デジタル導入の「教育先進国」で成績低下や心身の不調が顕在化…フィンランド、紙の教科書復活「歓迎」
市は23年末、中学生と保護者、教職員計約2000人へのアンケートを実施した。すると、保護者の7割が紙の教科書を望み、教員の8割が外国語などの授業で紙を使いたいと答えた。今秋から中学の物理や化学でも紙を復活させる予定だ。
ハルユンリンネ中のハンナ・ピュルバナイネン校長(52)は「紙の教科書は教室に落ち着きをもたらす」と話す。
教育現場でのデジタル利用に慎重となる国は近年、目立っている。22年PISAで3分野とも1位のシンガポールは、小学生にはデジタル端末を配らないことを23年に決めた。心身が未発達の子どもに悪影響が及ぶことを懸念したためだ。
韓国では今月から、政府がAI(人工知能)を搭載したデジタル教科書の配布を始めたが、韓国メディアによれば導入するのは32%(2月中旬時点)にとどまる。教育省が今年初めに実施した調査では保護者の7割が「デジタル依存に陥る」ことを懸念し、5割が「教師と生徒のコミュニケーションを促進するものではない」と否定的だった。導入に反対する教員労組は声明文で「未来の教育に必要なのは、AI技術より問題解決能力だ」と訴えた。
韓国の教育に詳しいKDDI総合研究所コアリサーチャーのキム・ダジョン氏は「懸念や課題が残る中で、政策決定を優先して導入を進めたことに無理があった」と指摘する。
日本では2月、中央教育審議会の作業部会が、昨秋からの議論の「中間まとめ」を策定し、デジタルを紙と同じ「正式な教科書」とすることなどを提起した。
デジタル教科書の使用拡大を前提とした議論の中で、海外の動向を十分検討した様子はうかがえない。(フィンランド・リーヒマキ、教育部 伊藤甲治郎)