「ここが自分たちのホームです」
ノクスはフィンと世間話をしながら案内をして我が家まで帰ってきた
「いい場所に建てたね。それによく丁寧に世話をされた庭だ」
ノクスとアルテミスが元々森暮らしと言うこともあり丹精込めて育てた花草がありそれを見てフィンはそう感想をこぼす。
「ありがとうございます。元々森暮らしだった影響でこう植物がないと無性に落ち着かないんです」
「そうなのか.........確か君がオラリオに来たのは4年前だったね」
「はい.....最初は何もわからないうえ暗黒期が終わったばかりで住む場所の確保とかもかなり苦労しましたよ。ホントフィンさんがいなかったらどうなってたことか」
当時は色々とあったためゆとりもなく大変だったことを覚えてる。そんな当時フィンさんが色々としてくれたことなどは今でも忘れられない。オラリオの知識や冒険者としての心構えなどを教えてくれたからこそここまでやってこれた。
思えば一番オラリオに来てから付き合いが長いのはフィンだった。二番目はエイナでその次にミアさん達豊穣の女主人の店員らだったか?そのためノクスにとってフィンはまる兄の用でもあり父のようにすら感じた
「あの時のノクスと言えばアイズ並に張り詰めてて危うくすらあったね.......それが今じゃこんなにも頼もしくなった。一人の友人として嬉しいよ」
そしてフィンはノクスにとって初めての同性の友人ともいえる存在でもある
「色々ありましたからね.............おっと昔話はここまでにして上がってください」
ノクスはレフィーヤのように過去のことを話したわけでもない。だがフィンは何も聞かずにノクスを導いた。だからこそノクスはフィンの心の広さやその
そんな昔話はここまでに二人はホームに上がるのであった
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「初めまして神アルテミス。僕はロキ・ファミリア団長フィン・ディナムです。今日は少しお話したいことがあり来ました」
ノクスはフィンを上げると居間に通すと台所でお茶の準備をしている。その間にフィンはノクスの主神であるアルテミスに自己紹介をしていた
「丁寧にありがとう。話はよくノクスから聞いている。私の
二人はそう挨拶を交わしてると
「お待たせしました紅茶と茶菓子です」
ノクスはお盆に三つのティーカップと茶菓子が入った箱をテーブルに乗せるとアルテミス側に座った
「ありがとうノクス...............うん、いい香りだ。聞いてはいたが本当に家事が得意なんだね?」
「必要なことでしたから。それに結構楽しいんですよ料理とか」
フィンは出された紅茶の香りをかぐと一口飲み「美味しいね....ウチで雇いたいくらいだ」とそう感想を言うと真剣な表情になって話を切り出す
「さて、僕のお話と言うのはですね、ノクス..........君に次の僕らの遠征に参加してほしいんだ」
「遠征ですか?」
「そうだ。これは元々考えていたことでもあったんだけどこの間のアイズとの模擬戦とある件があって君を勧誘することにしたんだ」
「ある件とはなんなのだ?」
そう問いかけるのはアルテミスだ。アルテミスも真剣な表情で答えを待つ。
「その前にですが.......ノクス。君はレフィーヤ達と花のモンスターとこの間戦ったよね?」
「はい。なんか珍しく堅くて驚きましたけどアレって新種ですか?」
「あぁ。恐らくはそれで間違いない。ただ問題は深層でそれに似たモンスターが大量発生していたことなんだ」
「もしかして前回予定より早く帰ってきたのって...........」
「あぁ、そのモンスターが原因だ。そのモンスターの体液は言ってしまえば溶解液のようなものでね。そのせいでアイズの剣のように
フィンのその説明を聞きなんて厄介なモンスターだと感想を抱く。自分ならばどう攻略するか思考を巡らしていると.............
「だから僕たちは今回ヘファイストス・ファミリアの鍛冶師に頼み込み
フィンはそのまま真剣な表情を崩さず続ける
「僕らが目指すのは未開拓領域だ。その上新種のモンスターも出てくるといった豪華特典までついてくる。以前までの遠征よりも危険度は跳ね上がる。だから断られても仕方ないと僕は考えている。それを承知でどうか僕らに手を貸してはくれないだろうか?」
フィンは最後までそう言い切ると頭を下げる。
彼は敢えて新種のことを含めてノクスとアルテミスに説明した。勿論それは当然なのかもしれない。だが、ファミリアを守るために他者の協力を得るためにあえて隠す手もあったはずだ。それでも正直に話す清廉な彼だからこそノクスは本当に尊敬しているのだ
(俺個人としては危険を度外視にしてもまだ見ぬ地を見てみたいという思いがある..........でも、アルテミスを一人にするのは..........)
ノクスは内心挑戦したいという思いがあった。だが、彼には何よりも守るべき家族がいる。おいそれと危険な所に行くのは彼女を悲しませてしまうのではとどうしても考えてしまう。
そんなことを悩んでいると............
「顔を上げてくれフィン..........そしてノクスはどうしたい?」
アルテミスはフィンに顔を上げさせると今度はノクスに向き直りそう問いかける
「どうって.........俺は..........」
ノクスはまだ答えが出ていなかった。ここで断ることも受け入れることもきっと正解でもあり間違いでもあるのだろう。
「ふふふ............行きたいのだろう?わかっているさ。なら何を悩む必要がある?ノクスが思う様にすればいい。私はノクスを縛るようなことはしたくない」
「アルテミス............」
「ちゃんと生きて私の下に帰ってきてくれればそれ以上何も望むまい。勿論怪我をして帰ってきたら罰は受けてもらうぞ?」
最後は祭りの時の用に揶揄うような笑みを浮かべてそう言った。彼女は自分の背中をやさしく押してくれた。俺が何に悩んでるかさえ本当は全部わかり切ってるのだろう。そして俺がいきたいことも――
ならもう迷う必要はない。答えは得た
「フィンさん。その話受けさせてください。俺も〝冒険〟がしたい!」
そうだ...........冒険がしたい。
本当にそれだけだった..........
もしほかに未開拓領域に望むことがあるとすれば...................
〝強くなりたい〟
こうして俺ノクスは初の遠征に出ることが決まった。時期や詳細は今後詰めることにし、取り合えず今日から一週間ダンジョンにこもることも無事許可を貰えた
何せ
そのままノクスは一週間籠ることを想定した荷物に整理しなおしアルテミスに頑張ってくると伝えダンジョンに向かうのであった
「一週間か...........それに遠征に行くとなると寂しくなるな」
一人になった家でアルテミスはそうつぶやいた。
今までノクスは日帰りで帰ることしかしなかったためこれほど長い時間一人で過ごすというのはいつぶりだろうか
「全く............これは今度でーとしてもらわないとな。それに今日も新しい女の匂いがしたしな」
そんなことを言うアルテミスの表情は寂しそうではあるものの彼の成長を喜ぶ母親のように子を慈しむ優しさを称えた微笑みを浮かべていた
それに加え瞳には嫉妬のような色もうかがえる彼女
彼女もやはりノクスをただ子としてだけでなく一人の男性として............
****************
「やあああぁぁぁぁ!!!!!」
あれからノクス達はリヴェリア達に合流するとダンジョンで何度目かの戦闘を終えていた
「う~ん..........
「この階層じゃねぇ」
このメンバーの中でも特に戦闘狂の一人であるティオナは暴れたりなさそうにそう呟く。そしてティオネの言う通りこのメンバーではこの階層程度では準備運動にすらならない
「どうするフィン?このまま19階層までもぐる?」
「う~ん............一休みしていこう。ドロップアイテムの換金もあるしね」
そうして方針を決めると一同は魔石などを拾い終えると移動を開始した
「ノクス、団長と何を話してたんですか?」
移動を開始すると隣にいるレフィーヤが話しかけてきた
「ん?フィンさんに聞いてないのか?次の遠征俺も来てくれないかって話をしてたんだよ」
「え!ノクスが次の遠征に参加するんですか?」
「あぁ、そうだぞ。俺は初めての遠征だからその時はよろしくな.............レフィーヤ
ノクスがからかうように言うと..........
「も、もう!揶揄わないでください!////でも、ノクスが来てくれるなら心強いです」
口ではそう言ってるが先輩と言われたのがどこか嬉しそうにも見えるレフィーヤに微笑ましい気持ちになる
「頼りにしてくれるのは嬉しいかな。ご期待に沿えるよう努めさせてもらおうかな」
「あっ、そう言えばノクスの最高到達階層ってどれくらいなんですか?」
ふとレフィーヤは思い出したかのように問いかける
「一応45階層くらいまでは言ったことあるけどソロで行ける安全ラインは37階層までだったな。モンスターの強さだけならさほど問題はないんだけど罠とか出現スピードとかやっぱ下に行くほどソロだとどうしても対処が苦しくなるんだよね」
「ならパーティーは組まないんですか?」
「組むのは偶にダンジョンでアイズとかフィンさん達とかに会った時くらいかな?一人しかいないファミリアってのはそれだけで変な噂が立つものだから避けられてあまり組んでくれるやつがいないんだ」
「そんな.............何も知りもしないでそんなの酷すぎます!」
悲しそうな表情を浮かべそう言い切るレフィーヤ。優しい彼女だからこそ本心からの発言だった
「あははは..........ホント、レフィーヤは優しいな。まぁ、それがレフィーヤの魅力ではあるんだけど.........でもなレフィーヤ、誰も彼も自分の命ってのが大切なんだ。だから別に俺は仕方ないとしか思ってないからそんな悲しそうにするな」
「で、でも...............」
どうやらまだ納得しかねる様だった
「ならあれだ.........近しい人間が知っていてくれればそれでいいさ............例えば、レフィーヤとかな?」
そうノクスが満足そうに微笑むからなんだか毒気が抜かれてしまった
「むぅ..........なんかずるいです」
「よくわからないけど.........まぁ、俺のために悲しんでくれてありがとうな」
(..........そんな風に笑いかけないでくださいよ.........ホントずるいです......馬鹿////)
ノクスが嬉しそうに笑いながら感謝するせいでレフィーヤは無性に恥ずかしくなってしまう
そんな他愛ない会話をしているとノクス達は冒険者の街リヴェラの街のある18階層に辿り着いた
リヴェラの街―――
ダンジョンの安全地帯である18階層に存在する冒険者たちが独自に作った街。アイテムの販売や戦利品が法外な価格で取引されるが、それでも持ちきれないアイテムの換金や非常事態に仕方なく立ち寄るなど利用者は多い。
「買取所に魔石やアイテムを引き取ってもらうとして、あとは...........」
「宿はどうするの?いつもみたいに森で野宿する?」
「ん~..........今回くらいは街の宿を使おう。野営の装備はあまり持ってきていないからね」
「でも団長.........ここはリヴェラですよ?一週間も寝泊まりするとなると結構な金額になりますよ」
ここは冒険者が切り盛りすることや危険なダンジョン内にある事による需要の高さから地上の相場から3倍から4倍の値段を取られるためよほどのことがないと泊まるものは少ない
「いいよ宿代は僕が全部出すよ。アイズ達はお金を貯めなきゃいけないみたいだしね」
「なら俺も半分出しますよ。今日誘ってもらったお礼と言うことで」
「.........ごめんフィン、ノクス」
するとアイズは申し訳なさそうに謝罪する。そんな二人は「気にしなくていいよ」とそう告げる
そのまま一行は歩いているとふと突然リヴェリアが足を止める
「どうしたのリヴェリア?」
そんなリヴェリアにアイズは問いかける
「........妙だな。街の雰囲気が少しおかしいな」
「妙ですか?..........でも確かに人数が少ない気がしますね」
リヴェリアが周りを見回しながらそう言うのに習いノクスも見回すと明らかに人数の少なさが目立つ。ここまで人気が少ないのは流石に変だ
「フィンさん。取り合えず誰かに聞いてみませんか?これだけ狭い町なら誰が知っていてもおかしくはないと思います」
「そうだね.............早速そこの店にでも......」
すぐそこの店に入ろうとしていると
「ったく.........なんたってこんなことに」
そう一人の男が愚痴りながら丁度聞き込みをしようとしていた店から出てきた。その男のことはここにいる皆が顔を知った者だった
「ボールス!」
彼はこの町の顔役であるためあまり利用する機会のないノクスですら知った顔だった
「ん?げっ!ロキ・ファミリアに
「ボールスさん何かあったんですか?」
ノクスがそう問いかけると心底不愉快そうな表情を浮かべこたえる
「殺しだよ............ヴェリーの宿だ」
*******
「関わってくれなんて言ってないぞ」
「この街で宿をとるんだ。無関係ではいられないだろ?」
ノクス達はボールスについていき事件現場まで来ていた。宿の周囲には多くの野次馬がおり街に人気が無いのもうなずける
宿の中を歩いて少しするとボールスは立ち止まり部屋の暖簾を開けると奥には.............
「ッ.....!レフィーヤは見ないほうがいい」
「え............?」
ノクスは死体を見た瞬間刺激が強すぎるとレフィーヤの視界を塞ぐようにして下がらせる
ノクスの眼に入ったのは真っ赤に染まり無残に横たわる男の亡骸..........
その頭部は潰されたようにされており、惨たらしい惨状だった
(これじゃあ身元の特定は難しいな..........)
「ボールスさん身元はともかくとして犯人候補とかはわからないんですか?」
フィンが死体を検分してる中ノクスは犯人の心当たりについて尋ねる
「ヴェリーの話じゃこいつと一緒に宿を使った女だろうな............だが、ローブをかぶっていた上に宿を貸し切りにしていたから女の顔はわからねぇ」
「貸し切りに...........あぁ、そう言うやつか」
(だとしたら痴情のもつれってのが一般的だが...........それにしては過激すぎるよな?それに荷物があらされてるから恐らく何か目的のものを狙われたってところか?)
ノクスはレフィーヤを下がらせた位置から部屋一体を軽く一瞥するとそう推理していく。恐らくはフィンさんも同じことを考えているだろう。
他にも聞いたところ何でもこの死んだ男は全身を
だが、この状態でも身元の特定は不可能に近いだけであり可能ではある
「それでボールスさんは〝ソレ〟で身元確認を取るつもりですか?」
ノクスはボールスの胸のポケットの膨らみに視線を向け問いかける
「気づいてやがったのか.......そうだよコレを取りに行ってたんだよ」
ボールスが取り出したものは『
緊急事態なため役に立つとはいえいささか行儀のいいものではない。そんな手段にリヴェリアが眉間にしわを寄せる
「死者を冒涜する真似は感心しないな」
「言ってる場合かよ」
確かに非常時だ。彼の言う事もまた正しいが普通の眼からすればいいものには映らないだろう。
「.........これをこうして...............って、いけねぇ........
ボークスは手順通りに
「............私は読めるぞ」
「私も」
リヴェリアとアイズの二人は読めると名乗り出た。ノクスも少しは勉強してみたが難しすぎて諦めている過去がある。だから二人が読めるというのに関心していると............
「名前はハシャーナ・ドルリア。所属は【ガネーシャ・ファミリア】」
リヴェリアの言葉に場が静まり返る。ガネーシャ・ファミリアと言えばオラリオ内で自警団のような立ち位置でありそれに伴いファミリア全体の強さもロキ・ファミリアやあのフレイヤ・ファミリアにだってそう劣りはしない武闘派でもある
だが、それ以上に重くの強いかかるのは..............
「リヴェリアさん彼........
「そ、そうだ!【
冒険者の情報をよく調べるノクスそして街の顔役であるボールスらは名前から二つ名とレベルの情報を脳内から引っ張り出す。ノクスの問いにリヴェリアは静かに首肯すると先の比でないくらいに空気が重くなる
仕方ないだろうレベル4がこうもあっさり殺されたとなれば殺しをした相手は相当な手練れと容易に予測されるからだ
「犯人は女.........目的は荷物が荒らされていることからハシャーナが持っていた何らかの物品............フィンさん死因って顔を潰されたことじゃないですよね?」
「そうだ。どうやら首を折られた後に顔を潰されている...........もしかしてノクスもまだこの街にいると言いたいのかな?」
「やっぱりフィンさんも同じ考えでしたか.............恐らくは目的のものがなかったから変装のために男の顔の皮を奪ったのでしょう。じゃなきゃわざわざ殺しを終えた後に顔を潰す理由がない。それに
フィンとノクスはお互いに現状から導かれる犯人の犯行とその後の足取りについて考察をまとめていた
「そうだね.........女性がやったことは受付で見ていた者もいるしすぐわかるからね。男性のなりのほうが動きやすいだろうから恐らくはノクスの推論通りだろう。だとすればまだ犯人がこの階層にいる以上この階層を封鎖するのがいいね」
「ただ、問題はどうやってその犯人を見つけ出すかですね..........」
「あぁ。下手に刺激を加えて暴れられては困るからね」
そんな二人の議論をある人物は尊敬をある人物はその二人の思考力に呆れたりとそれぞれの反応を見せる
ある意味師匠と弟子のような二人の前にこの事件がどう転ぶか............
この事件の解決は恐らくそう時間はかからないだろうとこの場にいる者たちは考えるのであった