ノクスはアルテミスと別れてから雷を足に纏って建物を蹴り高速で移動しながらモンスターを見つけ次第斬り続けて移動していた
「(アレは手古摺ってるな......)フッ!」
ノクスはスピードを殺さずに、ガネーシャ・ファミリアの冒険者が対応していたモンスターの前に躊躇なく躍り出ると速攻で斬り捨てる
「ギャンッ!?」
「ガルッン!?」
倒したのを確認すると足元に落ちた魔石を回収した
「これだけ倒せば《
ノクスは今まで倒したモンスターから回収した魔石を数個代償にし索敵魔法を獲得すると広範囲を索敵魔法でモンスターの正確な数と位置を把握すると...............
(なんだこのモンスター.........地下にいるのか?それに感知したことないタイプだな.......)
ノクスは少し離れた場所に高速で移動する冒険者一人と三人の冒険者、そして数体の今までに見たことのない種類のものと思われるモンスターを索敵する
ノクスとて冒険者歴はそこそこある。その為、見たことがないモンスターや知識にないモンスターがいるほうが珍しい。
(近くに冒険者がいるみたいだけど嫌な予感するし.........行くか.......)
ノクスは勘に従いそのモンスターがいるほうへ足を向ける
************
「これなら私たちいらないね~」
ノクスとは別の場所でロキ・ファミリであるティオナ、ティオネ、レフィーヤもまた脱走したモンスターを追い町中を走り回っていた。
そしてもう1人.................
「今日はアイズに任してよさそうね~」
アイズもまた風を纏い街に逃げだしたモンスターを倒し続けながらすさまじい速さで移動していた
「そうですね私たち武器も持ってきてませんし」
レフィーヤもまたアイズの戦いぶりを見てこの様子ならば何も問題ないだろうと考えていた
だが........................
(あれ?地面が揺れて...........)
レフィーヤが地面が揺れたと思った瞬間
〝ドガンッ!〟
『ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』
周囲の人々の悲鳴と石畳を砕き割る音とともに地中から現れたのは蛇のような巨大なモンスターだった
ティオナたちは同時にこのモンスターの危険性を長年の経験から察知する
「ティオネこいつヤバいよ!」
「えぇ、レフィーヤ!貴方は詠唱しなさい!ティオナは私と奴の注意をひきつけるわよ!」
ティオネはすぐにティオナとレフィーヤに指示を出し淡い黄色の顔のない蛇のようなモンスターと相対する
そして、ティオネが指示を出し終えたと同時に眼前のモンスターはその長大な図体を鞭のようにしならせ襲い掛かる
「!!」
力任せなその攻撃を二人は流石の体捌きで回避するとそのまま死角となるところから拳と蹴りを叩き込む
「ッ!?」
「かったぁー!?」
皮膚を打撃した瞬間、彼女たちは驚愕を共にした。第一級冒険者である彼女たち二人の一撃は並のモンスターならばそれだけで体を吹き飛ばしてしまうほどの威力にも拘らず貫通も撃砕もできなかった。凄まじい高度を誇る体皮が僅かにに陥没した程度で逆に彼女たちの手足にダメージを受けていた。
『----------------------------』
ティオナ達の攻撃にもだえ苦しむそぶりを見せたモンスターは怒りを表すように苛烈に攻め立てる。氾濫した川の激流の如く勢いで体を蛇行させ押し潰す、或いは蹴散らそうとする。
2人はそれを危なげなく躱すと、敵の至る場所に何度も拳打を見舞う
「打撃じゃ埒が明かない!」
「あ~武器用意してくればよかったー!」
2人は舌打ちと愚痴を漏らしながら蛇型のモンスターとの戦闘を続行する。モンスターの暴れ狂うような攻撃はひとたまりもない程の威力だが彼女たちが躱すのに造作もない。だが、お互い決め手はなく状況が停滞する。そんな中、ティオネの指示を受けたレフィーヤが彼女たちの稼いだ時間を受け取り詠唱を開始する。
「【解き放つ一条の光、聖木の弓幹。汝、弓の名手なり】」
魔法効果を高める杖のない彼女は片腕を突き出し謳う。速度に重きを置き、出力を控えた短文詠唱。そのため高速戦闘にも十分対応が可能だ。その上さらにモンスターはティオナたちへの攻撃にかかりきりなため余裕をもって狙撃することが可能だ。山吹色の
「【狙撃せよ、妖精の射手。穿て、必中の矢】!」
最後まで唱え終え、解放を前にした魔力が高まるその時
「.........え?」
ぐるんっとモンスターが体を捻り、突如としてレフィーヤを見据えた。モンスターの異常な反応スピードにレフィーヤはまるで心臓を鷲掴みされたように錯覚し、悪寒とともに体を震わせる。
今の今まで興味すら向けてこなかったモンスターが『魔力』に反応したとレフィーヤは直感で感じ取った瞬間、レフィーヤを貫かんと突如地中からレフィーヤの腕程の太さのある
レフィーヤは襲い来るであろう衝撃と痛みに怯え目を瞑る
だが――
「間に合えッ.......!!!」
「キャッ!?」
痛みの代わりに急激に体を引っ張られるような感覚を覚える
目を開けるとレフィーヤは突如現れた少年にお姫様抱っこされていた
そしてその少年は..................
「無事か?レフィーヤ?」
「ノクス...........?」
レフィーヤの窮地を救ったのはノクスだった
****************
「ノクス!」
「
突如現れたノクスにティオナ達は驚愕とレフィーヤが無事だったことに安堵する
だが――
「ッ!二人とも後ろに飛んで!!」
ノクスは呼ばれたほうに振り向くと同時に鋭く二人に回避を指示する
「「ッ!!」」
2人がすぐさま飛んだ瞬間二人が立っていた場所に蛇型のモンスターから伸びでた触手が振り下ろされる
「何これ!?触手!?」
「気持ち悪い~~~!」
眼前にいる蛇型のモンスターからうねうねと気持ち悪く動く触手のようなものが伸びていた
回避行動をしたティオナ達とは別にノクスはレフィーヤを抱えてそのまま離れた場所に移動してレフィーヤを地面に下す
「悪いな突然抱えて」
「い、いいえ!その、助けてくれてありがとうございます//////////」
レフィーヤはリンゴのように顔を赤くしてそう言うためノクスはどこか怪我をさせてしまったか不安になる
「?.....顔が赤いけどやっぱり怪我とかしてないよな?」
「ッ!///////だ、大丈夫です!怪我なんてしてません!」
レフィーヤは指摘されたことが恥ずかしく大声を出して誤魔化す
「うおっ!大きな声出してどうした?........本当に大丈夫なんだよな?」
「あっ、すいません。本当に大丈夫ですから心配しないでください」
「ならいいけど.............俺はアイツの気を引くからレフィーヤは詠唱できるか?」
「そ、それは...........」
「?」
ノクスは先程どうしてレフィーヤが狙われたかわからない為ノクスはレフィーヤに魔法攻撃を提案するが何かに怯えたようにするレフィーヤに疑問を浮かべていると..........
「ノクス!こいつ魔力に反応するの!だから魔法は危険よ!」
ティオネがすぐに状況をまだ知らないノクスに助言を飛ばす
「何!?........もしかしてレフィーヤが攻撃されたのは......」
「はい、魔法を打とうとしたら急に狙われて........」
「そうか.........分かった。俺が倒してくるからレフィーヤは離れてて」
返事を待たずノクスはすぐにモンスターに向かって駆けだしていった
「............」
レフィーヤの頭の中を支配すのは二つのものだった
一つは............
『無事か?レフィーヤ?』
「ッ~~~~////////////」
真剣な表情と本気で自分のことを心配した彼の声が脳内で再生され思い出しただけで顔が酷く熱くなるのだ。そして何より彼がまた自分のことをお姫様抱っこで救い出してくれたことだった。あの時とは状況が全く違うせいでまるで自分が本当にお姫様になったように錯覚して嬉しいような恥ずかしいようなそんな感情が溢れてきていた
(凄くかっこよかったな.........../////)
頬を赤く染めノクスを見つめる彼女はまさしく恋する乙女のそれだった
だが、その反面もう一つ彼女の頭を占める物それは.............
(また守られた...........)
嘗ての遠征もモンスターに狙われて詠唱を途中で止めてしまった時アイズに助けられた時のことを思い出して自身の無力さに打ちひしがれる。
相性が悪い................そう言ってしまえば終わるのかもしれない。だが、本当にそれだけなのだろうか。少なくともレフィーヤが心から尊敬するリヴェリアならこんな無様な姿はさらさなかったのは確かだろう。
(私は............)
*******
ノクスはレフィーヤを安全な場所に下すとすぐに加勢する
「ティオネ!ティオナ!武器のある俺が本体をやる!鬱陶しい触手の方を頼む」
「わかったわ!奴の皮膚凄く堅いから気を付けて!」
短く言葉を交わすとノクスは一直線に突っ込んでいく。するとノクスのことを認識した無数の触手を伸ばし、ノクスを叩き潰さんと襲い掛かる
「やあぁぁッ!!!」
「てえぇぇやあぁぁぁッ!!!」
ティオネとティオナが作戦通り叩き落していく。だが全てを対処できず三本ほどノクスに襲い掛かる
「シッ!フッ!セァッ!」
ノクスは軽やかにに躱しつつ、斬り落とし一気に距離を詰める
これでモンスターの触手ははなくなった.............そう思った瞬間だった
「ノクス!!」
新たな無数の触手がノクスの周囲を囲うように地面から凄まじい速度でノクスを貫こうと伸びでる
ティオネがノクスの名を叫ぶ。一同はノクスが貫かれる姿を幻視して拙いと思う。
だが――
〝ドサッ、ドサッ、ドサッ!〟
ノクスの姿はそこにはすでになく、ノクスがいた場所には斬り落とされた触手の残骸とその綺麗に斬り落とされ急に目的を失い戸惑う触手だけ
ノクスはどこにと一同は見回すと............
「【
白雷を纏わせた剣を掲げるノクスがモンスターの頭上を取っていた
周囲を囲まれたノクスはあの一瞬で触手を全て斬り落とすとすぐさま一気に上空に跳躍していたのだ
ノクスの魔法に反応したモンスターは上空のノクスに対しまた新たに触手を伸ばす
ノクスは襲い来る触手を逆に足場として一気に本体へ距離を詰める
そしてついに0距離となり...............
「ぶった斬るッ!!」
両手で握った剣を兜割りの如く本体に叩き込む
雷を纏った剣は凄まじい切断力があるにも拘らず、普段以上の固い手応えを感じながらも蛇型の魔物を真っ二つにノクスは切り裂く
ノクスは勢いのまま着地すと同時にモンスターもその体を塵として魔石を落として消え去った
「これで終わり.........まて、まだいるはず.........」
ノクスがここに来る前に感知した時には数体いた筈。ならば他の奴は...........
ノクスがそう考えた瞬間..........
「ッ!下かッ!」
ノクスが気配を察知しすぐにバックステップで大きく後ろに下がるとノクスが立っていたところから先程と同じモンスターが三体新たに出現した
その場にいたティオネ達や避難誘導するギルド職員たちはまた現れたモンスターに驚愕する
だが、さらに衝撃的なのは............
「アイツ、蛇じゃなくて〝花〟かよ!?」
ノクスの驚いた声の通り、先程まで顔のような部分に目や口などの器官がないため顔のない蛇型のモンスターとばかり思っていたがその部分が突如咲き誇るように開き食虫植物のような見た目になる
「どうする?ノクス」
ティオネの問いかけにノクスは黙考する
(強さ的に言えば一人一体でも対処は可能だろう........だが、確実ではない)
ノクスはチラりと避難中の市民のほうを見る。完全に避難しきれていない以上同時に倒すのが万が一の場合を考えれば確実だ。
(手はある..............だが............)
ほんの僅かな時間ノクスは黙り込み考える。そして――
「............レフィーヤ詠唱いけるか?」
「え?」
ノクスが選択した手はレフィーヤの魔法で一度に三体同時に沈めることだった
「俺が魔法を使い続けて囮になって時間を稼ぐ。ティオネ達俺の援護に徹してほしい」
「で、でも................」
この作戦はノクスが囮になるというものの二人のものが同時に魔法を使った場合どちらを敵が狙うかわからない以上レフィーヤとノクスのリスクは同等...........いや、触手を一人でも捌くことのできるノクスの技量を考えればレフィーヤのほうが狙われれば危険度は高い
「レフィーヤが狙われるリスクも当然ある。ただ、避難が済んでいない以上レフィーヤの魔法で同時に倒すのが最善手だと思う」
ノクスは真剣な表情で頼み込む。ノクスもがやることも不可能ではないが威力の制御が効かない《付加魔法》を使わなくてはいけない為、下手を打てばモンスターを倒せたとしても自分以外の人間を消し炭にしかねない。その為できるのであればレフィーヤにやってもらいたい。
「レフィーヤが恐怖を感じるのも無理はない。それに次善の策も既に考えてある。レフィーヤが嫌ならそれでもかまわない。だけどできれば俺を信じて欲しい。俺がレフィーヤに傷一つつけさせやしない。レフィーヤを必ず守ると誓う。だから.........頼む!」
(私を必要としてくれている........でも..........)
彼はもう一つ策があるという。それをしないで私に頼むということはリスクが大きいのかもしれない。だがきっと彼なら最後にはどうにかしてくれるというどこか不思議な確信があった。ならば流されてしまってもいいのかもしれない。
だけど......................
〝本当にそれでいいのか?〟
レフィーヤは本当にこのままでいいのかと自分に問いかける
自分が憬れた
目を瞑り、心に問いかける
『俺がレフィーヤに傷一つつけさせやしない。レフィーヤを必ず守ると誓う。』
彼の言葉を思い出す。彼なら確かに信用できるだから......................
(違う!ダメだ..........そうじゃない!ただ守られるだけじゃダメなんだ!私が...........今度は私がやるんだ!)
あって間もない彼の言葉に私は無条件に信用ができた。だからきっと守ってくれる。だから私は魔法を撃つ。
........でも、そんなの今までと同じ。何も変わってない。
(守ってもらえるからじゃない!
レフィーヤは目を見開くと決意の籠った瞳をしていた
「やります!
恐怖もある
........でも、いつまでもただ守られるだけの存在でいるわけにはいかない
「わかった。ありがとうレフィーヤ............行くよ!」
ノクス達は行動をすぐに開始する
ノクスがいち早く前に飛び出るとモンスターは敵対者と認識して攻撃を仕掛ける
「フッ........」
ノクスはその初撃を危なげなく躱すと短く詠唱する
「【
ノクスを雷が包み込むとすぐにモンスターたちはすさまじい反応を見せ、すべての触手をノクスに向け放つ。
(数多ッ!?)
ノクスは内心想定よりも多くの触手が襲い来る事に僅かに驚くも作戦通りなため回避する
無数の触手が叩き潰すように、或いは貫こうと滅茶苦茶にノクスに向け放たれ続ける
「そりゃあぁ!!」
「てぇりゃあぁ!!」
ノクスが剣で斬り落とし防いでる途中にノクスの死角から伸びる触手をティオナとティオネが叩き落す
「助かる二人とも」
「どーいたしまして」
「次来るわよ!!」
途中から割って入ってきたティオナ達にも触手の猛攻が襲い来ると同時にノクスにもティオナ達以上の数の触手が襲い掛かる
3人は鍛え上げられた身体能力と高いステイタスを活かし回避を続けるが触手の数の多さもあるためそう長くは時間を稼げないだろう
(頼むぞレフィーヤ!)
ノクスがそう念じたレフィーヤは魔法詠唱を開始しようとしていた
「【ウィーシェの名の下に願う】!」
(大丈夫............怖くない.........怖くなんてない)
レフィーヤは自分に言い聞かせる
「【森の先人よ、誇り高き同胞よ。我が声に応じて草原に来れ】」
レフィーヤは歌い続ける。以前の自分を捨て、前に進むために
「【繋ぐ絆、楽宴の契り。円環を廻し舞い踊れ。至れ、妖精の輪。】」
力強く歌う。不撓を謳う。きっとこれからも以前のように守られることもある。その度に苦汁をなめるだろう。それでも挑み続ける..............彼が教えてくれたようにそこに外敵はいらない。いるのは唯一人、
「【どうか――力を貸し与えてほしい】」
(私は負けない!私は......〝私〟に勝つ!)
「【エルフ・リング】」
魔法名が紡がれるとともに、山吹色から翡翠色へ
「ッ!?」
「レフィーヤ!?」
高まる魔力にティオナが気づく。そしてそれは最前線で付加魔法を使い続けるノクスも同様だった。自身よりも強い魔力のうねりを感じ取る。その事にノクスやティオネ達は頼もしく感じる。
だが、モンスターも目の前のノクスよりも強い魔力を発するレフィーヤの方を睨む
「【終末の前触れよ、白き雪よ。黄昏を前に
詠唱はまだ続く。完成した筈の魔法に更に詠唱を重ね別種の魔法を構築する
突然だが、魔法の習得数には限界がある
ステイタスにある魔法スロットは3つ。ノクスのスキルである太陰道、星の加護やリヴェリアの連結詠唱のようにバリエーションを増やすものはあれど彼ら彼女らでも3種しかないのだ。その中でレフィーヤが最後に習得した魔法。それは.............
同胞であるエルフに限り、詠唱及び効果の全てを完全把握すれば自身の魔法として行使することができる前代未聞の反則技。2つ分の詠唱時間と
「【閉ざされる光、凍てつく大地】」
召喚するのはエルフの女王、リヴェリア・リヨス・アールヴの攻撃魔法。極寒の吹雪を呼び起こし敵のすべてを凍り尽くす無慈悲なる吹雪。
『-----------------------------ッ!!』
花形のモンスターも高まり続ける魔力にに殺到していく
「させないよ!」
「はいはいっと」
ティオナとティオネが殴り蹴りによりその攻撃を弾きレフィーヤに触れさせない
だが、二人だけでは防げなかった無数の触手がレフィーヤに伸びる
だが................
「やらせねぇよ!」
白く輝く閃光が駆けると無数の触手は悉く斬り刻まれる
ノクスは瞬時にあの日アイズとの戦いで生み出した新技を使い約束通りレフィーヤを守る
「てめぇの相手は俺だ!」
ノクスは体の輝きを強めると同時に魔力を高めると瞬時に先程と同じように天空へ跳躍する
するとモンスターは急に大きくなったノクスの魔力の反応に気を取られ上空に向けさらに触手を伸ばす
上空でノクスは伸びてくる触手を紙一重で回避しつつ斬り落としたり足場にしたりしてさらにレフィーヤの時間を稼ぐ。
そしてその時間を受け取ったレフィーヤは歌い上げる
「【吹雪け、三度の厳冬。我が名はアールヴ】!」
拡大し、激しいく発光する彼女の
そしてついに〝冬〟が放たれる
「【ウィン・フィンブルヴェトル】!」
三条の吹雪。射線上から一斉にノクスらが離脱するとすべてを凍てつかせる純白の氷撃がモンスターたちに直撃する。体皮が、花弁が、絶叫までが凍結されていき、やがて余すことなく霜と氷に覆われた三輪の食人花は、完全に動きを停止させた。蒼穹に舞う氷の結晶が、陽の光を反射し、煌めくように輝いた。
「ナイス、レフィーヤ!」
ノクスは雷を解くとティオネ達と共にそれぞれをとどめを刺して食人花の氷像は砕け遂に終わった
完全に戦闘が終了し弛緩した雰囲気でいると................
「ッ......!レフィーヤッ!」
ノクスが突然張り詰めた声でレフィーヤの名を呼び走り始めると同時地面がまた揺れ始める
「え.......」
レフィーヤは徐々に足元から耳に覚えのある地鳴りに嫌な予感を覚えるも動けなかった
やがて地面に罅が入った直前.........
「キャッ!!」
ノクスはその瞬間レフィーヤを押し飛ばすと地面から大きく口のように咲き誇った花でノクスを喰らい伸びあがる
「ノクス!」
その場にいるものは油断していたこともあり突然のことで動けづ硬直してしまう。そして等しくノクスが散る姿を今度こそ思い描く
ティオネ達はすぐに攻撃をして助け出そうとした瞬間だった
彼の声で〝魔法〟が紡がれる
「
花が突然、光すら飲み込む闇の如く黒い炎に包まれる
「黒い炎.........」
その炎を目にした者たちは恐怖を禁じ得なかった。赤い普通の炎と違いそれはまる根本が違うように見えたからだ
モンスターを焼く黒い炎柱はすぐに縮小していき中心にいるであろう者の下へと吸収されるように消えていく
そして黒い炎柱が消えると背を向けて立つノクスがいたのだが............
(ノクスが怖い........どうして?)
レフィーヤだけでなくその場にいるすべての人々がノクスの背中を見て畏怖を抱く
人々は彼からまるで殺気や憎しみなどの悪意の塊を殴りつけられてるかのように感じていたからだ
その場に短くも時間以上に長く感じる沈黙をノクスが口を開く
「...........すまない怖がらせた。その..........レフィーヤは大丈夫か?」
いきなり先程の凄まじい程の圧が消えた普段通りのノクスに安堵してか避難誘導していたギルド職員や住民は腰が抜けたようにへたり込み、ティオネ達もどこか憔悴した表情を浮かべていた
それを見たノクスは申し訳なさそうに、そして何かを恐怖しているかのような顔を歪めていた
ノクスに声を掛けられたレフィーヤは戸惑うもすぐにノクスのその表情をみて答える
「あ、はい............えっと、すいません私が油断したせいで........えっと......」
レフィーヤがどうすればいいか悩み言葉を窮してると.........
「お疲れやったな、5人とも」
そう言って現れたのはレフィーヤ達の主神であるロキ様だった
「変な空気んとこ悪いけどティオネとティオナは地下水路見てきてくれや。まだいたら面倒や。レフィーヤはその坊主の付き添いしてやり」
ロキ様は泣いている小さな子の手を引き歩いてくるとそう指示した
「ロキ様、自分はそこまで消耗してないので一刻も早くモンスターの討伐に行くつもりなんですが........」
「神に嘘は通じへんで?脇腹.........深くやられてるやないか」
ノクスは先程食人花に食われかけていた時、牙のようなもので脇腹を貫かれていたのだ。かなり血がでているもののノクスの服の色が暗いので分かりにくいため周りは気づいていなかったが神の目は誤魔化せなかった。
「無理せんでええ。うちのアイズたんがどうにかしてくれるさかい..............ほな、ウチはこの子の親探してくるから頼んだで」
それだけ言うとロキ様は歩いて行ってしまった
ティオネ達も何か言いたげだったがそのまま指示通り地下通路に向かっていたようだ
怯えていたギルド職員達はすぐに避難誘導に戻っていくとその中からエイナがこちらに歩いてきた
「お疲れ様ノクス...............」
「エイナか...........どうした?」
「うん、ロキ様に言われてハイ・ポーションが必要だって聞いたから..........はいこれ」
エイナはハイ・ポーションをノクスに手渡す
「ありがとう..........エイナはその.........怖くないのか?」
「ふふふ、気にしてたの?もちろん怖かったよ?」
「そっか..............」
ノクスは少しずんだ表情になる。それを誤魔化す様に一気にポーションを呷ると......
「でもノクスはノクスだよ...........全く、弟分はベル君だけで充分なのよ?」
「.........ありがとう」
エイナはその言葉を受け取ると「どういたしまして」とだけ言って仕事に戻っていった
(は~思ってるより人の視線ってくるな..........)
ノクスは咄嗟でもしもの時しか使わない獄炎を使ってしまった。その結果がどのようなものになるかなんてわかってていつかはこうなると覚悟していたがそれでも怖がられるってのはどうにも辛い
(今黙り切ってるレフィーヤもきっと怯えてるからだろう。早く離れたほうがいいか)
自分が座り込んでる隣に座っている彼女の顔は見ていないがきっと自分のことを怖がってるに決まってる。そう思い一言言って移動しようと思っていると――
「ノクスを怖がってしまってごめんなさい」
「え?........なんで.........」
まさか謝罪されるとは思っていなかったノクスは驚いて彼女のほうを見る
すると彼女の顔には恐怖ではなく申し訳なさそうにしていた
「元々私が油断したうえ、二度も助けてもらったのに本当にごめんなさい」
「い、いや.......それはいいけど........俺は......無差別に殺意を向けていたんだぞ?」
「きっと理由があるんですよね?ノクスがそんなこと望んでないことは少し考えればわかりました。だから
ごめんなさい。そして、助けてくれてありがとうございます」
謝罪だけでなくまさか感謝までされると思っていなかったノクスは完全に面を喰らっていた
「あの.........もし嫌とかじゃないならどうしてか教えてくれませんか?助けてもらったお返しに協力できることがあるのなら私に協力させてくれませんか?」
「協力...........?」
「はい。あっ、でも私はリヴェリア様ほど魔法の知識には詳しくないので役に立てないかもですが.........私にとってノクスはその......大切な友人。そう!友人なので困ってるのなら助けたいです」
(彼女は優しいな.........あんなの受けてこんなこと言えるか普通?)
ノクスは底抜けのレフィーヤの優しさに先程まで重くのしかかってきたものが軽くなった気がした
「ありがとうレフィーヤ。それじゃ話聞いてくれるか?」
ノクスがそう問いかけると.............
「はい!勿論です!」
笑顔を浮かべそう言う彼女を見てノクスもまた笑みをこぼす
*******
「元々はあんな黒い炎は使えなかったんだ」
ノクスはレフィーヤに魔法の説明を始めた
「俺がレベル4になったのはある事が切っ掛けだった。その事は今は話が長くなるから伏せるけどその時のレベルアップで獲得した発展アビリティが恐らく原因だ」
「発展アビリティですか?」
「あぁ、その発展アビリティは復讐鬼って名前だった。その日から炎の付加魔法だけ黒くなった」
レフィーヤはその名前だけでロクでもないことが切っ掛けであることを察したためその件には聞かず、話の続きを待った
「黒くなるだけなら別によかったんだ。実際黒い炎は敵を焼き尽くすまで消えない圧倒的火力があるしな。だが、これを使うと『声』が聞こえるんだ」
「『声』ですか?」
「あぁ、『殺せ』『滅ぼせ』『憎め』ってな。聞こえるだけだったら、まぁ.....不快な程度で済んだ。ただ実際に俺の思考もそれに寄っていくんだ。だから使うと周囲に無差別に悪意を振りまく」
復讐鬼の発展アビリティには最も相性のいい属性に負の特性付与するものなのだ。その負の特性と言うのが単に火力向上をもたらすだけに収まらずノクス自身の精神にまで影響を及ぼすものだった
「だから俺はこれをなるべく使わないし使ってるところは見せないようにしてきたんだが............咄嗟の事で使っちまった」
「そう言えば前に話してたのって........」
「あれは違う。獄炎もそう言えるがアレは別格............そうだなこの際アレの説明も軽くしとくと魔法名は
「どうして..........そんな.............」
魔法は使用者の習得時の心情に大きく由来する所がある。その当初のノクスがどれ程のものを感じていたのかと思うと悲しくもあり、辛くもあった。だから無意識に何故とこぼしていた。
ノクスは少し黙ると口を開いた
「......俺のファミリアはあるモンスターによって俺とアルテミス以外目の前で全員殺されたんだ」
「全.......員............」
それがどれ程のものなのかレフィーヤは全く想像できないし想像したくもないことだけはわかった。
「俺はそのモンスターを倒したみたいだが、名称が文字化けしてる謎のスキルの暴走が起きて何も覚えていない。だからもう家族を奪った敵に復讐さえできない。でも、もしも復讐できるとしたら................家族を救えなかった俺しかいない」
「ッ........!?」
当時はレベルが3になって2ヶ月ごろだった。そんな有頂天になっていた俺が憎いのだ。浮かれた自分が居なければまた変わったかもしれないと何度考えたか。そしてその度に強くならねばと思い続けた。
なぜなら..............
「だが、同時に俺は生きないといけない。アルテミスだけ1人にするなんてそんなのダメだしな。アルテミスを守るために強くならないといけない」
「そんなことって..............」
レフィーヤは彼の袋小路のような立場にどう声を掛けていいか悩む。助けたいといった言葉が軽率だったのではと思わされるくらい彼の話は重かった。
「.............話過ぎたがこれが俺だ。魔法の話だけじゃなく耳を穢す様なことまで言って悪かった。まぁ、俺はさしずめ歪な
苦笑交じりにそうノクスは言い切る
自分が復讐対処な復讐者など歪でしかない。殺したいのに生きたいと望む矛盾を抱えた存在。歪な自分に本当に吐き気すら覚える
そんなことを考えてると...........
〝パチーン!!〟
レフィーヤの平手がノクスの頬へ打ち込まれ、乾いた音が響く
「先程のお方がおっしゃったようにノクスはノクスです!
レフィーヤは言葉を探していたが最後に彼が自分の事最低と言った瞬間にカッと頭に血が上ったようになり気づけば手を上げてそのまま思ったことを口にしていた
「いいですか?私はノクスのことを尊敬しています。強くなろうとする姿勢にどんな背景があってもそれは変わらないんです。だって、私を助けてくれた貴方が優しいことを私は知っているからです。ただ強さを求めているのではなく他人にも優しいノクスだから私は尊敬しているんです」
叩かれた頬はどんなモンスターの攻撃よりも痛かった
それはきっとレフィーヤの心がこもっていたからだ
本心からそう言ってくれているからだろう
「それにノクス言いましたよね?『自分がなりたい最高の姿を常にイメージして常にその最高を超える意識を持つ』って。ならその心にある復讐心も何かも飲み込んで強くなればいいんです!それがノクスの理想の自分じゃないんですか?私に自分に打ち勝つ所見せてくださいよ!」
まさしくその通りだ。使うことで自分が自分でなくなるのが怖くて躊躇っていた。だからもっと強くなれば使いこなせると逃げていた。偉そうなこと言って本当の意味で挑戦なんてできていなかった
だから............
「悪かったレフィーヤ。軽率だった。...............そしてありがとう。おかげでなんか吹っ切れたよ」
俺は自分にできる最大限の感謝を彼女に贈る
「はい..........って、すいません!私はたいちゃって....大丈夫ですか?」
「大丈夫、むしろいい喝入ったわ。レフィーヤに話してよかったよ。ホント、ここまで本心をさらけ出したのはレフィーヤが初めてだ」
「私が初めて........../////ゴニョゴニョ」
何やらぶつぶつ言って赤くなっているレフィーヤだがノクスはそのまま続ける
「?レフィーヤは真面目だし、優しいから真剣に話を聞いてくれるからつい話し込んじゃうんだろうな...........なんにせよホントありがとうレフィーヤ」
ノクスは心からの感謝を先程までの陰がとれた笑顔でレフィーヤに贈るとその表情を見たレフィーヤは
「............///////////」
「?レフィーヤどうしたんだ顔紅いぞ?」
「はっ!だ、大丈夫ですよ!///////ノクスの力になれて何よりです!/////」
(あの笑顔はずるいです!なんであんなカッコいい.......って私は何を!?/////////)
レフィーヤはそれだけ言うと顔を抑えて振り向いてしまうのでノクスは何かあったのだろうかと不思議だった
「そうか?取り合えずレフィーヤをホームまで送ろうか?」
「そうですね..........今日はもうホームに戻ろうと思います」
その後騒動はアイズやその他冒険者の活躍、そして裏でまた一つ成長したベルの戦いがあり今回の
結果から言えば死人も怪我人もほぼ0だということを後にエイナから聞いた。今回の騒動の目的や犯人はわからずじまいで不思議な事件として記録に残るのであった