「結局アリス君達の言う通りになっちゃったか…」
見覚えのあるアポロンのあの色欲にまみれた眼。あの兄妹のどちらかが所属している時点でこの展開はどのみち避けられなかっただろう。
「歴戦の冒険者であるアルフィア君が『99%勝てる』って言っているから大丈夫だろうけど…」
冒険者としてはほぼ最高位である
何より子供たちを溺愛しているが甘やかしたりはしない。誤った判断を下して危険にならないよう、贔屓して過大評価をするようなことはないだろう。
「
ダンジョンに頻繁に潜ってもっぱら魔法のテストをしていたがもうほぼ完全に使いこなせているようだ。使える数を考えると的確に手札を切るには高い判断力を求められると思うのだが、それこそ彼女にはあの【静寂】が常についているのだ。
生まれは確かに変わっているかもしれないが…間違いなく良い子だ。ベルもあっという間に絆されたし…とっとと
放置しておくとガチでオラリオが滅びかねないというので心配でもあまり反対出来ないが。今中心になって対処しているというロキの子達に全部任せておけばいいのにと思ってしまう。フレイヤもこれから協力していく方針らしい。
アリス達からの進言で決めたらしいが。ロキからすればびっくりだろう。これまでの彼女からすれば取り敢えずは未だ傍観で済ませそうな段階だからだ。あまり彼女と近くなりすぎるのは良くないと思うのだが…「ベルが狙われている」と言われてしまったし。
「実際に動くのはかなり後のことだろう」と言われたがそれもアリス達が居なかった場合のパターンらしいので楽観視は出来ないとのこと。だから「今のうちにロキ・ファミリアに恩を売りまくって最悪の場合助けてもらう」とのこと。
「都市中に魅了をかけられた場合、『それ』を破れるのは
それに「ベルと同じように魅了が効かない
「早熟スキル付きの病気のないアルフィア」を想定した場合2年あればそのレベルまで到達するのに充分らしいが、「事は1年以内に起こる」とのこと。その「知識」の源泉は気になるが…
決して肯定することは出来ない行いだったかもしれないが、確かな覚悟と信念を持って、より良い未来のために、自身らの命を
ただ悲しいだけだ。ゼウスやヘラ達が黒竜まで倒せていればアルフィアや今の子達も余計な
アリスの上位の
というか既に格上のはずの冒険者を下しているのにランクアップ出来ていない時点で彼女の異常さが垣間見えている。
彼女が魔石を埋め込まれた
ただ「かなり長丁場になりそうだから近しい者達には順に明かしていく」とのこと。「
アリスフィア・クラネルLv.2
力 D 455
耐久F 355
器用C 625
敏捷D 560
魔力SSS1122
《発展アビリティ》
対異常:I
スキル
【
神威・魅了の無効化。洗脳・精神干渉への超耐性。
【
魂に合わせて肉体の最適化のために超早熟する。
【
アルフィアとステータスの共有。技能習得に超高補正。獲得
【
アルフィアの経験・記憶・技能を自身に最適化して使用出来る。
【
【
・
・
・
・
【強化種】
魔石捕食でアビリティ向上。精神汚染進行。
【
治癒力の向上。魔力を消費すると再生力を更に向上。
【魔力】に常時補正(大)、成長にも補正(極大)。
魔法
【サタナス・ヴェーリオン】
【
スペルキー【
「音属性」速攻魔法。
【
対魔法防御魔法。
【
【マギアレコード】
魔力が特に増加量が大きいみたいだが。使用する魔法からして、絶対注目されるのにそれに加えベル以上の成長速度、表向きの「アルフィアの娘」という出自、更にはあの容姿だ。
遠からず単独で【ロキ・フレイヤ】に存在感だけなら並ぶような冒険者になるだろう。個人の実力なら【
普通なら「零細なら持て余すだろう」と言われそうなところだが、というかロキあたりは実際に言ってきそうだが、彼女にはあのアルフィアがついているのだ。
そのままだったら不穏すぎるであろう、スキルの名残が残っているが、アルフィアのお陰か、彼女自身の魂のお陰か今はかなり安定しているようだ。
アルフィアの経験や戦闘スキルも引き出せるから本当に隙がない。しかも何故か「多くの魔法の詠唱文が既知」だと。彼女の
未だそのあたりは当分明かしてくれるつもりはなさそうだが。実際にアルフィアの膨大な戦闘技能の中から最適化した剣術をベルに伝えるなど他の者も恩恵を受け始めている。
ダンジョンに同行すれば「
自身も善良な部類という自意識くらいはあるが、地上の人間にはすぐに判るものでもないだろう。最初から信頼MAXだったのが謎である。或いはアルフィアがヘラあたりから何か聞いていたのか…
本当のところは「悪い逸話がないから」「善良なのを読者として知っていたから」「十二神の中じゃ影薄かったけど貴女自身のお陰で『紐神』として知名度上がりました」とか言われた日にはどんな顔するだろうか。
アルフィアは実はちょっと楽しみにしていた。
ちなみにリリルカは既に
アリスが付き添いしただけで
当然
純粋な知識量と技術は現代の酒造の方が上なので純粋な味では劣ってしまうのは当然なのだが。しかも彼は眷属を酒造りに参加させていない。温度管理等も当然1人では行き渡らなくなるだろう。
あとザニスが無礼だったので軽くボコった。犯罪を犯している上に
アイズとティオナとの特訓は「神の宴」の後に話をつけていたお陰ですんなりいった。というか何回かロキの幹部陣やロキ自身も参加・見学に来たくらいだ。
神の前で問答してもアリスの正体がバレることはまずない。
「既に高い戦闘技術はアルフィアから教えてもらったものか?」と聞かれれば「そうだ」と言えるし、
「アルフィアの実の娘か?」と問われれば遺伝子的には間違いなく血を引いている上にアルフィア自身が娘として扱っているので自信を持って肯定出来る。
「アルフィア自身がお腹を痛めて産んだ子か?」と聞かれたらノーになるが、
というかその概念が広まっていたとしても失礼すぎる質問だ。
アイズとティオナはベルとアリスを鍛えていた。というかアリスに関しては純粋な技量だけなら既に2人を上回っていた。タイマン、2対2や2対1など形式を変えて様々な形式で鍛えられた。アリスは魔法のみでだったり剣でのみだったり、戦法を変えて対応していた。
そしてそんな奮起する有望な後輩達を見せられれば彼らも冒険者だ。「自分も」と参加したくなるだろう。フィンが最初に加わったのを皮切りにティオネ、ベートと続き、今はガレスがアリスと戦いベルは休憩しながらそれを眺めていた。
「うわあああああああああああああんガレスさんは反則ですって!今の私の
「いや結構痛いんじゃぞ?お主の魔法…というか本気で倒す気なのか…お主は」
「もう怒った!【永伐せよ、不滅の雷将】!」
「おい待てそれは」
「【ヴァリアン・ヒルド】!」
並行詠唱しながら小柄な体躯を利用して潜り込み、至近距離でその雷魔法をぶち当てる。ドゴォンと轟音が鳴り市壁の一部が黒焦げにる。無駄なくガレスに収束して当てることで、周囲が崩れることはなかった。
「あ、ヤバッやりすぎた…?」
「…っなんてやられるわけないじゃろぉがぁ!」
プスプス焦げた音を立てながらガレスが再起動する。そうして結局捕まり意識を落とされるアリス。
「うわ、『他人の魔法使える』ってホントだったんだ…起動詠唱無かったからレフィーヤより発動早いし…」
「ねえ、ガレス今…」
「ああ…ちと意識とんでたな」
「「うそっ!?」」
「儂以外のレベル6が受けたら…まあ倒されておったろうな…」
そもそもガレスのようなタンクタイプ以外だったらば速攻で落とそうとしているため喰らわない。模擬戦でもなければそもそもガレスも喰らっていない。
「恐ろしい娘っ子じゃ…敏捷も並行詠唱の腕も高いから、素早い者でも集団戦なら躱すのも難しいじゃろうな…」
「私も見に来ておいて良かったな…模擬戦闘ばかりじゃ大味な魔法ばかりの私じゃ何も出来ないと思っていたが…」
「レベル3もすぐだろうね…本当に楽しみだよ…対
「フィンさんっ皆さんっ!もう1回お願いしますっ!充分休めましたっ!」
ベルが奮起する。ベルにはまだ誰にも言っていない一つの目標が出来ていた。「
かつて居た
自分と同じ冒険者になるならこれからずっと近くに居ることになる。アリスが物凄く強いのは知っている。あの義母が「いずれ間違いなく最強になる」と断言し、今回の敵の団長も事も無げに下していた。
「彼女を守る」というのなら彼女より弱くては話にならないだろう。
自分はこんなのばかりでいつもちょっと締まらない。「助けに行ったお姫様に助けられたアルゴノゥトみたいだ」と。「
まだまだ
何より自分も間近でアポロンの色欲の篭った眼を見たのだ。アレは自分にも向いていたこともあって生理的に無理すぎた。あの毒牙に大切な2人をかけさせるわけにはいかない。
「ハハハッ!やるじゃねェか兎野郎ォ!」
何度吹き飛ばされて地に伏しても立ち上がり果敢に攻める。けれどいつ如何なる時も雑にならないよう意識し、頭を回すことを止めない。「技」の重要性はアリス達からみっちり伝えられた。
ベートは戦闘スタイルがベルに元々近いこともあって、物凄く
泥臭く相手に喰らいつき、地に伏せても相手を
自分と違ってその「大切な女」は恋人じゃなくて妹だし「女のほうが強い」なんて締まらない状況もあって何もかもが同じというわけではないが…
まああんなに強い女ならそもそも死ぬような状況がほぼ考えられない。間違いなくアイズよりも強くなるだろうし。
意識が戻ったアリスはそんなベルを眺めていた。
やっぱ戦闘スタイル似ていますよね…能力的にはヘディンより彼のほうが師匠に相応しくないですか?
(あの陰険エルフにも駄犬にもベルはやらん!絶対に絶対にだ!)
うわぁ…これは絶対面倒臭い姑になるよなぁ…