東京電力福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)付近を走るJR常磐線の運転士や車掌について、JR東日本が十分な被ばく管理をしていないことが分かった。労働組合の自主測定では、年間の被ばく線量は国際放射線防護委員会(ICRP)が勧告する上限には達していないものの、運転士らからは不安の声が上がる。だがJR東日本は、労働組合が求める低線量の被ばく管理には消極的だ。(宮尾幹成)
◆JRが用意した機器は100μSv未満を測定できず「意味がない」
2025年3月14日。福島第1原発事故後、9年間にわたり不通となっていた常磐線の富岡(富岡町)~浪江(浪江町)間は、2020年3月14日の再開から5年が過ぎた。線路や駅周辺の避難指示は解除されたが、沿線には放射性物質による汚染で人が住めない「帰還困難区域」が多く残されている。
JR東日本が富岡~浪江間に設置する空間線量計は、現在も毎時1μSv(マイクロシーベルト)前後を示す。東京都内の空間線量が毎時0.03~0.04μSv程度で推移しているのに比べれば、依然として高い数値だ。
JR東日本やJR東日本輸送サービス労働組合への取材によると、JR東日本は社内文書で、原発近くの屋外で設備点検や修繕工事に当たる作業員の年間の追加被ばくを1mSv(ミリシーベルト)=1000μSv以下とする目標を掲げている。原発作業員や放射線技師などを除く一般公衆の被ばくを年1mSv以下に抑えるとするICRP勧告に基づくものだが、この区間を通過する運転士や車掌は対象外だ。
JR東日本は運転士や車掌にも、ガラスバッジと呼ばれる積算線量計を携行させている。だがこれは原発作業員などが使う、比較的高い積算線量を測るタイプで、100μSv未満は「X(検出限界未満)」と扱われる。運転士らは「いつも検出限界未満としか表示されず、意味がない」とこぼす。
[交通機関の乗務員では、航空機のパイロットや客室乗務員は宇宙からの放射線による被ばくが避けられないことから、国は各航空会社に年間の追加被ばく限度を5mSv以下とするよう求めている。一方、鉄道の乗務員については、こうした対応は行われていない]
◆倒竹やイノシシとの衝突で停車することも
輸送サービス労組は2020年6月~2023年6月の約3年間、運転士と車掌の有志による自主的な線量測定を実施。積算1μSv以上を測定できる線量計「D―シャトル」を非番や待機の日も含めて装着し、1カ月ごとの被ばく線量を集計した。
運転士らは原ノ町運輸区(南相馬市)に所属しており、多くは、東京都内などより線量の高い南相馬市周辺などに生活の拠点がある。
例えば、2023年6月3日午後から翌4日朝にかけて、富岡~浪江間の往復を含む乗務があった運転士が浴びた線量は1.77μSv。6月の積算線量は53.35μSvだった。
単純な比較は難しいが、現在の都内で1カ月過ごした場合の自然放射線による積算線量(毎時0.03μSvで、1日のうち8時間は屋外、16時間は屋内にいたと仮定)は約13μSvで、差の40μSv程度は原発事故に由来する追加的な被ばくと見なせる。
測定に協力した全員の月平均は、運転士が55.65μSv、車掌が48.25μSv。13μSvを差し引いて単純に12倍すれば、年間では400~500μSv程度となる。正常に運行している限り、年1mSvを上回ることはなさそうだ。
ただ、区間内で列車のトラブルなどで停止すれば、積算線量は上乗せされることになる。
2023年2月10日に大野(大熊町)~双葉(双葉町)間で大雪による倒竹のため1時間ほど停車したケースでは、この時間帯の被ばく線量は通常の2倍に。イノシシなど野生動物との...
残り 935/2456 文字
この記事は会員限定です。
- 有料会員に登録すると
- 会員向け記事が読み放題
- 記事にコメントが書ける
- 紙面ビューアーが読める(プレミアム会員)
※宅配(紙)をご購読されている方は、お得な宅配プレミアムプラン(紙の購読料+300円)がオススメです。
カテゴリーをフォローする
みんなのコメント0件
おすすめ情報
コメントを書く
有料デジタル会員に登録してコメントを書く。(既に会員の方)ログインする。