月女神の眷属譚


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作:graphite
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ノクスの挑戦


 

 

 

ノクスとフィンは話し合うととりあえずは犯人は女性である事、そして女の武器を使えばレベル関係なしに殺しも可能でもあるという説明をして一所に集めた冒険者たちの反応を窺うことにすることに決めた

 

ある程度そこからの反応を見て候補を絞り込もうということにした。下手に男の変装をしている相手を探そうとして無差別に暴れられては困るからだ

 

いささか適当と言わざる負えない作戦だが結局これが最善手だろうという結論になったのだがノクスは1つ誤算を冒していた..............

 

 

その誤算は..............

 

 

 

 

 

 

「フィン~私を調べて~//////」

「ほら~こっちもぅ~」

「ほらほら.........体の隅々まで、ね?」

「あ!私押し倒しちゃお~っと!」

 

黄色い声が広場に響き渡り、我先にとフィンへ迫る女性冒険者達を前に繰り広げられる光景はまさしく混沌と言うべきものでノクスも............

 

(うわぁ..................)

 

なんて光景だと辟易していた

 

この策の誤算はフィンの女性人気だった。一応、ノクス達は痴情の縺れの線は薄いだろうがそれでも可能性はあるしノクス達の考え過ぎもあり得るため女性の身体検査もかねての事だったのだが唯の身体検査がここまでの物を呼び起こすとは正直考えもしてなかった

 

そして何よりこの状況でめんどくささを加速させているのが.............

 

「コンの...........阿婆擦れ共が!!!」

 

そう、ティオネだ.............

 

フィンに惚れている彼女が黙ってるわけもなくフィンに襲い掛かる女たちを剥がしては投げ、剥がしては投げを繰り返して身体検査どころではない。

 

「これは想定外...............」

 

「うん.......どうしよう?」

 

「あははは..............」

 

ノクスの力ない呟きに同意するアイズと苦笑するレフィーヤ。リヴェリアも頭をおさえてこの状況にため息をついていた。そして暴走するティオネの妹であるティオナは彼女にしがみついて止めようとしていたりともうどうしようもない状況だった

 

そんな状況にめまいを覚えるもとにかく不審な奴がいないか残りの面々で見回していると..............

 

(あの犬人(シアンスローブ)............何に怯えてるんだ?)

 

ノクスやアイズが目に付いたのは広場から離れた場所で何かびくびくとした様子で一人浮いている犬人(シアンスローブ)の女性冒険者だった。

 

その様子に築いたレフィーヤも彼女を見ていると青白い顔をした犬人(シアンスローブ)は中型のポーチを抱えたまま広場から離れていった

 

(犯人があんなに怯えてるのはおかしい.............もしかしてハシャーナの所持品を持ってるのか?)

 

万が一犯人に彼女が狙われては拙いのですぐに保護に向かおうと決めアイズとレフィーヤに指示を出す

 

「アイズとレフィーヤは先にあの犬人(シアンスローブ)を追って。俺はフィンさん..........は無理だからリヴェリアさんに報告してすぐにそっちに向かうから。もしかしたら犯人が襲ってくるかもしれないから気を付けて」

 

「わかった」

「わかりました」

 

二人はすぐに彼女の方へ駆けていく。その様子を見たノクスは他に広場から離れていくものがいないか注意を払いながらリヴェリアの方に報告へ向かう

 

「リヴェリアさん少しいですか?」

 

「どうした?何かわかったか?」

 

「はい。恐らく犯人が狙ってる物を所持した冒険者がこの広場から逃げていくのを確認しました。今アイズとレフィーヤに向かわせて...........(あのローブの男..........下は鎧着てるな.........それに男のむいてるほうは......)」

 

リヴェリアへの報告中も常に広場に気を向けていたノクスが怪しい人物を見つけるとその男も広場から離れていった

 

「どうしたノクス?」

 

「いえ.......とりあえず俺も万が一彼女たちが襲撃されたらいけないので向かいます。すぐに犯人もこのことに気づくはずですから戦闘になった時に備えておいてもらっていいですか?」

 

「わかった。すぐに備えよう」

 

リヴェリアが行動を開始したのを同時にノクスはアイズ達の方を追いかけるのであった

 

 

************

 

 

18階層の水晶は昼から夜になるにつれその光量を徐々に落としていく。天井で輝く白水晶や周囲の水晶たちもその光量を落としつつある中犬人(シアンスローブ)の女性冒険者は息を切らしながら走り続けていた

 

「はっーーはっーー..........ッ!?」

 

長らく平坦な道を彼女は走り続けていると突如目の前に踊り立った金髪の剣士、アイズに目を見開き驚くもすぐに引き返して逃げようとすると今度は後方からはエルフの魔導士、レフィーヤの姿を確認して逃げるのをあきらめたのかその場にへたり込んだ

 

「はぁ、はぁ..........捕まえましたね。流石はアイズさんです」

 

「ううん。レフィーヤのおかげだよ」

 

犬人(シアンスローブ)の女性冒険者をはさみ言葉を交わすと二人は彼女を見る

 

「とりあえず事情聴取は私たちがするより団長に任せたほうがいいですよね?」

 

「うん、広場に戻ろう」

 

ノクスがもしかしたら襲撃される可能性もあると言われてるので人が多い場所に移動するほうが犯人も動きにくいだろうと考え彼女を連れ動き出そうとすると

 

「や、やめて!?」

 

垂れた耳をピクリと動かした少女は途端に涙ぐみ、懇願するようにアイズに掴みかかって縋りつく。狼狽ええるアイズに取り合えず落ち着いてもらおうとレフィーヤがアイズから話そうとするが掴みかかって泣きつく彼女の力は思っているよりも強く腕を放そうとしていない

 

「どう、しましょうか?」

 

「.........人のいない場所に連れていこう」

 

 

 

人気のない街の倉庫に少女を連れていくとカーゴに囲まれている空き地でアイズらは向かい合った

 

「もう大丈夫?」

 

「うん...........」

 

レフィーヤは携行用の魔石灯を見つけ、点灯させる

 

「貴方の名前は?」

 

「ルルネ.........ルルネ・ルーイ」

 

「レベルと所属を教えてもらってもいいですか?」

 

「第三級、レベル2.......所属は【ヘルメス・ファミリア】」

 

アイズ達の質問に彼女.........ルルネは俯き加減にそう答える。彼女の顔たちはとても快活のように見えるがいまは見るかげもなく沈んでいる。ただ質問にはしっかり答えることを確認したアイズ達は続けて尋ねる。

 

「どうして広場から逃げ出したの?」

 

「.......殺されると思ったから」

 

「何でそう思ったんですか?」

 

「............」

 

ここにきてルルネは沈黙した。まるでその回答にこたえることで何か起きてしまう様に...........

 

だが、アイズはここで鋭く踏み込む

 

「貴方がハシャーナさんの荷物を持っているから?」

 

するとルルネはぎこちなくだが静かに首肯した

 

「どうして貴女がハシャーナさんの荷物を.........ま、まさか盗んだんですか?」

 

「ち、違う!わ、私は依頼を受けて.........それで.......」

 

「その依頼の内容は?」

 

「依頼内容は.............」

 

ルルネに課せられた以来と言うのはいわゆる運び屋のようなもので依頼人に目的の物を届ける依頼だった。ただ、その依頼人は全身をローブで隠し顔も性別さえもわからない相手だったそうだ。初めは怪しすぎるから断ろうとしたが報酬がよかったことに吊られ引き受けてしまったらしい

 

「......アイズさん。やっぱりこのことはフィンさんに伝えたほうがいいんじゃないですか?」

 

レフィーヤは自分たちの手に余ると考え情報を共有するべきと考えそう提案するが..........

 

「だ、ダメ!!人のいるところは怖いッ..........それにもし私が持ってるってバレたら私が.......」

 

完全に怯え切っているルルネに困惑する二人。だが、アイズは少し考えこむとある提案を彼女にする。

 

「.........なら私たちにその荷物を渡して」

 

アイズは自分達なら問題ないだろうと判断した提案だった。勿論相手はレベル4を殺した相手だ。油断はできない。だが、それでもルルネよりは十分に強うことは確かだ。そして、犯人を見つける手掛かりにもなるかもしれないとアイズは考える。

 

ルルネは自身の命と報酬を天秤にかけているのか険しい顔で黙り込む。だが、すぐに命あっての物種と結論づけたのか中型のポーチから布でしっかり包まれた物を差し出した

 

「詮索はしないで。本当は誰にも見せるなって言われてたけど...........」

 

それをアイズは受け取ると一応どんなものか知っておきたいためその包みをめくると...............

 

「なんですか、これ..............?」

 

アイズは両手に収まる球体のそれを見てそう感想を抱いた。緑色の宝玉で、中には透明の膜につつまれている液体と何かの胎児のようなものでとても不気味なものだった。レフィーヤも顔に嫌悪感が伺える

 

そしてそんな不気味な胎児が不意に目を開いた

 

「(なに、これ(・・)).......?」

 

突如蠢いたそれと目が合うアイズ。すると甲高く激しい耳鳴りを覚えると強烈な悪寒がアイズのみに襲い掛かる。そのまま立て続けに今度は吐き気やめまいまで訪れとうとう耐え切れずアイズは膝を折る

 

「アイズさん!?」

 

レフィーヤはすぐに宝玉が原因だと考えアイズから遠ざけてアイズを手で支えているとしばらくしてアイズは呼吸が落ち着いたあのを確認する。ルルネはまさかの事に今にも泣きだしそうになっていた

 

「や、やっぱり...........拙いものなんじゃ..........」

 

「大丈夫ですかアイズさん.........?」

 

「うぅ......だい、じょうぶ」

 

まだいくらか不調そうに見えるが立ち上がったことに少し安堵するとレフィーヤは自分が責任もって預かるといいもう一度布で包み両手に持った

 

アイズが落ち着いたのを確認して一同はその場を離れようとした次の瞬間だった

 

遠方から何かが崩れる音と悲鳴が届いてきたのだ。視界が悪い倉庫が集まる場から見渡しのいい高台の方へ移動するとそこから見えたものは.................

 

 

「アレは..........ッ!」

 

天高く伸びあがる無数の食人花だった

 

 

 

 

 

「なにモンスターの侵入を許してやがる!?見張りは何を...........」

 

ボールスの怒号が広場に響き渡る。食人花たちは冒険者の集まるこの場に向けその長躯を蛇行させて他のモンスターと共にこの場に押しかけようとしていた

 

そして一体の食人花が辿り着くとそれを皮切りに無数のモンスターが殺到し、広場に混乱が訪れる。多くの者が悲鳴を上げ逃げ纏いそれが伝染していく。

 

「ティオネ、ティオナ!彼等を守るんだ!」

 

フィンの指示の下彼女たちは武器を持ち疾走する。ノクスの伝言通り戦いになってもいいように彼らは備えていたために迅速に対応することができた。だが、それはあくまで彼ら彼女らだけで広場にいた冒険者たちは混乱の余り逃げ纏う事しかできずにいた。

 

そんな冒険者たちに食人花たちはティオネ達にかなわないことを悟ったためかバラバラに襲い掛かっていく

 

「リヴェリア!敵は魔法に反応する!できる限り大規模な魔法で周囲にモンスターを引き寄せろ!ボールスは五人一組で小隊を作らせるんだ。数で当たれば各班一匹は抑えられる!」

 

「了解した」

 

「お、おう!(なんでこいつらはこんなに落ち着いてやがるんだよッ!?)」

 

(アイズ達の方にはノクスが行ってくれてるから問題はないだろうとして出来すぎているな...........)

 

フィンの指示通りボールスの指示を飛ばす怒号、リヴェリアの美しい声があたりに響き渡る。入エルフの美しい声にモンスターがつられて集まる中フィンも長槍を使いモンスターを屠り続ける。そんな中もこの出来すぎた状況に思考を巡らし続ける

 

(まさかッ.........調教師(テイマー)か!)

 

見え隠れする人の意思からフィンはそう結論を導き出す。明らかに普通じゃない統率のとれた行動をするモンスターらにそれ以外はないだろうとほぼ断定するのであった

 

 

 

 

 

 

「そんな............!?」

 

「な、なんだよこれ!?..........何がどうなって」

 

「街がモンスターに攻められている」

 

動揺するルルネとレフィーヤの横でアイズも驚きを隠せないようだった。感情の希薄なアイズの表情に険しさがある。アイズは街の様子を冷静に俯瞰していると............

 

『オオオオオォォォォォ!!』

 

「!?」

 

レフィーヤ達の周囲を遠巻きに囲むようにして無数の食人花が地面を割り伸びあがる。するとすぐにレフィーヤ達を補足し、モンスターが襲い掛かる

 

「ッ......!」

 

レフィーヤとルルネが立ち尽くしかけているとすぐにアイズが抜剣し、食人花たちを切り払っていく

 

「レフィーヤは先にルルネさんを連れて広場に行って!」

 

アイズそう言って一人で食人花を相手取る。レフィーヤは躊躇いが生じるもここにいてもできることは限られるため悔しさを振り払い、ルルネの手を引き走り始める。それを確認したアイズも風を纏い自身に注目を集めて戦いを加速させていく

 

そんな中、レフィーヤは走り続けると一つの影が現れた

 

「(男の冒険者.......?)」

 

手足の先から胸元まで黒い鎧で身を包んだ男の冒険者がレフィーヤ達めがけて無言で直進してきた

 

「と、止まってください!?」

 

レフィーヤの制止を無視してその冒険者は直進する。そして十歩ほどの間合いをきった瞬間。男が急に掻き消えるほど加速し一気にレフィーヤに肉薄する。レフィーヤは反応できず、拙いと思った次の瞬間だった..........

 

 

「ハアァァッ!!」

 

ドオォンッ!!!

 

鋭い気迫のある声と共に現れた白い閃光がその男性冒険者をまるで砲弾のように吹き飛ばした

 

「悪い遅れたレフィーヤ」

 

「ノクス!!」

 

剣からバチバチと音を鳴らしながら白雷をほとばしらせるノクスがその場に駆け付けた。ノクスはリヴェリアに報告後、魔石をすべて売却していたため贈呈(ギフト)で探知魔法を作れずにいたため仕方なくしらみつぶしに探していたため合流が遅くなってしまった

 

「レフィーヤはすぐにこのままその人を連れて広場に。俺がここは足止めするからフィンさん達に報告を」

 

そう指示を出した瞬間。水晶に吹き飛ばされ、砂煙が立ち込める中から恐ろしい速さで上げが飛び出すとノクス達に襲い掛かる

 

「ッ!.............フッ!!」

 

ノクスは右手の剣で受け止めるとそのまま逆手に持った左の剣で横薙ぎをし反撃すると相手はバックステップで回避する。

 

「やっぱり.............顔の皮をかぶっていやがったか」

 

「ほぅ............ばれていたか」

 

そう呟く声は紛れもなく〝女性〟のもので、鎧のほとんどは最初のノクスの一撃により砕かれインナーに包まれた豊満な肢体があらわになっていた。顔の皮も一部が剥がれておりそれを彼女は無理やり剥がす。

 

「いい加減、宝玉(たね)を渡してもらおうか」

 

そう告げると彼女はまた凄まじい勢いで襲い掛かる。ノクスはそれを冷静に対応する

 

「シッ.............」

 

ノクスは二刀による手数で彼女の苛烈極まる攻撃を捌き続ける。アイズやノクスの剣技を舞のように例えるなら彼女の攻撃はまるで洪水。怒涛の勢いで剣に拳にすべてを以ってノクスを打ち倒そうと襲い来る。

 

(強い..........レベル5クラスか.........)

 

まだ捌ききるだけの余裕はあるものの相手は本気と言うわけではないだろう。それはノクスにも言えることだが恐るべきポテンシャルだ。

 

ノクスと彼女が剣を交えているとそこにもう一人乱入する

 

目覚めよ(テンペスト)!!」

 

翡翠の風を纏い現れたのは先程まで食人花と交戦していたアイズだった。アイズは食人花を片付けてノクスの援護に回るのだった

 

「クッ........強いな........」

 

アイズとノクスのお互いの隙を埋めるような連携攻撃に彼女は一人で顔に忌々しげな表情を浮かべるも捌いていく。流石にこれには2人も驚く。

 

三人の剣士は一度距離を取り離れる。アイズもノクスにも表情に余裕はない。目の前にいる者を強敵としてみているからだ

 

「成程..........お前の風、お前が『アリア』か」

 

突如目の前の女はアイズを見て『アリア』と誰かの名前のような物を呟く。ノクスにはその意図がわからず訝し気にしていると隣に立つアイズが驚いたようにしているのを察する

 

(アイズの様子がおかしい?一体何が...........)

 

アイズは双眸を見開き、何故と声も発せられないほどの衝撃が襲っていた。何故と言う言葉がアイズの脳内を支配し、アイズの細いのどが驚愕に震えていると..............

 

 

『アアアアァァァァァァァァ!!!!』

 

「(何だっ!?)」

 

ノクスは敵の出方を窺っていると突如金切り音のような悲鳴が聞こえどこからとあたりを見回していると地面に転がっている宝玉の胎児が叫び始めたのだ。そして次の瞬間その胎児から触手が伸び、水晶の壁に埋まる食人花に二体に接触すると寄生(・・)した。

 

胎児は己を二分すると食人花に張り付きモンスターの体皮と同化していくとそのまま変化を起こす。

 

寄生された食人花に肉が隆起し、藻搔き苦しむように変化していく。それはまるで蛹から蝶に羽化するように人の体の輪郭らしきものがメキメキと体皮の下で起き上がろうとしていた。

 

『『-------オォッ!?』』

 

のたうち回るモンスターは変化の最中でありながら周囲に無差別に攻撃をしていく。ノクスとアイズはそれぞれレフィーヤとルルネを抱えその場を離脱する

 

「ええい、すべて台無しだ!」

 

殺しをした赤髪の女もまた盛大に舌打ちをしながらその場を離脱する。

 

胎児に寄生されたモンスター達はノクスとアイズに進撃していくさなか別の食人花モンスター達を発足すると容赦なく食らいついて共食いを始める。ノクスらは驚愕の表情を浮かべながらも距離を取り続けると何体ものモンスターは折り重なっていく。そして、4人の瞳にはモンスターの皮をかぶった女体の姿を捉える

 

 

(なんなんだアイツ!?)

 

 

ノクスは初めて見るそのモンスターに驚きを隠せないでいると丁度抱えているレフィーヤが呻くようにつぶやく

 

「あ、あれは50階層の............」

 

(は?50階層だ.....と?そんなのこんな中層にいていいもんじゃ........)

 

ノクスはそのつぶやきに戦慄を隠せずにいるのであった

 

 

************

 

 

ノクスは驚愕を隠せずにいるがなぜかすぐに頭が冷える。その冷えた頭で何が最善かを模索する。そして出た答えは................

 

「アイズ.........レフィーヤとその人を任せる。俺がもう一体を引き離すから、もう一体をアイズ達はフィンさん達と合流して倒してくれ」

 

ノクスはすぐにこちらにフィンたちが来ることを想定し、そう言うとすぐにレフィーヤを下ろす。

 

「だ、ダメですよノクス!一人は危険です!私も..........」

 

「ダメだ。レフィーヤを守りながら戦えるほどあれ相手に余裕はない。なら、もう一体をフィンさん達と合流して倒してから俺の方の援護に来るほうが確実だ。その間はアレをおさえておく.........いや、俺がアレを倒す」

 

レフィーヤは無謀だと思った。無数の触手に恐ろしい程の膂力もあるあのモンスター相手にいくらノクスと言えどかなり危険だ。

 

そんな話し合いをしていると...........

 

「無事か皆?」

 

フィンがリヴェリアやティオネ達を引き連れてやってきた

 

「うわぁ..........近くで見るとやっぱキモイ」

 

ティオナは二体の女体型モンスターを見て顔を歪めてそう感想を零す。それはティオネも同じようなものだった。

 

「フィンさん一体は頼めますか?」

 

先程同じようにフィンにもノクスは同じ提案をする

 

「もう一体は君が一人でやるというのか?」

 

「はい...........俺にやらせてください」

 

フィンは鋭い視線をノクスに向ける。まるでそれは覚悟が本当にあるのかと問いかけるように......

 

そしてノクスもそれを正面から受け止めて真剣な表情を全く崩さずに向き合う

 

「...........わかった。もう一体は君に任せる。こっちが終わったらそっちに行く。それでいいね?」

 

「はい。その前に俺が倒しておきますね?」

 

二人は不敵な笑みを交わすとノクスは...........

 

「【付呪(エンチャント)千の雷(サウザンド・ボルテクス)】!」

 

ノクスは白雷を身に纏うとわざとモンスターの眼につくようにその場を離れる。すると目論見通り魔法に反応した一体がノクスを追いかけていく。

 

「さて..............僕らもやろうか」

 

フィンはノクスを身をくると相対するべきてきっを見据える。それに習い、ティオネやティオナにアイズやリヴェリアも構える。

 

(ノクス.................)

 

「大丈夫レフィーヤ」

 

いまだにノクスが去ったほうを心配げに見つめるレフィーヤにアイズが声を掛ける

 

「アイズさん?」

 

「ノクスは...........悔しいけど私より強い。私じゃノクスには勝てない。だから大丈夫」

 

アイズは負けてることが本気で悔しそうにしながらノクスのことをそう評価した。実際アイズとノクスの模擬戦の戦績は五分五分かと言われればそうではない。7:3の割合でノクスが勝ち越しているのだ。理由はいろいろとあるがノクスのほうが狡猾だ。技術に加えフィン仕込みの戦術や観察眼もあり僅かな隙やアイズが思いつかないような策略を以って戦いを組み立てる。

 

「レフィーヤ!彼が心配と言うのなら今は戦え!お前が奴を助けるために勝つんだ!!」

 

「はい!!」

 

レフィーヤは顔を上げリヴェリアの隣に並び立つ。戦うために彼女は立つ。

 

そんなレフィーヤをアイズが見届けた瞬間――

 

ゾワッ!!

 

アイズは突如自分に向けられた殺気に反応すると凄まじい速度で斬り込む赤髪の女の剣を受け止める

 

「お前の相手は私だ............付き合ってもらうぞ」

 

「ッ..............!」

 

「アイズさん!?」

 

レフィーヤの呼び声はむなしくアイズはそのまま赤髪の女と斬り結びながらその場を離れていった

 

各々がそれぞれの戦場での戦いが今始まるのであった

 

 

*************

 

 

(ッ............ここまでくれば大丈夫だよな?)

 

ノクスは攻撃をかわしながら誰もいない場所にモンスターをひきつけると足を止める。

 

(相手の物量の多さは脅威だな..........)

 

ノクスが最も警戒しているのは無数の触手による数の暴力。パワー自体は躱せばいいのでどうとでもなるが一人でやる以上数はどうしても厄介だ

 

ここまで移動するのにアイズとの戦闘で習得した技がどれほど通用するか確認していた。そこからわかったのは躱すのは容易だが懐に入り込むには物量もあり雷単体では火力が足りないことが明白だった

 

(〝獄炎(アレ)〟.........使うしかないな)

 

ノクスは元々使う気でいた〝獄炎(アレ)〟の使用を決める。そんなノクスの脳裏をよぎるのはこの間の彼女の言葉

 

『心にある復讐心も何かも飲み込んで強くなればいいんです!それがノクスの理想の自分じゃないんですか?私に自分に打ち勝つ所見せてくださいよ!』

 

レフィーヤがノクスにぶつけたあの言葉

 

(あぁ............見せてやるさ)

 

「【付呪(エンチャント)獄炎(ヘルブレイズ)】ッ!」

 

ノクスの右の剣に黒い炎が纏われる。闇色の炎が展開さると同時にノクスの脳内にまたノクスを堕とすような声が響く

 

『殺せ』『憎め』『滅ぼせ』『復讐しろ』『怒れ』『狂え』『殺せ』『憎め』『滅ぼせ』『復讐しろ』『怒れ』『狂え』『殺せ』『憎め』『滅ぼせ』『復讐しろ』『怒れ』『狂え』『殺せ』『憎め』『滅ぼせ』『復讐しろ』『怒れ』『狂え』『殺せ』『殺せ』『殺せ』『殺せ』『殺せ』『殺せ』『殺せ』『殺せ』『殺せ』『殺せ』『殺せ』『殺せ』『殺せ』『殺せ』『殺せ』『殺せ』『殺せ』『殺せ』『殺せ』『殺せ』『殺せ』

 

 

〝『何もかも殺し尽くせ』〟

 

 

不快な言葉、ドス黒いものが溢れ続ける。

 

 

だけど.................

 

 

(それがどうした?俺は俺だ...........俺は俺のために〝お前(悪意)〟を使いこなす)

 

 

すると、聞こえてきた不快な言葉は消え去り思考がクリアになる。

 

目の前にいるのは自分を殺そうとする敵と先を行く理想の自分

 

「さぁ............戦闘を開始しよう」

 

左に白雷、右に獄炎..............白と黒の輝きを放つ彼は挑戦する

 

 

 

 

 

 

 

「オラァッ!!」

 

ノクスは木々を足場に駆け巡りながら触手を回避しては接近を試みるを何度も繰り返す。その都度何度か触手を斬り落とすも無限にノクスへと襲い掛かっていく。そのためノクスがいくら最速で接近しようとしても中々懐に入り込めない

 

(チッ!.........獄炎は効いてるけど本体に通らな意味がないな)

 

ノクスの獄炎は燃えついたものを灰になるまで焼き尽くす。だが、それは触手を切り離してしまえば本体には届かない為届くまで待つのは無為に時間が過ぎるだけだ。

 

ノクスは回避しながらも思考を巡らす。確かに時間稼ぎをすれば十分なのかもしれない。だが...........

 

(そんなの俺じゃない......倒す手は............ある!)

 

ノクスは考えながら戦うが既に手は思いついていた。元より、物量のある相手に一人で挑み、至近距離から攻撃するなんていくら何でも不可能に近い。ならば自ずと方針は定まる

 

(一撃必殺..............圧倒的火力で焼き払うまでだ)

 

そう、一刀を以ってこの戦いに決着をつけるほかない。そしてノクスには恐らくそれが可能だ

 

ノクスは回避をやめると一旦距離を取ると左の剣を鞘に戻す。そして、左手を獄炎を纏う剣に沿わせるように掲げる

 

(集中しろ..........全神経を研ぎ澄ませ)

 

ノクスは目を瞑ると視覚以外の全てに意識を巡らせる。それに伴い獄炎も熱量が自然と高まっていく。

 

 

周囲が高まる熱量によって木々が焼け、大地も焼けていく

 

 

モンスターも高まる熱量にたじろぐ様にするがノクスの高まる魔力に攻撃を殺到させる

 

目を瞑った状態でノクスは嗅覚、聴覚や気配察知によってひらりひらりと激流の如く放たれる攻撃を枯葉が舞うように躱していく

 

(集中...........集中しろ..........)

 

ノクスの意識に比例して獄炎も何もかも全てが研ぎ澄まされていく

 

(イメージするは大剣...........大地を分かち、海を裂き、天を焼く........そんな獄炎の大剣)

 

ノクスが攻撃を躱し続けると突如ぴたりと立ち止まるとまるで騎士が誓いを立てるように両手で剣を握ると頭上に掲げる。今まで練り込まれた魔力を一気に獄炎に変え解放する

 

『----------------------ッ!?』

 

ノクスを見てモンスターは声にならない雄叫びを上げる

 

何故なら、モンスターの体躯を優に超える獄炎の柱をノクスが聳え立たせているからだ

 

この階層にいるすべての冒険者もまたその異様な光景に目をひかれる。天井の水晶にすら届きうるのではないかと思わされるそれに一部のものは慄き、恐れる。また一部のものはだれの手によるものか察し頼もしく感じる

 

 

そして〝彼女〟は頼もしく........それでいて嬉しくて誇らしくもあった

 

 

モンスターはノクスを最大の敵とみなし夥しい程の触手を地中から生やすとそれを一斉にノクスへ向け放たれる

 

ここでノクスはようやく目を開く

 

目に入るのは無数に伸びる触手、そして..................

 

自分がモンスターを打倒す〝未来〟だけだった

 

 

「ハアァァァァァァッ!!!!!!!」

 

 

裂帛の気合い

 

ノクスが力強く踏み込む

 

その踏み込む衝撃はまるで階層全体に轟くようだった

 

そして、遂に必殺の一撃は振るわれる

 

 

〝〝ドガッアアァァァァァァァランン!!!!!!〟〟

 

 

まるで大きな雷が落ちたようなその階層にいるすべての者の耳を劈くほどの轟音が鳴り響く。振り下ろされた斬撃はまるでクロッゾの魔剣にも劣らない...........いや、それを上回る一撃だった。斬撃と共に極太の光線が放たれ、斬撃上の全てを焼き払うノクスの必殺の一振りだ。

 

当然、そんな一撃を放たれたモンスター悲鳴すら上げられずにノクスによって伸ばした触手もろとも塵すら残らずに完全に焼き払われた。

 

その結果ノクスの目の前に広がるのは焼き焦げた大地のみ

 

「これはちょっとやりすぎちゃったかな?」

 

そう苦笑いを浮かべながら、精神力(マインド)を一気に大量に消費した疲労から座り込む

 

「.........って刀身溶けてるじゃん」

 

ノクスの右手には柄しか残ってのない剣だったものが残されていた。剣には無理をさせて申し訳ないという思いが溢れる

 

(戻ったら不壊属性(デュランダル)の双剣作ってもらわないとなぁ............)

 

ノクスはそんなことを考えながらひとまず疲れたし、少しこの場で休んでいくことに決めるのであった

 

 

 






今回はここまでです。アニメとは勝手に都合よく変えていますがノクスの見せ場と言うことで一つお願いいたします。一応次回でソードオラトリア4~6話当たりの内容を得る予定です。7話以降の話に入る前にノクスの新しい剣とそれに付随したあるヒロインとの回を書く予定ですので楽しみにしていただけると嬉しいです。

それでは今回ここまで読んでくださりありがとうございます!お気に入り登録、コメント、評価をしてくださり本当にありがとうございます!

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