「それは、確かか?」
「はい、18階層に出現した
奴との関係は正確には
「ふむ…登録されたばかりのレベル2の冒険者…『アリスフィア・クラネル』…似顔絵はまだないのが惜しいな…容姿はどうなのだ?」
「はい、【リトルルーキー】の面影もあるまだ幼いが非常に愛らしい少女だと」
「それは素晴らしいなやはり2人ともこのアポロンが纏めて頂こうか…」
アポロンはそれなりの中堅派閥を作っていたことによって増長していた。【ロキ・フレイヤ】のような大物をどうこう出来たことはないのに
相手の数の少なさ、レベル2が2人だけというカタログスペックだけを見てどうとでもなると思ってしまったのだ。
滅多にない
下界に来てまだそこまで長くなかったから甘く見てしまっていたのだろう。「神時代最高の才能」、【才禍】の才禍たる
これは知られてはいないが生まれが歪とはいえ
アリスに対しての悪評は今のところない。彼女自身は「【静寂】の娘」ということを全く隠していないが、親の罪を娘に問うことをしない程度にはオラリオの民達は理性的だった。
何より既にレベル2で
なので、娯楽好きの神々にしては妙に理性的に慎重に遠目で見守る程度に留まっている。何よりヘラとの関係性が判らない。
それなりにオラリオが長い神々にとっては【静寂】が彼女のお気に入りだったのは周知の事実だ。実際にはもう片割れのお気に入りの息子のことにも何もリアクションを起こしていないのであまり心配する必要もなかったのだが。
まあ神威耐性持ちの彼女は追い回されれば普通に反撃くらいする。送還はしない程度には理性的だが。
神々にとって彼女は一種の
──────
「初めましてウラノス様…今日は謁見の許可をありがとうございます…」
「なに…まさか手紙で『
「そちらも重要な案件ではありますが、まず私の方の件を優先させてください。地上に貴方がた
「む…奴が降臨したという話は聞かないな自身の役割に真摯な奴だったから『私が知らぬ間に』ということもあるまい。」
「…それではこの地上で尤も魂に詳しい者は…?やはりフレイヤ様ですか?」
「魂を視る眼」に加えて、元々そっち方面の逸話も結構あるしな。
「そうだな…やはり奴であろう…
はあ仕方ないか…彼女に借りを作るのは出来れば避けたかったのだが…
「あとフェルズさん紹介してくれますか…?対価は『
「「なに!?」」
物陰からウラノス様とは別に驚愕の声が聞こえてきた。
「…声聞こえちゃいましたよ、フェルズさん。大方最初は
「ウラノス様…貴方の元眷属のやらかしによって、呪いをかけられたその子孫らが造り出した人造の迷宮は
あ、黒幕はディオニュソスなのであんまりロキ様の探りがしつこいようならゲロっても構わないですよ?これから『エニュオ』とか名乗るアホの話題が挙がることがあると思いますがそいつの正体がかの神です
奴は自家製の神酒で自分自身すらも『善神である』と酔わせて偽っています。ロキ様がいくら表から探っても何も出てこないでしょうね、奴にはレベル7クラスの手駒がいるので強引な探りは危険なので今は泳がせておいてください。
あと過去の天界でのことから奴は貴方を敵視しています」
「かのダイダロスの子孫たちが造り上げた人造迷宮クノッソス…
レベル5の
「奴らのホームを強制捜査するというのは…」
「そちらは恐らくもうもぬけの殻でしょう。ヘルメスに依頼しても無駄ですよ。神イケロスを確保しても、眷属たちはイケロスを強制送還させた挙げ句、タナトスあたりに鞍替えするだけで大した効果は見込めないでしょうね…」
「あの迷宮は壁の大部分をアダマンタイト、要所要所をオリハルコン製の扉で閉じていますので、開くにはこの【ダイダロスオーブ】が必要になります。本格的に攻略するなら数が要ると思うので
今のうちにフェルズさんの手で複製して数を用意出来れば優位に立ち回れるでしょうね…アスフィさんでも複製出来る物なので貴方なら余裕のはずです、忙しいならあちらに依頼するのもアリだと思いますが…」
「理解った今は大丈夫だ…承ろう…だが『ソレ』を普通に所持しているあたり…キミは一体何者なんだ…?」
「私の正体は
いきなり服を捲り胸元の魔石を見せる。
「!?ウラノス!引け!」
「落ち着けフェルズ…彼女がその気ならとっくにやっているはずだ」
「そうですね…ダンジョンの奥底に居る【
私は【静寂】のアルフィアの細胞を使って
私以外の残る3人の
でもウラノス様からロキ様に情報提供したら余計に疑われますよね…」
「いや、いい一応聞いておく…どんな連中なのだ?」
「はい、1人目は【
元々
正体は多分古代人の類…悪人というよりは冷徹な仕事人って感じです。ハシャーナ・ドルリアさんを殺したのも彼女ですね。ああ依頼したフェルズさんを責めているわけじゃありませんよ普通あんな相手予想できませんし…
3人目は…私と同じようにこのオラリオに紛れて生活しています。フィルヴィス・シャリア…彼女が3人目にして最強の怪人…ディオニュソスの最強の手駒です、普段から分身魔法で力を割いて正体を隠していますが、全力ならレベル7クラス…
怪物じみた身体能力に加え彼女本来の魔法も使いますし、確実に倒すならレベル6だと3人以上は欲しいですね、正体を隠すために妙に隠蔽に気遣った服着てますが怪しさの塊でも絶対に探らないでください…」
「なんと…ではこれまでの彼女の周囲の不審死は…」
「正体がバレかけて口封じしていたのでしょうね自らの手で、出来たら私は彼女を人間に戻してあげたい、私自身のこともですが、フェルズさんに協力してもらいたいのは主にその研究のためです
あ、彼女の近くにいるレフィーヤ・ウィリディスさんの身はあんまり心配しなくとも大丈夫ですよ」
「
「あ…もっ勿論だともっ!」
「さてまずはこの譲り受けた黒いゴライアスの硬皮を使って私の身体に併せたローブでも作ってくれませんか?私の魔法普通に反動で服破けるんですよね…アルフィアお母様も
『恐らく奴以上の
なので自分用の高価な装備買いにくいんですよね…だから私の成長に併せて定期的に作り直してくれませんか?」
「ああ…これだけあるのならかなり長期間提供し続けられるだろうそれと…魔道士なのだろう?杖とかは要るか?」
「いいえ、私は後衛の移動砲台に徹してもリヴェリアさん以上の強さに成れると思いますが、武器戦闘の才能もお母様なみのものがありますので、剣の方が良いでしょう。
暫くは素手でいくつもりですがあと、まずは100万ヴァリスほどを…この前の
あと
その後に
「───凄まじい少女だったな」
「ああ、属性過多だったな。生まれの割に善良そうだったのは幸いだが───妙に
「(属性?)何故か私の魔法や
「そもそも【静寂】が亡くなったのは7年前でどうやって5歳の彼女が会ったというのだ…と言うか【静寂】はお前のことを知っていたか?」
「あ、そういえば…」
頭は良いはずなのに妙に抜けているところがあるン百歳のガイコツローブ。まあそんな人物だと知っていたから大した警戒もせずにアリスも接触してきたのだが。
「───もっと大きな秘密がありそうだ…アレは…面白そうだ、多くの神々が気に入るだろうな」
地上の人間が知り得ない言う必要のない情報までばら撒いて神の興味を惹くことが彼女なりの狙いだったのだが、その目論見も今のところは成功していた。まあやり過ぎると無用の警戒を促してしまう欠点もあるのだが…
───
「乾杯!」
南のメインストリートの繁華街の酒場
「「ランクアップおめでとう、ヴェルフ!」 」
「これで晴れて
「ああ…ありがとうな」
「ふふ…私の武器作ってみます?」
「えっお前魔道士なんだろ杖とかじゃねーの?」
「私の場合魔法と射出口の性質上手ぶらが一番自由度高いんですよ…並行詠唱する時なら剣振るかもしれないけど…それに桜花との手合わせ見ていたでしょう?」
「あー確かに剣使ってもとんでもなかったもんなお前」
持病がない分アリスの戦闘スタイルはアルフィアと比べるとかなり動くし、軽快だ。現時点でもベルの足と同等以上だ。空中で宙返りしながら
「懐に入れば」と思うが近いほど威力が上がるので接近戦なんて誰もしたくない。
「『大型
「───何だ何だどこぞのうさギィッ!?」
聞こえよがしに大声を出そうとしていた
その少女は6人掛けのテーブルの前に降り立ちそのまま気絶したルアン踏みつけた。
「あんた達私ら追っかけてこの店に入って来たでしょ。大分前からその不細工な気配と無遠慮な視線隠せていないから。やっぱ3流以下のゴミクズしか居ないわね
こんな連中纏めて喰らったところで私の
レベル2の殺気とは思えない。間近で睨まれた者達は完全に腰が引けていた。
「茶番は良いわよあんたらの魂胆は知っているから。あんたらんとこの男色の変態主神がウチのお兄ちゃんの貞操狙って喧嘩売りに来たんでしょう?あんたら程度なんでもないから、ほらそっちの変態団長も来なさいよ」
冷や汗をかきながら成り行きを見守っていたヒュアキントスにも飛び火がくる。
「アポロン様の侮辱をするなァ!」
席を立ち駆け出すが───
(やっぱレベル差あるとは思えないほどおっそ)
なんてことを浮かべながらパァン!と音を立ててカウンターの拳が入る。顔面に。「まだ撫でただけよ?」と呟く。
「本当の拳というのはねぇ…オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラアハハッ冒険者の身体能力って凄いわねえ!
初撃の後に拳の弾幕が続く全部顔面に、だ。最後に腰の入った良いアッパーが入る。血と涙に濡れ顔面を腫らしたヒュアキントスが吹っ飛び顔面から床に堕ちる。ここまで店内の物損はなし。尚店には事前に迷惑料を払っていた。
アルフィアでは出来ない気遣いである。気絶したルアンとヒュアキントスを抱えてアポロン・ファミリアが店から退散していく。
(ベルの怒りを煽らなくて良かったのか?)
侮辱されると判りきっているのに全部言わせてしまったら私のほうが彼らの仲間に相応しくなくなるでしょうに。
(ふふ、そうだな…それと、居たなベート・ローガ…ベルを侮辱した駄犬…冷や汗掻いていたぞ、あいつもぶちのめさないか?)
今喧嘩売っても絶対返り討ちですからっ!せめてレベル5くらいまで待ってくださいって。
【ヘラ・ファミリア】の恐怖を知らない若手の初級冒険者達の何人かがこの日かつての最恐の片鱗を見たのだった。
「はあバカどものせいで興が削がれちゃったわねみんな他の店で飲み直しましょう?」
私は流石にジュースしか飲んでいないが。
「おい、いいのかあんなにボコっちゃって」
「いいのいいのあのままにしておいたら聞くに耐えない侮辱されてたからこんなん茶番よ茶番、ただの前哨戦のようなものよ、次の
間近で見ていたヴェルフは(スゲェなこいつ…)と思った。遠目で見ていたベートは(ヤベェなあいつ…)と思っていた。
ベルはある程度「先」のことを聞いていたので結構冷静でいられた。だが、