「初めましてデメテル様…今日は謁見の許可をありがとうございます…」
「あら良いのよアリスちゃん、ヘスティアの眷属でヘラの孫なら私にとっても娘のようなものだわ、あの
アルフィアと同格の才の持ち主かつ病気もない、しかも未だ10歳とくれば神時代最強も見込まれるほどの逸材だ。それはもう盛り上がった。
本人からは『良い候補が無きゃ『同じ【静寂】でもいい』という薦めもあったのだが、結局【
他人の魔法を使えることは大っぴらにはバレていない。気付いた者もいたが。
「ずばり本題ですが最近何かやばいことに巻き込まれていませんか?具体的にはディオニュソスに脅されていたりとか…」
「え!?特にそんなことはないわよ?まあ怪しいと思って近々探るつもりだったけど…」
「危険なので絶対に止めてください。結論から言うと奴はクロです、しかもレベル7クラスの手駒が居ます、どうしても探りたいならせめてフレイヤ様に協力してもらってください」
「私から提示出来る証拠も情報源も明かせないのは申し訳ないのですが…そのへんの情報は後々ロキ様達に垂れ込むつもりなんで…デメテル様は違和感ない程度に少しずつ奴とは距離取ってください」
「…分かったわ…どうやって『そのこと』を知ったのかは興味はあるけど…まず危険に晒されるのは私の子達だものね…」
これでひとまずよし、だ。
それから数日後───
「あっはっはぁ新ホームゲットだねえみんなぁ!いやぁ喧嘩売ってきたバカども返り討ちしただけで2人もランクアップして、こんな良物件手に入るなんて、あんな美味しいカモは2度と居ないカモねえ!なんちって!」
ゴブニュ・ファミリアによる改築が終わり、ヘスティア・ファミリアの面々は新ホームに集まっていた。私達は揃ってレベル3にランクアップした。
「アリス様が先んじて奴らの行動制してたから実質こちらの被害0ですし…哀れすぎます…」
「
「うう…こんな人に恩を感じて良かったのでしょうか…」
「貴女が勇気を持てればあの勝手に眷属に絶望していた根暗神にもいつでも言葉届いていたはずなのよ、私に感謝なんて要らないわよ、そこまで勇気持てたのはお兄ちゃんが切っ掛けでしょ?感謝するならそっちだけにしなさい、
ザニスのバカはどのみちやり過ぎていたみたいだから私が何もしなくてもそのうち報いは受けていたわ。自分が頭良いと勘違いしている
「ささ、キモい像は撤去されただろうし、入ろみんな」
既に部屋割りも決まっていたので各々が好きな時間を過ごした。そうした後に全員が応接間に集められた。
「散々口に出していたと思うけどまずは私とお兄ちゃんの『お母様』を紹介するわね」
「【終わる幻想、還る魂──引き裂けぬ
アリスの身体から灰髪の美女が現れる。
「一応、初めましてだなお前たち…私がベルとアリスの母親の【静寂】のアルフィアだ。」
正確にはベルの母親ではないが、そのへんはアリスの自己紹介の時に話しているのでわざわざ誰も突っ込まない。
「名前だけはゴライアス戦後に言ったわね、オラリオ生まれのリリはもともと知っていそうね、7年前の【大抗争】の下手人の1人のその【静寂】よ」
「今の魔法を見た通り私の身体から出てきたけど、私の妄想で生まれた別人格とかじゃないわ、間違いなく本人よ。そこは複数の神様が保証してくれたわ。オリジナルは分身魔法だけどね」
「常に私の意識が起きているわけではないが、ずっとこの
「お母様が現れていると私の力も弱体化するから一緒に冒険することはほぼないと思うけど、ホーム内では普通に顕現させておくから。ちなみに今の状態でも1人1人がそこいらのレベル2より全然強いからね、私達」
それから数日私とベルはお母様に甘えまくった。ベルも年齢的には「母親に甘えるのは恥ずかしい」と思うような歳だったが、私が所構わず甘えまくっているのを見て羨ましがり、すぐ折れた。
お母様が今まで私の身体を使ってあまり出てこなかったのは「ロリボディだと母の威厳が」とかそんなことを気にしていたかららしい。今は生前の姿そのままなのでバッチリ大人の女性だ。
部屋で3人だけの時はベルも甘える。私もベルに甘える。家族がゼウスしか居なかったベルには、それはもう効いた。お母様も常世の春といった感じだった。
…それと新生ヘスティア・ファミリアが始動するにあたって1つ悩んでいたことがある。
これからの
借金自体は隠し通そうと思えば出来る。しかしそれはあまりにも不義理だし、お母様がヘラ様にコンタクトを取れば「どうとでも返せる」だそうだ。
生前の所持金が40億ヴァリス以上もあり、丸ごと預けているらしいので、そこから捻出すればどうとでもなるだろう。性格上恐らく「ほぼ手つかずで丸々残っているだろう」とのこと。
だからそこから返せばどうとでもなる。問題はこれからの怒涛の原作イベントだ。
真っ当に大きなファミリアを作るつもりなら、新人を採るのは当然だ。本来はそういったものの積み重ねでファミリアというものはコツコツ育てていくものだろうし。
引き抜きが多いらしい【フレイヤ】は邪道だろう。まあ今の幹部陣はなんだかんだレベル1からの古参だけだろうが。
だが、これからの少なくとも1年間、原作イベント目白押しと分かっているのに、ヘタにレベル1の新人なんて採用して、死人が出たら寝覚めが悪い。リューさんレベルとまではいかなくともせめてレベル2のニィナクラスの即戦力でなきゃ、
危なすぎて入団させられない。だから
ダフネとカサンドラは少し惜しいが彼女らがミアハ・ファミリアに入ること自体にも意味があるだろう。どうせ味方のようなものだし。訪ねてきたカサンドラに枕は返しておいた。
フィンとアイズ、ロキは新生ヘスティア・ファミリアのホーム【竈火の館】に呼ばれていた。
フェルズ製の新しいローブはそれなりに隠蔽効果も有るが、それはあくまでサブ的なもの。最悪なタイミングでバレて剣を向けられたり、ヴァレッタあたりがゲロって不信感を募らされたりするような展開はゴメンである。
フィルヴィスは正体を隠したまま紛れ切っているが、アレは
モンスターに対する憎しみはかなりのものであっても、
「本日はお来しいただき有難うございますロキ・ファミリアの皆様方…」
案内役はフィンのお気に入りの
「ええホームやなあ、ウチらが駆け出しの頃は住まいにも苦労してたっちゅーのに…」
「結成して3ヶ月程度でコレとはとんでもないサクセスストーリーだろうね、それにまだ5人だけというのに全員がそれぞれ見どころがある…ウチに欲しいくらいの人材の宝庫だよ。
その筆頭が
あのアリスがもうレベル3ならレフィーヤ以上の即戦力だろう。向こうの申し出は正直有難い、レベル5以上の働きが期待出来るよ。」
「フィンやロキは理解るけど…なんで私もなんだろ?」
「多分それは今考えても判らないことだと思うよ。親指が疼く…何かとんでもないことを明かされそうだ」
「こちらです皆様」
そうして応接間に案内される3人。
「さて、7年ぶりだな…ダンジョンの子…いや、【剣姫】『アイズ・ヴァレンシュタイン』だったか。ロキと勇者小僧は…15年ぶりくらいか?7年前は会わなかったしな」
「「「は?」」」
思わず同席していたヘスティアに視線を向ける3人。
「間違いなく本人だよ…そのへんは元々面識のあるフレイヤが保証してくれたし」
「7年前から5年前にかけて
結局病気の性質はそのままだったからその過程で
最近になって台頭してきた
「魔石って…まさか!あのヒトと同じ…!?」
「はい、私もレヴィスやオリヴァスと同族…ということになりますね、現状は精霊の支配からは逃れ安定していますが…もし多大なダメージを被ったり、例の緑の宝玉に寄生されたりすればその限りではないと思います。」
「もし”そう”なってロキ・ファミリアの手にも負えない敵となってしまった場合は…オッタルさんを頼ってください。”その時”は彼に討伐してもらえるように依頼しています。」
「一応人間に戻るための研究はある研究者にしてもらっていますが…それもどれだけ時間がかかるかは未知数なので…」
「ほーん、倫理観のない神なら『面白い』の一言で済ませそうな案件やけど…ドチビよくこんな【爆弾】受け入れる気になったな?」
「ぐむ…誰になんと言われようとアリス君とアルフィア君達はもう僕の
まあ「爆弾」というか
これから私達は「敵になる可能性だけで切り捨てるには惜しい」と思わせるくらいの活躍をしなければならない。加えて恩を売りまくる。
「ほぉんまあアルフィアやドチビが『一先ず大丈夫』と判断し、安定しとんのならウチも見逃すわ、フレイヤも
「ほんで改めまして…アイズたんの血も引いとるちゅうことはウチにとっても娘やろ?改宗せえへん?」
「うん…お母さんくらい私に近い感覚がしていたのは…『私の妹』だったからなんだね…」
「「ハァ!?」」
それから──────
「アリス君は僕の子だぞぉ!」とか「お前らの子でも、妹でもない!私の子でベルの妹だぁ!後やらん!」とかなんとか言いながらドタバタした。
アイズには「お姉ちゃんと呼ぶように」と言い含められてしまった。「お兄ちゃんとアイズが結婚したら本当の妹になりますよ」って言ったら火に油を注いでしまった。
その後は───アイズを抜きにして
この時点では
こうして情報を渡しまくっているのは道半ばで私達が倒れてしまった場合を考慮してだ。
廃教会の時はセキュリティ的に危なっかしくて出来なかったことだ。実際に私達が先に倒れて他人に読まれる展開は勿論全力で避けるが…
ヴァレッタ・グレーデが生きていることに関しては、フィンさんは
格下だからそれ1つでランクアップまではいかないだろうが、上位の
仕留める時のプランもしっかり提示しておいた。今日は暫く冷たい部分全然見せなかったのに
ロキ様は「ディオニュソスめ舐め腐りおって」と吐き捨てていたが取り敢えず今は泳がせておく方向で纏まった。
元々【デメテル様の葡萄】は定期的に普通の顧客として購入していたらしいし「急に供給を断ったらどう出るか判らないので取引は続けて欲しい」とは伝えておいてある。どうせ例の神酒で暗躍は続けているのだろう。
まあフィルヴィス以外の他の眷属捕まえてステイタス・シーフで背中を確認したら動かぬ証拠になるかもしれないが…あの措置がいつごろ行われたのか正確な時期が判らないので、どのみち今は泳がせるしかない。
「いやぁ今日は有意義な話出来たわぁアルフィアも変われば変わるもんやな『
「…うん。7年前のような冷たさが全然無かった。ベルやアリスのお陰だと思う…今のあの人となら、仲良くも出来ると思う」
「一度亡くなった人間が他人の身体に乗り移って復活するなんてこと有り得るのかい?幸い両者の仲が良好だから問題は少なそうだったけど…」
「さぁなぁ器が特殊だったか、アルフィアの魂かアリスたんの魂が特殊だったか…或いは全部かもなぁ、まあ
「…でも自身のことを『
「『知りすぎてる』てか?」
「うん…」
「本当は末端なんかじゃなく幹部候補とかだったとか?」
アイズが聞く。少なくても現時点での能力は余裕で幹部クラス以上だろう。オリヴァスですらレベル3の頃から幹部だったのだから。
「一応あの子の言葉に嘘は無かったで」
「いや多分…勘だけど頭の痛い【フレイヤ問題】とも情報源は同じな気がする…」
「『
「さぁなーあのベルが本当にフレイヤにそこまで見初められているなら充分有り得る話やなぁ『こちらの戦力がある程度揃っていたのならアイズとティオナだけでも期限付きで貸してくれればいいんで』とまで、妙に具体的だったし…」
「…私は構わないよ?」
「団長の僕と副団長のリヴェリアは無し、ガレスも古参で下の反発も多そうだから無し、ベートは一番向いていない、ティオネは僕から離れたがらない、とまで考えると、まあ、消去法だろうね」
「ウチとしてもちゃんと後で返してくれるんならあの色ボケに吠え面かかすためにも乗って構わないんやがな」
「団長の立場が無ければ僕自身が行ってもいいんだけどね…」
「おん?フィンもあの子のこと気に入っとたか?」
「それは最初からだよ…有望かつ善良な後輩なら気に入らないほうがおかしいそれに報酬の『真ナイツ・オブ・フィアナ』の詳細も気になるしね…一般的には【フィアナ】は『
当然のように【フィアナ騎士団】と口にした…どう考えても
「【
「『ちょっと有り得そう』と思っちゃったじゃないか、止めてくれ気持ち悪い」