2021年プレイした同人ゲーム作品10選

まえがき

・筆者が2021年にプレイした同人ゲーム作品（ノベル1作、3Dダンジョン探索1作、RPG8作）から、良かったもの10選です。 ・ネタバレには配慮していますが、短評の都合上、展開について言及する場合があります。 ・陵辱およびNTR描写を含む作品が複数あり、特に警告もしておりませんので苦手な方はご注意ください。

涙声のギニヨル

弱肉強食の論理に支えられた世界で展開される、暴力の連鎖の物語。 主人公とヒロイン、そして竿役たる敵の首魁の三者のうち、誰の格も落とさないまま精度の高いNTRを成立させているのが素晴らしい作品でした。 理不尽に対して抱いた義憤を様々な形で何度も挫かれ、それでも善くあることを諦めない主人公。どれだけの暴力に曝されても、決して心を折ることのないヒロイン。そして、徹頭徹尾「奪う側の強者」として振る舞う敵の首魁。 村の男たちが無力感に壊れ、村の女たちが苦痛に屈し、盗賊たちが暴力の行使に酔うほどに、彼ら三者の美しさは強調されます。容易に人間が壊れていく過酷な終末世界において、なお美しく生きられる者たちが、しかし悲劇を紡いでしまう悲しさ。 泣けるNTRゲーを挙げろ、と言われれば（言われることあるか？）、筆者は迷いなく本作を挙げます。

既婚男の現地妻にされたカノジョ

浮気えっちの窃視はいいよねという強い気持ちに満たされましょう。 「価値ある絆を汚される」こと、その聖から俗への遷移の振り幅が大きければ大きいほど俺の脳は効率的に壊れてくれるんだよ！！　と日頃から口角泡を飛ばしつつ熱弁しているタイプの人には特におすすめできる作品です。 反面、寝取られる過程は割とあっさりめなので注意が必要かも。 ヒロインの可愛さ、そして主人公とヒロインとの絆の強さを短時間で効率的に描きつつ、そんなヒロインを手篭めにしておきながら大した達成感も得ていなさそうな竿役の振る舞いが大変よく、脳がいい感じに壊れてくれます。 あれだけかわいくてあれだけ大事な彼女を、しかしあの男は性欲処理用の便利な女が一人増えたとしか思っていない、その落差。子供が大人にお前の宝物はゴミだしお前の振る舞いはおままごとのそれに過ぎないと突きつけられた時のような、容赦のない衝撃が脳に入った罅をうまいことこじ開けてくれることでしょう。 いやちょっと待って、じゃあ手慣れた悪い大人に高速で手篭めにされただけのヒロインは単なる尻軽ということになってしまうのでは……？　というと、そこでもちゃんと工夫が凝らされていますので、気になった方はぜひ。

外道勇者一行

無力な主人公が、それでも守りたかった世界をあらかた全部守れない話。 序盤の絶望感がとにかくよく、言行は最悪だが世界を救える能力を持った外道勇者によって主人公の大切なもの―――女性であったり、帰る場所であったり―――があらかた奪われてしまう一方で、救世の旅の主導権を握る外道勇者には歯向かうことが一切できないという、なかなかつらい描写が続きます。 これがまた非常に脳によく、女性たちの諦めや屈服により堕ちていくたび、主人公の（元から脆弱な）世界がまた狭まり / 壊れていくのが手に取るように感じられ、ああ、これは単に性愛の対象としての女性を奪われているだけじゃなく、人間としての尊厳までをも奪われていく物語なんだなあ、と実感できる作りになっています。 惜しむらくはメインヒロインがかなり素早く堕ちるところで、ここで粘ってくれていれば最高のNTRゲーになっていた気がします。とはいえ、あっさりと堕ちるヒロインが好きな方も多いでしょうし、好みの問題ということで。 そこらへんをNTRの強度を高めるために調整すると成立しなくなる展開もありそうですし、飽くまでも作者さんの主眼はそこではなかった、と理解しておくのが正しそうな気がします。

クロスブリードジョーカー

とにかくシナリオがよく、悪役含めて全員キャラが立っていてよい（小並感）。 敗北エロをメインに掲げるとは……「わかって」そうな匂いがするじゃん……とエロを期待してプレイしてみたら、普通に能力バトルものとしてもめちゃくちゃ面白かったうえ、敗北エロはきっちりエロくてびっくりしてしまった作品です。ほんとおすすめ。 ある程度能力の強みと制約が場の人間に開示された状態で、互いにメタを張りながら勝ちを拾いにいく……という、少年漫画的な能力バトル描写の精度がまず高く、その戦闘描写によって描かれたヒロインたちの強さと主人公の賢さこそが、敗北エロの衝撃を底上げする。陰惨な敗北エロを見たからこそ、それを乗り越える正規ルートの描写にカタルシスが上乗せされ、そしてまた次の敗北エロの破壊力が増す。 極めて理に適った構造をとる作品であり、燃えと泣きとシコのどれが欠けても成立しえない強度に支えられているように思います。

ハルカチャンクエスト

義務感から嫌いな相手に体を開いてしまう、真面目な女の子は好きですか？ 私は好きです。 村おこしのために色々やるゲームで、かなり様々な方面にアクションが取れるのですが、妻帯者であるところの有力者と不倫し続けることで、当初は好意的だった有力者の奥さんからの対応がどんどん温かさを失っていくのが非常によかったですね……。 普段は寝取り作品にはほぼ興味がなく、まして女性視点での寝取りには全く触れたこともありませんでしたが、姦通によって幸せな世界を徐々に歪めていく過程がしっかり描写されるのを見て、朧げながら扉が見えてきた気がします。開けるか、あの扉……。

ひらだん ～アイドル会長比良坂透 ダンジョンに放り込まれる～

寝取られっぽいけどあんまり寝取られじゃない、ちょっと寝取られなゲーム……というとdisってるかのような文面ですが、そもそも寝取られとあんまり関係ないところに良さがある気がしています。 「美しく気高いヒロインが嫌いな相手と長時間エロトラップダンジョン的な何かで過ごさせられるうち、徐々に籠絡されていく」というのが作品の骨子で、それを主人公が窃視している訳なんですが、いかんせん（我々のプレイ中は）竿役の方が圧倒的に長くヒロインと触れ合っているため、意外にもNTR感がそこまでない印象ではあります。 エロトラップダンジョンで竿役が結構がんばるので、まあ頑張ってるし……という気持ちにさせられるのもNTRっぽく感じられない一因かもしれない。 一方で、あまりよろしくない野郎が高貴な女性を籠絡し、堕とす……という構造が担保するエロさは十全に発揮されており、特に中盤まではヒロインのガードの硬さも相俟って非常によろしいです。

神代イツキの選挙戦

前町長であるところの祖父を罠に嵌めた対立候補と、町長選挙を戦う女子高生の話。 真面目で正義感に溢れた少女が悪意に絡め取られるのは好きですか？　と訊かれて、ﾆﾁｬﾘとした笑みが即座に出せる人には殊の外おすすめです。 ラッキースケベ系のイベントもよいですが、やはり対立候補の罠に嵌められて……という展開が素晴らしい。外堀を埋められ、抵抗力を削がれ、もはや正しさだけでは刃向かうことのできない状況を作り出されてから為される勝利宣言に涙を流す少女の姿を見て、スタンディングオベーションしていきましょう。

夜陰のあやめ

くのいち衣装はどれだけえっちであってもよい。そう思いませんか？　私は思います。 気立てがよく、魅力的な主人公が下衆な男や妖怪の類に絡め取られていく様が丁寧に描写され、納得感と共に興奮することが可能になっています。 結構ちゃんと嫌がっていた序盤から、自分から誘いに行くようになる終盤までの主人公の変化も滑らかに描かれており、なんか違うな……と思わされる瞬間がなかったのがとても好印象でした。 戦闘がそれなりに操作を必要とする（ボタン連打だけだと結構困る）ものであるがゆえに、敗北えっちを拝むための投げやりプレイが本当に投げやり感あってよいなあというメタな感覚もありました。使えるものはすべて使って興奮しような。

便利屋ノナ

ああ、いまわたし流されちゃってるな……とぼんやり自覚しながらも快楽を受け入れてしまう自分を同時に自覚して自己嫌悪を深める少女は好きですか？　好きですよね。私もです。 押しに弱く酒に弱く自堕落……という性質が行きずりえっちの納得感を極端に高めつつ、一方で吹っ切れることができない程度には倫理観や貞操観念を捨てていない主人公の人格が非常に絶妙で、ファンタジー世界で便利屋をしていたらえっちされてしまいました、という現実にとても成立しなさそうな題材にも関わらず、変なリアリティが全編に充溢しています。 この生々しさ、変な実在感がとにかくよい。 あれ、陵辱系のえろRPGだったらもうひとつ段階エロあるんじゃない？　ってところで止まるエロが結構あるように思えますが、これも意図的な拘りなんじゃないかなという気もしていて、「流され終わった」後を更に描写するのは蛇足なのだ……ということなのかもしれません。

蘇る退魔巫女

買ったばかりでまだ遊びきれておりませんが、めちゃくちゃ良かったので。 体験版よすぎて非セール状態で即ポチしてしまいました。 まともなRPGにしよう、という気持ちが感じられるのがめちゃくちゃえらい。 ターン制RPG一般の話として、初見ポス相手に情報のない状態で戦闘を行うのって、実際あんまり楽しい時間じゃないと思うんですよね。見てわかる弱点がなければまず弱点行動を探る必要があって、それは総当りでやるほかなく、ゲーム性はそこにはない。一方で、弱点が見えてしまえばそれを擦るのが最適解になってしまいがちで、もうHP管理以外に着目する要素が一切なくなってしまったりもする。 本作ではそこを「遠隔オペレーターと主人公との対話によって、ターン経過に応じてプレイヤーのとるべき行動を示唆する」「敵のゲージ管理という概念を取り入れることで、本質的には敵の動きを制御することにプレイヤーのリソースを割かせる」といった工夫により解決しようとしている気がします（たぶん）（まだラスボスも倒してないけど……）。 上記の要素そのものがめちゃくちゃ新しい工夫という訳ではありませんが、この組み合わせが効果的に本作の戦闘を楽しくし、また戦闘中にもキャラの掛け合いを通してプレイヤーを楽しませていることについては論をまたないと思います。 主人公はとてもかわいく、ギャグから陵辱まで全部こなせる絶妙なキャラ付けには唸らされました。 クリアしたらネタバレ感想とか書いてみたいですね。