まさか...........まさか.............
「まさか本当にここに来ることになるとはな」
俺、ノクス・リータスはいまオラリオ最強と名高いファミリア
ロキ・ファミリアホーム『黄昏の館』に来ていた
「それにしても広いし、大きいな建物..........」
元々が森暮らしであり、今のホームも戦争遊戯で巻き上げた金と貯蓄で建てた一軒家なため唯々圧倒されるしかなくあたりをキョロキョロ見渡していた
「あら?随分珍しそうな反応するのね?」
ティオネは不思議そうに尋ねてくる
「いや、俺元々森暮らしだったし、今のホームも一軒家だから流石にこれだけ大きな規模のホームとなるとそりゃね...............」
「ノクスは森暮らしだったんですか?」
すると流石はエルフと言うかレフィーヤがそう尋ねてくる
「あぁ、うちのファミリアは元々森での狩りをすることが基本だったから」
「へ~そうなんですね。でもなら何でここに?」
「ッ.....」
その言葉で思い出すのはあの日の悲劇。きっとあの悲劇がなければ今も―――
いや、やめておこう。もしも何かじゃなく〝今〟と〝未来〟が大切だ。それが大切にできなかったら家族達に顔向けできない
「あ~それに関しては悪いがここではちょっとな?レフィーヤたちを信じてないとかは断じてないけど少し事情があるんだ」
レフィーヤの疑問はもっともだろう。レフィーヤたちだけならまだしもそれ以外の誰がどこで聞いているかわからない以上余計なリスクは好ましくない
「(あれ?今....)そうですよね。すいませんちょっと配慮が足りませんでした」
「いや、俺がスキルとかべらべら話したのも原因だと思うしな。気を遣わせて悪かった」
「一応自覚はあったんですね..........」
ジト目で突っ込んでくるレフィーヤだが、内心では先程一瞬だけ見せたノクスの魔法について聞いてた時に見せた悲しそうな顔と同じ顔をしていたので少し心配だった
そんな胸中を知らないノクスはふと思い出したかのように問いかける
「そう言えば今ってフィンさんとロキ様いるのか?流石に挨拶はしないといけないと思うんだけど」
「多分フィンさんは執務室にいると思いますよ。ロキは.............」
そんな話をしているとバタバタっと大きな足音が聞こえた
「お帰り~~~いぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」
大きな声とともに飛び出してきたのは主神であるロキ様だった。そのロキ様は素晴らしい跳躍で丁度先頭に立っていたアイズに飛び付いたと思われたが
「..........」ヒョイ
躱される。だが勢いはまだ衰えずその後ろにいたティオナに―――
「..........」ヒョイ
躱される。まだ衰えず次はティオネに行くも―――
「...........」ヒョイ
また躱される。そうなると残りは.........
「って!またぁぁぁぁ!?」
当然レフィーヤになるわけだが..........
「ってキャッ!」
「グベッ!?」
悲鳴と変な声が響く
「えっと...........これであってる?」
ノクスいきなりのことに咄嗟でお姫様抱っこをして横に逸れたためレフィーヤに被害はなさそうだがロキ様が顔面から地面に突っ込まれていた
「あ、あっの.......え?今私......え?......///////」
「あっ、悪いすぐ下す」
ノクスは腕の中で戸惑っているようなレフィーヤを下ろす
「悪い咄嗟とはいえ触られるの嫌だったよな?すまん」
エルフと言う種族は他種族に触れられることを極端に嫌う。そのため流石に咄嗟とはいえ不味いことをしたとノクスは謝罪する
「い、いえ!その.....嫌ではなかったです....むしろゴニョゴニョ//////」
「? そうか?ならいいけど...........」
とりあえずレフィーヤは大丈夫だろう。だが咄嗟とはいえ神様を放っておいてよかったものか
「ならいいけど...........すいませんロキ様。その咄嗟のことで........」
「いててて.........なんや坊主、といううかなんでウチにおるん?」
「申し遅れました。自分はアルテミス・ファミリア所属ノクス・リータスです。今日はアイズさんの招待で参りました」
「アルテミスとこの?マジで?.......いや、嘘はついてないみたいやけど.......ん?そういえばアイズが何度か手合わせしたっちゅう剣士の名前もノクスって聞いてたな~」
「多分自分の事だと思います」
「そ~かいな、どうせうちのお姫さんが戦いたいって聞かへんかったんだろ?ならお相手頼むわ」
「わかりました。ところでフィンさんにも挨拶したいんですけど.........」
ノクスはファミリアの団長であるフィンにもあって挨拶できないかと尋ねようとしたところ
「おや?ノクスじゃないか。どうしたんだい?僕たちののホームに何か用かな?」
そう言ってロキ様の後ろから歩いてきたのは丁度挨拶に行こうと思っていた相手のフィンさんだった
「あっ、フィンさん。この間ぶりです。今日はアイズが戦ってほしいとせがんだので」
「あははは........それはなんというか迷惑をかけるね?」
苦笑をこぼすフィンさん。フィンさんも少しは戦闘以外のことを考えて欲しいと思っているんだろう
「いえ、アイズとの手合わせは自分もいい経験になるのでそれ自体は問題ないですよ」
ただ、仲間と休息しに来てるなら休息をとれと俺は言いたい
「それならいいけど........そうだその手合わせ僕も見ていっていいかな?」
「はい、問題ないですよ」
「それはよかった...........でもいつもの双剣はないみたいだけど?」
「整備に出してるんです。アイズが剣はあまりものがあるからそれでやるって聞かなかったので」
「確かに余り物はあるしね。なら僕が案内するよ。アイズ、君は準備してくるといい」
そうして案内役が引き継がれ俺はフィンさんの案内の下、剣があるという場所に向かった。
*******
俺は剣を二本借りるとまたフィンさんの案内の下広場に行くとロキファミリアの幹部陣と主力メンバーがいた
「すまないなノクス。うちの子がまた...........」
「いえ、気にしないでくださいリヴェリアさん」
まるでアイズの「母親ではないぞ?」........まぁ、そんな感じでリヴェリアさんが謝罪をする
「おい!」
「ベートか。どうした?」
すると先日軽くボコったベートが意外にも声を掛けてきた
「......だせぇ真似した俺が悪かった。そんだけだ」
それだけ言うと俺の前を立ち去り離れたところまで歩んでいった
相変わらず素直ではないがベートらしいと言えばらしいだろう
「ガッハハハハハ!あいつは素直じゃないからな」
「ガレスさんご無沙汰してます」
ガレス・ランドロック。二つ名は〝
「畏まらんでえぇ。期待しとるで坊主」
それだけ言って豪快な笑みを浮かべ同じく離れた場所に立ち去る
そして俺もアイズがいるほうへ歩いていく
「待たせたなアイズ」
「大丈夫..........早くやろ?」
それだけ交わすと二人は離れてそれぞれ剣を構える
二人の間に流れる空気は普段のものとは違い、氷のように冷たい空気が支配する
試合開始の合図はない。だけど二人は........
「ッ.......!」
「シッ......!」
同時のタイミングに踏み込むと一瞬で距離を詰め刃を合わせる
(アイズの奴..........速くなってやがる.....)
(ノクス.......速い)
2人はお互いの持ち味である〝速さ〟に少なからずの驚きを抱きながら鍔迫り合いになる
(でもパワーなら俺がッ!)
ノクスはスキルの影響で耐久こそ落ちても力は上がっているためアイズを押し切り弾き飛ばす
「くッ..........!」
アイズはノクスの力にたまらず勢いのまま後ろに飛ぶ。だがすぐに体制を立て直しすぐそこまで来ているノクスに対して剣を振り下ろす
「フッ.........!」
「ッ.........!!」
それに対してノクスもアイズの剣に合わせ弾き上げるとそのままノクスの剣士としての最も得意な連続攻撃に入る
「フッ......!ハッ..........!シッ........!」
振り下ろし、振り上げ、袈裟切り、突きと止まることのない高速連続攻撃
「ッ!.........クッ!...........はッ!」
アイズもノクスに合わせ鋭い連撃をいなしながら自身も攻撃を加えていく
ヒートアップする連続攻撃の応酬にそれぞれの顔や体に切り傷ができる
2人はそんな些末事に構うことなく二人の戦闘は加速していく
*****
観戦している者たちはこの戦いぶりを目を見開き食い入るように見いる
「凄い..........速すぎて何も見えない」
離れたところで見るレフィーヤは二人の圧倒的なスピードでの剣技の応酬に目を見開いて驚き、尊敬の念を抱いていた
「よくやるよね~二人とも。私にはあんな戦い方できないししたくないよ~」
そう言うのはティオナで彼女は高速戦闘での駆け引きや、一手さえミスは許されない戦いに自分ならパワーで押しきるのにと考えていた
「君には見えるかなベート?」
「........なんとかな..........気に食わねぇけど」
フィンは冷静に戦いを分析し、そして同じくスピードに関してオラリオ内でも有名なベートに問いかける。だがそのベートをもってしても二人の常に加速していく攻防を見切るのに何とかと言わせるほどだ
「そうか.........だが、彼女らはまだ上がるようだ」
そう、フィンの言う通りアイズもノクスもまたさらに上がある
******
剣戟の音が鳴り響く中、二人の剣閃によりお互いわずかな切り傷ができるもお互いがそのスピードに慣れ始め千日手状態に陥りかけていた
そんな中先に動いたのはアイズだった
「
アイズはしびれを切らしたのかはたまたこの状況を打破するためか風を纏う
2人のこの模擬戦は本来はお互い魔法なしというルールでやっていたのだがアイズがそれを一度でも守ったことがないため魔法なしというルールは気づけばなくなっていた。もっともそれはノクスも言えたことでもあったりする
風を纏うことでさらにアイズのスピードは加速する
アイズはすぐに攻めずにノクスの周囲を囲うように走りタイミングをつかみにくくする
「...........」
「...........」
お互い、静かにその時を待つ
そして―――
「!」
凄まじいスピードで風切り音と共にアイズが切り込む
「ッ!」
ノクスはそれを辛くもいなして次に備える
さらに続く二撃目
「ッ......!」
恐ろしく速い攻撃にもかかわらずノクスはまたも防ぐ
暫くノクスは防戦一方となりアイズの攻撃を防ぐだけで攻めに出なくなっていた
魔法なしでも防ぐノクスの技量は流石であるがそれでもノクスとて魔法ありのアイズの攻撃を対処するのは明らかに苦しいものがある
だからこそノクスもここでカードを切る
「
ノクスは足に白雷を纏わせると掻き消えるようなスピードで風を纏うアイズに斬りかかる
「ッ!」
ここで魔法を使ってから初めて鍔迫り合いになる。ノクスがアイズのスピードに追い付いたのだ。
2人はそのまま一旦離れると序盤以上の高速戦闘が始まる
翡翠の風と白い雷の色彩だけ残しその本人の姿は視認するのが困難になり始めていた
*****
「今度こそ目で追うのは難しいね」
レベルがノクスやアイズの上であるフィンでさえ魔法使用後の二人の姿を明確に視認することが困難になってきた
「あぁ...........」
ベートにも今の二人はからは翡翠と白の輝きを見ることが精一杯だった。自分ではその戦いに割って入ることができないであろうことに強い敗北感そして強くなりたいという渇望が渦巻いていた
「お互いがお互いを意識して本来の速さを大きく上回っているな」
「うむ.......アイズもあの坊主も大概負けず嫌いだからのぅ」
リヴェリアとガレスの年長者としての二人の若者に対する評価。アイズの負けず嫌いはともかくとしてノクスも目立っていないものの根底にある負けず嫌いであることをガレスは見抜いていた
「本来を上回って..........」
そんな会話を聞いていたレフィーヤはノクスが言った言葉を思い返していた
『最高の姿を常にイメージして常にその最高を超える意識を持つ』
あの言葉をきっと今彼は実践してる。そして自分が尊敬するアイズもきっと自身の最高に対して貪欲に挑み続けてる
心情としては同じファミリアであり尊敬をしているアイズを応援したいレフィーヤ。でもあの話を聞いたレフィーヤは挑み続けるノクスが自分に打ち勝つ瞬間を見てみたいと思った
「がんばれノクス」
******
(足を速くしただけじゃ勝てないか)
ノクスは互角に戦っているように見える反面、実のところはそうでなかった
ノクスは足に雷を付加しての高速戦闘なのだが足に腕が追い付いていないのだ。全身に風を纏うアイズとはそこが違うためずれがあり今でこそ防げているもののやり難さがある。
(いっちょ試してみるか..........)
ノクスは一旦距離を取ると雷に対しての集中を強める
(雷を自分と同義に..........雷は自分自身になるように)
脚に纏っていたものを全身に纏わせるようにしていく。アイズもノクスのやろうとしていることに警戒心を高めるが攻めに出るか一旦様子を見るか決めあぐねる
ノクスが全身に纏う雷の輝きが強まったと思うとそれは徐々にノクスの中に納まるようになっていくそして.........
「成功.......かな?」
ノクスの全身が白く輝き体から雷がバチバチと放たれていた。まるでアイズが風を纏うように.........いや、ノクスはそれとは根本が違う気がした
「何をしたの?」
アイズはノクスの姿を前に聞かずにはいられなかった
「全身に......体の全てに雷を付与してみた。アイズが風を纏うのを参考にしてな」
ノクスは文字通り体を構成する細胞レベルに至るすべてに雷を付与し、自身の存在を雷とほぼ同義にしたのだ。ノクス自身初めての挑戦なためどんなリスクがあるかなどは全くわからないぶっつけ本番の新技だ。
「さて、こっちから行かせてもらう!」
ノクスはさらに上がったスピードで一気にアイズとの間合いを詰める
「ッッ!!??」
今のノクスの一瞬のうちの踏み込みにアイズの反応がわずかに遅れる。何とかというところで防ぐも余りの速さにアイズも目を見開き驚く
そんなアイズや同じく恐ろしいまでの速さに驚愕するロキ・ファミリアの面々の頭をよぎるはノクスの二つ名の由来
―――曰く、彼の者は剣は主神に捧ぐ忠義の剣
―――曰く、彼の者の剣は鮮やかな色彩を放つ煌剣
故に〝
今のノクスは剣どころか自身も白く輝いてはいるがまさしくその由来通りの姿だ
だがアイズとて........〝剣姫〟とて簡単に負けない
更に風を強く纏うとノクスに対し斬りこむ。そしてまたノクスもそれにこたえるかのようにギアを上げて斬り結ぶ
速さと剣技の勝負では僅かにだがノクスに軍配が上がるだろう。だが、それが勝利条件ではない
心の強さ..........それが二人の根底にある強さだ
どちらも一歩も譲らない戦闘に永遠に続くかと思われるほどの刃の応酬
恐らくこの戦いはだれにも止めることはできないだろう
だが、終わりというのは得てして突如として訪れるもの
「へ..........?」「え............?」
2人が鍔迫り合いになったかと思った瞬間だった
お互いの剣が負荷に耐えきれず粉々に砕け散ったのだ
「「...........」」
お互い砕け散った剣を見て黙りこけてしまった
そしてしばらく無言の時間が過ぎると...........
「引き分けだな?」
「うん。引き分け」
こうして同意の下引き分けという結果で模擬戦の幕を下ろした
******
ノクスは壊してしまった二本の剣と広場の一部がが荒れてしまったのでその分のお金を納めると自分は夕食の準備があると言いロキ・ファミリアの面々に挨拶すると帰宅していった
(多分ノクスは自分に打ち勝ったんだろうな.......)
レフィーヤは最後ノクスが使った新技を思い出していた。
あの新技は彼が自分に打ち勝った証左だろう
何せあの時の彼の表情はとても.........
(凛々しくてかっこよかったなぁ..........)
彼のあの時の佇まいは間違いなく尊敬に値するものだった
そして自分も負けてられないと思った。
彼が言ったように自分も自分に...........想像している最高の自分に勝ちたい
そんなことを考えていると―――
「ベートどこに行くんだい?」
一人黙って立ち去ろうとする彼にフィンは問いかける
「ダンジョンだよ.............」
「そうか...........ほどほどにね?」
ベートはそのまま自室に装備を取りに向かった
彼もまたあの戦闘に感化された一人なのだろう
「ガッハハハハ!あやつも大概負けず嫌いだの」
ガレスは豪快に笑いそう言い放つ
「仕方ないさ。そういうガレスも滾るものがあるんじゃないかな?」
「それはお前もだろフィン......まったく血の気が多い奴らばかりだ」
そう冷静に言い放つリヴェリア。ロキ・ファミリアの古株である二人でさえ先程の戦闘に心を動かすものがあったと言う事だろう
「あぁ、否定しないよ。だが、リヴェリア。僕はそれ以上に彼を次の遠征に呼びたいと思うんだけどどうかな?」
フィンは次の遠征にノクスを呼ぶことをリヴェリアに提案した。最もフィン自身以前から考えていたことでもあり、深層の新種のモンスターの件や先の模擬戦の件からその考えはより強いものになっていた
「ふむ........戦力としても申し分ない。それに彼は我々とも交流はあるため信頼という意味でも相応しいだろう」
「そうか............なら今度彼のホームに行って彼と主神のアルテミス様に話してみないとね」
こうしてノクスの新たな冒険の一ページが動き出そうとしていた