東京都新宿区高田馬場の路上で、動画のライブ配信中だった女性が殺害された事件は、18日で発生から1週間となる。容疑者の男は、金銭トラブルから女性への恨みを募らせて凶行に及んだとみられる。リアルタイムで居場所が分かる屋外配信の危険性が注目されたが、業界関係者は「配信者と視聴者が直接会ってやりとりを重ねたことも事件の背景にある」と指摘する。(鈴鹿雄大、米田怜央)
◆金銭を巡るトラブル、容疑者とのほかにも…
犠牲になった佐藤愛里さん(22)=多摩市=は「最上あい」を名乗り、動画配信アプリ「ふわっち」で活動し報酬を得ていた。アプリ内で人気を示す「配信者グレード」は10段階で最上位の配信者だった。
事件当日の3月11日、配信者の間で定番とされる「山手線徒歩1周」をしていた。1人で歩きながら配信中の午前9時50分ごろ、栃木県小山市の高野健一容疑者(42)=警視庁が殺人未遂容疑で逮捕、殺人容疑で送検=からサバイバルナイフで数十回刺されて死亡した。
人気配信者の佐藤さんは、捜査関係者などによると、高野容疑者を含め、複数人と金銭を巡るトラブルがあった。
◆事件前日「山手線徒歩1周」告知を見て…
高野容疑者は、2021年12月に「ふわっち」で佐藤さんを知り、配信中に応援のため現金を送る「投げ銭」を始めた。多い時には月10万円を送り、連絡を直接取るように。翌年8月、佐藤さんからの誘いで勤務先の山形市のキャバクラ店を訪れるようになった。
その後、高野容疑者は佐藤さんから、携帯料金や光熱費、家賃の支払いといった名目で現金の振り込みを求められ、次々と応じていく。「返済する」と言われたものの23年初旬には音信不通になり、2023年に貸していた約250万円の返済を求める訴訟を起こし、訴えが認められた。
それでも返済額は3万円にとどまり、生活に困窮していった高野容疑者。事件前日に佐藤さんが「山手線」を告知したのを見て犯行を決意したという。当日の午前7時45分すぎ、地元のJR小山駅(栃木県)で乗車。配信で場所を確認しながら都内に向かい、2時間後に山手線の高田馬場駅で降りた。調べに「騒ぎを起こせば女性との関係を知ってもらえると思った」と供述している。
◆「住所・配信場所を知らせる」「直接会う」のは危険
事件では、若者を中心に人気となっている配信者の活動の危険性に注目が集まった。配信者育成事務所「晴(はる)ライバーオフィス」(東京)の前田晴香社長は「事件をきっかけに『配信は危ない』との目を向けられるのは残念」と困惑する。
所属する配信者には「外で歩きながらの配信はせず、家の中でするように」と指導を徹底。自身も本名で8年間配信をしているが、自宅の住所や配信場所を明らかにしたことはない。危険な思いをしたことはないという。前田社長は「リスナー(視聴者)と直接会うのもやめるよう伝えている。危険が伴うし、投げ銭で応援しなくてもいいと思われてしまう」と話した。
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