月女神の眷属譚


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作:graphite
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死妖精


 

 

「おい!アイズの行き先は24層の食糧庫(パントリー)ってわかってんだろ。だったらさっさと行きゃいいだろうが」

 

「それはそうだがどこの食糧庫(パントリー)かわからない以上少しでも情報は欲しい。まぁ、どこまでかはわからなくてもさしたる問題はないけど............この後戦闘もあり得ることを考えれば休憩は必要だろ?」

 

俺とベートは正面戦闘に特化しているがレフィーヤは魔導士だしフィルヴィスLv.3だ。Lv.5の俺達はステイタス面で彼女たちに無理を強いることになりかねない為休息は必須だろう

 

「けっ!テメェとならそんなもんなくてよかったんだがなァ」

 

俺はベートを説得しつつレフィーヤらの休憩を兼ねて18階層の顔役であるボールスさんの下に向かった

 

「えっと.........ごめんなさいフィルヴィスさん。ベートさんも悪気があるわけじゃないんです」

 

「............」

 

(無視か..........まぁ、あの噂もあるせいだろうがレフィーヤ相手じゃ時間の問題だろう)

 

ベートと前を歩きつつノクスは後ろのレフィーヤ達のやり取りを見ていた。ノクスは彼女の噂について知っているがこれは敢えて話さずにどう出るか見守ることにした。最もレフィーヤなら話したところで何が変わると言う事もないだろうが知らないほうが彼女たちもやりやすいだろう

 

そうこうしているとすぐに目的地に到着する。

 

「ベートは他のこの街に詳しそうなやつにあたってくれ。ここは俺とレフィーヤ達で行くから」

 

「フンッ、わーったよ」

 

そのまま不機嫌そうに別の場所へ聞き込みに行く

 

「さてと.......レフィーヤとフィルヴィスさんもついてきてくれ」

 

「わかりました」

 

「........」

 

一応はちゃんと聞くつもりがあるのかフィルヴィスさんも来ていることを確認しつつ店にはいる

 

「お久しぶりですボールスさん」

 

「あん?って、月女神の煌剣(プレアデス)じゃねぇか?てか、お前剣姫〝達〟と一緒にいた筈じゃ........」

 

驚いた表情でこちらを見るボールスさん。まぁ、驚いても無理はないだろう。

 

「ちょっとした裏技ですよ。それよりアイズが24層のどこの食糧庫(パントリー)を目指してるか知ってますか?」

 

「..........まぁいい。だが、当然ただってわけじゃないよな?」

 

流石はこの街で顔役をやっているものと言うかあくどい。何も知らなかったら金払うだけ損だが、知っている可能性もある以上無視できないのが本当にあくどい。

 

「情報次第ですね。多少は色付けてもいいですけど知っていることを掴まされても面白くないですしね」

 

「先払いだ。それとも一級冒険者のお前がケチつけるのか?ンん?」

 

「そうですか..........ならいいです。別に24階層まで行けば何とかできますしね。それにアイズは〝複数人〟と共に行動していることもわかれば十分です」

 

「お前まさかッ!?」

 

そもそも俺の贈呈(ギフト)の魔法があれば同じ階層なら探知は可能だ。確かに聞いておきたい事でもあったが〝複数人〟いるという情報がタダで知れただけ充分だ

 

「それじゃ貴重な情報どうもですボールスさん」

 

(複数人ね..........ルルネルーイは確かヘルメス・ファミリアだったな。一緒に行動してるとしたら恐らくヘルメス・ファミリアのメンバーだ)

 

ノクスはこれまでの食人花事件の事も考え複数人動くとした場合どこが出てくるかを考えれば自ずと思い浮かぶのは三つの派閥。一つはロキ・ファミリア。新種と初めて邂逅した派閥でもあり渦中にいる派閥だ。二つ目はガネーシャ・ファミリア。以前殺されたハシャーナの件もあるために候補の一つだがもしそうならあの魔導士風の人物が別派閥のルルネルーイを使う必要はないためその線は薄いだろう。三つ目はルルネルーイの所属するヘルメス・ファミリア。あそこの主神はよく食わせ物だとかと聞くうえ、ギルドの主神や方々と通じているとヘファイストス様に聞いたことがある。アルテミスにもあの神にだけは気をつけろと言われているためもしかしたらこの件に深く知っていることなどがある可能性もあるために眷属たちを動かしている可能性もある。

 

「クソッタレ!これだから第一級冒険者ってのはッ!おい!千の妖精(サウザンドエルフ)ッ!金やるからお前あいつ殴ってこい!」

 

「無茶言わないでくださいよ...........」

 

ボールスは近くにいたレフィーヤにそう言うが土台無理な話と言うもの...........やり返されはしないだろうが乙女的な理由でノクスに嫌われるようなことはしたくない

 

「....ったく.......って、あん?お前は.........」

 

「............」

 

ボールスはレフィーヤの少し後ろにいたフィルビスに目を向けると意味深に黙り込む。レフィーヤは疑問に思っていると黙ってフィルビスはその場から立ち去った。

 

「.........おいエルフ。お前ら死妖精(バンシー)と組んでるのか?月女神の煌剣(プレアデス)の野郎は何も言わなかったのか?」

 

「えっ?どういうことですか?」

 

「.........その様子だと何も聞いてねぇんだな。アイツなら知ってるだろうが.............まぁ、いい。教えてやるよ」

 

フィルヴィス・シャリアにはもう一つの渾名..........美しい容姿の彼女にはにつかわないその不名誉な渾名の由来をボールスはレフィーヤに語る

 

レフィーヤはその真相.........『27階層の悪夢』とその後の彼女にまつわることを聞くと同時に彼と似ている気がした。そして、彼があえて言わなかった本当の理由にも気が付くのであった

 

 

************************

 

 

「.............................」

 

ただ一人、陰鬱な表情をして黄昏ている美しい彼女の下に一人の冒険者が..............ノクスが歩み寄ってきた。その彼女も近づいてくるものに気が付きながらも無視をする

 

「...........『27階層の悪夢』。六年前闇派閥(イヴィルス)によって引き起こされたそれにより貴女のパーティーは貴女を残し全滅。そしてその後は貴女と組んだパーティーで貴方以外が悉く死んでいった」

 

「...............何のつもりだ貴様?不愉快だ」

 

「だろうな............敢えて嫌なことに触れてるんだ。こっちだって最悪な気分だよ」

 

ノクスは背を向けて彼女から向けられる敵対心を感じながら続ける

 

「それで?いつまでそうしてるつもりだ?」

 

「.........何?」

 

「いつまで閉ざしこんでるんだと聞いている。それで何が変わる?死んだ奴らが報われるって.........そうしてれば誰も傷つかないなんて本気でそう思ってるのか?」

 

「..............何も知らぬ奴が偉そうなことを───ッ!!」

 

彼女..........フィルヴィスは逆鱗に易々と触れてくるノクスに今ここで殺したくなるほどの怒りを覚え掴みかかろうとするところでノクスも振り返り彼女の腕を抑えて話を続ける

 

「そうだなフィルヴィスさんの事は知らない...........でも何を考えてるかくらいはわかる」

 

フィルヴィスは何をと思った...........が、ノクスの目を見て冷静になる。何故ならノクスの目には深い悲しみと憎しみ.........まるで自分と同じような目をしていいた

 

「お前.........一体............?」

 

冷静になったのでノクスも掴んでいた手を離しまたフィルヴィスに背を向けて話始める

 

愚かな一人の少年の話を──

 

「........ある森の奥深く。そこに一人の捨て子の赤ん坊の男の子がいました。その男の子はとある神様に拾われその神様のファミリア総出で育てられた。それから森で狩りをしながらその神様のファミリアで生計を立て14の頃にはLevel3になっていました」

 

「.................」

 

「当時その少年にとってLevel3になったと言う事はとても嬉しく、これで自分を拾ってくれた神様やそのファミリアの家族の役に立てる.............いや、その少年は傲慢にも家族を自分の力で何処までも守れるだなんて思いあがった」

 

「当然そんな思い上がりはすぐに打ち砕かれた...............とある強大なモンスターの討伐任務を請け負うことになったある日の事だ。ファミリア全員でそのモンスターの下に乗り込みそしてそのファミリアはその少年と主神を残して全滅..............少年はこれと言ったミスを犯したわけではない。が、もっと........もっと力があれば............精神部分でどうにかなるだろうなんて思い上がりがあったからだと激しく後悔し自身を憎んだとさ」

 

「まさかお前...............」

 

言うまでもなくこの話はノクスの過去だ。ノクスの原点でああり最大の汚点でもあるあの日。

 

でも、どれほど後悔しようともうノクスが止まることはしない

 

「だが、残ったものはある。神様だけじゃない..........仲間や家族の意志や希望、未来(これから)がある。..............少年は自身を憎んでなお家族の為に進むことにした。大切な家族が道半ばで倒れるなんて望んでるわけがないからだ」

 

「...............」

 

「フィルビスさんにも残されたものは必ずある。そして貴方を救うものが必ず現れる...........いや、もう現れる」

 

ノクスの視線の先にはレフィーヤがいた。レフィーヤもこっちに気が付く息を切らして走って来る

 

「失ったものを想うのは全く悪いことじゃない。寧ろ大切だって俺は絶対に思う。けど...........それに囚われるのは失われたものはきっと望まないし、家族(彼女達)もきっと辛い。だから偶に後ろを向きながら前に歩いていかなきゃいけない」

 

「................」

 

「さて、俺が言いたいのはそれだけです。あとはヒーローに任せますよ」

 

そう、レフィーヤはノクスにとって確かな光を教えてくれた。歪んだ自分でさえ肯定し、それさえも力にしろとまで言う。そんな彼女はまさしくヒーローと言うにふさわしいだろう

 

ノクスでは唯過去と未来に対しての考えまでしか言えない。レフィーヤの様には他者を救えはしない。レフィーヤの優しさが彼女に届く事を信じ似たような境遇の彼女が少しで救われることを祈るのであった

 

 

 







今回はここまでです。長らく書いていなかったうえ中途半端ですがどうかご容赦ください。さて、ここからようやくソード・オラトリア編は折り返し地点に来たと思います。そろそろ物語も佳境に入るので頑張って書いていきたいと思うのでどうかこれからもよろしくお願いします!


最後に今回もここまで読んでくださりありがとうございます!お気に入り登録、コメント、評価をしてくださりありがとうございます!

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