは悪い気がしてるんだけど……白井さんと初春さんは他の事件を担当してもらってるし、だから貴女に手伝ってもらおうと思ったわけ」
「で、それとその常盤台のコスプレとなんの関係があるんですか?」
今現在、私の目の前に座っている固法先輩はもれなく常盤台の制服を着てるけど、そのダイナマイトボディで中学生の服を着れば胸の部分がやけに盛り上がっちゃったりして、つまりなにが言いたいかと言うとやましい雰囲気がにじみ出ている。
あげくにソファ状の席で私の隣りに最初は来ようとするもんだから……。
まぁとりあえず理由を聞くところからはじめよう。
「あぁ、これなんだけど……これ見てくれる?」
私に携帯端末を渡す固法先輩。
それを受け取ってから内容を見ていくと、なるほどと納得できた。
謎の『連続まゆげ落書き事件』が今回の件らしい。
まったくもってバカバカしいけど、これされたら当分学校にいけない。しばらく消えないらしいし。
襲われているのは常盤台の生徒ばかり、だからこそ固法先輩は今現在常盤台のコスプレをしているらしいのだけれども、お前のような中学生がいるか!
「とりあえずこれでしばらく一緒にいてくれる? 貴女を誘ったのは私なんだけど、実際は犯人を捕まえるというより犯人を“見つけて”欲しいの、被害を受けても命に関わるわけでもないから気にするほどでもないわ」
意味はわかる。姿の見えない相手からの攻撃らしいけれど、スタンガンで一発で気絶させて後は『まゆげ』と……。
これはいわゆる囮作戦、止めるべきなのかもしれないのかもしれないけど私って、
「まぁ楽しくやりましょう……」
まぁいわゆるデートって奴ですか、まぁこれが今さっき会ったばかりの話だけに聞いてた人じゃ無ければ良いんだけど。
とりあえずおごりらしいので私は飲み物を頼むことにした。
こうして高校生と話す機会なんて無いから新鮮で、案外楽しい。
気を使ってくれてるのかな? な~んて。
少しして、固法先輩が席を立った。
いやほんと常盤台の制服の個法先輩たまらないですよほんと、さっきまでいやらしいとか言ってごめんなさい。
すっかり価値観を変えられた私はそう思う、思います、思わせてくださいの三段活用。
「少し外すわね」
そう言ってから固法先輩はトイレの方へと向かっていった。
さてさて、3分ほどしたら私も動きますか。
軽く肩を回してから、私はコップの中の飲み物を飲み干した。
立ち上がってから固法先輩が向かったトイレへとそっと向かって、扉がわずかに開くのを確認してから私もあとを追って入る。
固法先輩の背後に立つ少女。
「まったく甘いなぁ、姿を晒すなら獲物をしとめて撤退するまでって……知らなかった?」
私がそう言った途端少女が驚いたように私の方を見る。同い年か少し上か、ツインテールの少女。
さっきのリストに乗ってた子だよね?
レベルは2ぐらいのはずなのに姿を消した?
固法先輩も驚いて振り返っているけれど、女の子を捕まえようとした瞬間女の子が消えた。
「やばっ!」
固法先輩が小さな発信機を投げた後に少女を追って出て行ってしまう。
まぁここは
じゃなきゃ咲夜さんにナイフ刺されそうになりそうで恐いって。
「固法先輩早っ!」
なんて思っておっていこうとしたら、肩を掴まれる。
「お客様?」
ゴゴゴゴゴッ、なんてオノマトペが私の肩を掴む“店員”さんから聞こえる。
おごってもらうはずだったのになぜこんなことにっ……。
固法せんぱ~い!
◇◇◇◇◇◇
少女を追っている固法美偉は、先ほどの少女を追っていた。
重福省帆。記憶を手繰って思い出せば、確か関所中学校の二年生で能力は
見ているということを阻害できる精神操作系の能力だが、逃げる彼女に対して発信機をつけた美偉は携帯端末にて彼女を確認して追っている。
走りながらやはり考えてしまう。レベル2の視覚阻害がなぜ“姿を消す”ことができるのか?
彼女が一つの倉庫の中に入ると、美偉も省帆を追っていく。
「っ!」
倉庫に入ると、重福省帆の姿が晒されていた。
理由は簡単なことで、ただ彼女が一人の男とぶつかったときに思わず解除してしまったのだ。
尻餅をついた彼女の腕を掴む男。
重福省帆はというと小さな声で『ひっ』と悲鳴をあげるのみ。
「
腕章を見せてからそう言う美偉だったが、その瞬間背後から何者かに羽交い絞めにされた。
気づかなかったと思ったが、おかしな気もする。
場馴れしているはずの自分がこんなに簡単に捕まるわけがない。と思っていた。
「俺の能力は気配遮断のレベル2、大したもんだろ?」
レベル2なわけがないと思うが、どうしようもない。羽交い絞めにされたまま、二人は近づけさせられる。
さらに男たちが増えていき、二人のことを見ていやらしく笑う。
このパターンはやばいと思う美偉がせめて隣りの省帆だけでも逃がそうと思ったがこの状況ではとてもじゃないが動けない。
この男たちから逃げて、閉められた倉庫の扉まで走って開けてなんて真似ができるわけがない。
そう思いながらも、扉の方を見ているとその扉が開かれた。
現れるのは人影。
「まったく、なんでこんなところに逃げてんのよ」
黒い髪をなびかせて、白い眼帯を左目につけた少女が現れる。
先ほどまで個法美偉と共に居た少女、“佐天涙子”は余裕たっぷりに“不良”たちの前に現れた。
自分のカバンを軽く放ると、佐天涙子は軽く男たちの数を見る。10人。
「さて、いくよ?」
彼女の右目が鋭く尖ると同時に、走り出す。
あきらかにそこらの学生よりは速く、陸上部などでもトップクラスのスピード。
第一印象としてそれほど警戒しなかった少女の動きに、彼らは動けない。
まず最初に狙われたのは一番近くにいた男だ。
佐天涙子の拳は的確に相手の急所を捉える。
「美鈴さん直伝!」
一歩踏み出すと同時に拳を、男の鳩尾に叩き込み、もう一方の手で顎に掌底を打ち込んだ。
それにて気絶する男。ガタイの良い男一人が倒れて、佐天涙子は立っている。
余裕の笑みを浮かべる彼女を見て、固法美偉は驚いた。ただ単純に先ほどと違いすぎているからだ、のほほんとした雰囲気の佐天涙子、先ほどまで一緒に話をしながらお茶していた彼女とは違いすぎる。
「さて、あと9人」
「舐めんじゃねぇ!」
良くあるセリフと共に襲いかかってくる男たちを、涙子は右目だけで確認する。
そしてまず目の前で腕を振り上げる男の顎を足を上げて蹴った。さらに足で地を蹴ると宙に浮いてから背後の男のこめかみを蹴る。
こめかみを押さえて声をあげる男、着地した涙子は右からせまる男に対して軽く体をひねってから回し蹴り。
倒れた男を確認することもなく、涙子は次の相手を確認しようと男へと目を向けた。
「はぁっ!」
男が叫ぶと同時に、涙子が吹き飛ばされた。
なにが起こったかわからないが吹き飛んだ涙子が大量につまれた荷物へと吹き飛ばされ、砂煙が涙子を隠す。
「佐天さん!」
叫ぶ美偉だが、無事かどうかはわからない。
「はっ、俺の
まただ、レベルと威力が見合っていない。
なにかがおかしいと思う美偉だったが、いまは涙子が心配だ。
砂煙を見る残った7人の男。
だが7人中二人が美偉と省帆を掴んでいるので五人。
「痛~、昨日から痛い目にあうなぁ」
そんな声と共に、体についた砂煙を払いながら現れるのは佐天涙子。
彼女はそう言うと、大きなため息をついた。
「やっぱり片目隠してじゃ難しいかぁ」
そう言うと、涙子は白い眼帯に手を当てて外す。
黒髪黒眼の彼女の左目、眼帯の下はまるで血のような
その瞳を見ただけで男たちはわずかに後ずさる。理由はわからないが、女子中学生一人に自分たちは怯んだのだと理解した。
気づいた男たちは苛立ちを露にする。
「お、俺たちはスキルアウトだ!」
そう言って奮い立たせたつもりなのだろう。
だが、佐天涙子は笑った。
呆気にとられる男たちと、美偉と省帆の二人。
「なにが
その一言を受けた直後、男の一人が先ほどと同じく空力砲を放つが、空気が見えているかのようにその攻撃を避けて走る佐天涙子。
まずその男にたどり着く前に、涙子を襲おうと前に出た男は顔面にパンチ一撃をもらって倒れる。
再び放たれた空力砲を避けて、立っている男の一人を跳ぶと同時にその顔面をジャンプ台にしてもう一度跳ぶと、また一人の男に飛び蹴りを放つ。
「おっ、良い物持ってるじゃん!」
そう言うと、今蹴って倒した男の持っている物を取る。
また空力砲を避ける涙子に、その紅い眼をした少女に男は怯えたような声を出す。
「なんで俺の見えない
「辺りの砂埃がね、舞ってるんだよ?」
そう言って笑う涙子は、本当の笑顔でないのが簡単にわかった。
震えながら空力砲を連射する男。だが演算も適当なのか避けるのになんの問題もない。
先ほど言った空力砲の弱点をここでなんとかする方法はなかった。
そして涙子は男へと呆気なく近づき、足を使って回転すると同時に回し蹴りで男を地面に叩きつけ、固法美偉と重福省帆を捕まえている男たちを睨む。
「佐天さん!」
美偉の叫び声、涙子の背後からナイフを振り上げて襲いかかる男。
美偉と省帆を捕まえている男を除けば最後の一人。
だがそれに、佐天涙子が気づいていないわけがない。
軽くカラダを傾けると縦に振られたナイフを避けて、男の喉に軽く手刀を打ち込んだ。
ふらつく男の顔に、肘鉄を打ち込んで倒すと、男が持っていたナイフを取る。
さらに先ほど倒れた男から奪ったナイフを持てば、これで二本。
「お、お前! それ以上動いたらコイツらがどうなるか―――!」
格闘だけで能力者を含んだ男五人、いや八人を倒したのだ。ナイフを持っている今は死の恐怖に値するだろう。
ナイフを持って美偉の首に添える男。それを見て涙子は笑みを浮かべた。
余裕のある表情。紅い眼はしっかりと男を見据えていた。
重福省帆を捕まえていた男は叫びながら、省帆を突き飛ばして逃げていく。
「一人だけだね」
「うるせぇ! 近づくんじゃねぇぞ!」
そう言う男を見て、涙子は軽くナイフを持つ手を振る。
何度か振るそぶりを見せた後に、涙子は軽く言う。
「ナイフって“切る”だけじゃないんだよ?」
そう言うと次の瞬間、男の手にはナイフが刺さっていた。
最初は気づかないが見てから激痛に襲われて美偉を掴むことをやめてもだえる。
涙子は追撃としてもう一方の手にも“ナイフを投擲”して刺す。
美偉は放された途端、男の腕を掴んで背負い投げ。気絶した男は叫ぶことはなくなった。
尻餅をついている重福省帆、男たちが全員戦闘不能になっているのを確認する固法美偉、そして眼帯をつけ直す佐天涙子の三人だけが、その場でまともに動けるメンバーだった。
◇◇◇◇◇◇
アンチスキルを待つ間、倉庫の不良たちを縛って固法先輩は重福さんに軽く聴取を行っていた。
とありあえず私はナイフを刺した手の応急処置をして話を聞く。
聴き終えてみると、なんてことない恋のもつれ。
「眉毛って、それぐらいで」
つぶやいた固法先輩、すると重福さんはそっと前髪を上げた。
「ぶっ……」
後ろと向いて口を押さえて、挙句にぴくぴくと笑いを我慢する固法先輩。
私は苦笑いしか出てこなくて……確かに特徴的な眉毛だった。まるでたくあんのような太い眉毛は顔を隠す理由に値する。
眉毛以外はかなり高レベルな容姿、それだけで嫌う男も男だねぇ。
涙目になる重福さんにフォローを入れるため、私は口を開いた。
「か、可愛いと思うよ、個性的で!」
グッ、と親指を立てて言うと、重福さんはうつむいてから両手でスカートをギュッと掴んで、それから黙ってしまった。
え? なんか私おかしいことやっちゃった?
「罪な女ね佐天さん」
「ファッ!?」
なんだかわからないけど私はなにかやらかしたらしい。
まさか、私ナイフ投擲の罪で捕まる!? アンチスキルってそんなに厳しい人たちなの!?
てか連日関わっちゃってる私、大丈夫だよね?
それから数分してアンチスキルがやってくると、私が逮捕されることはなかった良かった。
なんかアンチスキルの人が『またあんたか』みたいな顔をしてる。
不良のみなさんが乗せられるのに興味はないので、私はとりあえず重福さんを見送ることにした。
そんな悪いこともしてないから大丈夫だと思うけど……。
「佐天さん、手紙書きますね」
「あっ、うん。待ってるね」
戸惑ったけど笑ってそう言うと重福さんは嬉しそうに笑ってくれた。
護送車に乗せられて、扉が閉まる。
「昨日から犯人と仲良いじゃん?」
「まぁ、そうですね」
「頑張れ少女! じゃん!」
じゃんじゃんうるせぇ! とは言えないので黙っていることにします。
アンチスキルのみなさんが去ったのを確認してから、私は背を伸ばして固法先輩の方を確認する。
固法先輩は常盤台の制服のまま、私のカバンを持ってきてくれた。
「ありがとうございます」
そう言ってカバンを受け取ると、固法先輩は笑う。
「こちらこそ、今日は色々助けられたわありがとう」
「いえいえ、“
笑いながらそう言うと、固法先輩は少し驚いた表情をした。
「なんだか今別人みたいだったわ、繚乱のメイドさんみたいな」
なんですかそれ、って笑いながら私と固法先輩は歩き出す。
とりあえず今は一七七支部に移動って感じかな?
初春たちには私のことは話さないでほしいなーとか思ったり。
まぁ一日、
「でも白井さんや初春さんがいても、貴女を誘うこともあるかもね」
そう言って笑う固法先輩。
なになに、私変なフラグ立てた? 巻き込まれフラグってやつ?
あぁとんでもないことになる予感! 確かに風紀委員とか憧れてたけど、こんなことにっ……。
楽しそうに歩く固法先輩のとなりを歩く私。
うん、願ったり叶ったり“だったけど”前まではそうだったけど、現状……。
―――不幸だ!
あとがき
今回は原作で言えばお姉さま(美琴)がヌレヌレグショグショになる話でござるが、重福さんと個法さんの話に佐天さん側をしてみたでござる(キリッ
まぁこんなかんじでアニメオリジナルのストーリーを少し入れていければなと思っている所存に候。
では、アンケートありがとうでござった!
(桜狐殿よ、貴殿の『メガネっ娘佐天さん』という素晴らしい案はいつかやってみせるでござるよ!)
次回をお楽しみにしてくだされ! ちなみにスカーレッドアイズの部分はツッコンじゃだめでござるよ!
PS
沢山のご協力本当にありがとうございましたでござる!
これからもよろしくおねがいつかまつる!