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ラブライブ!において「面白い物語」とはなんなのか?

世の中はますますスピード時代を迎えた。かつて竹下元総理は自分の任期が短命に終わったこともあり「歌手1年、総理2年の使い捨て」と自嘲していたが、もはや今の時代は「アニメ1クールの使い捨て」という時代である。目の前の1クールに死力を尽くし、視聴者の支持は得られないとすぐに忘れ去られてしまう時代である。

さて、昨今の『ラブライブ!』シリーズを見ていると、アニメが面白い人はリアルのユニットも高い評価をするし、アニメがつまらないと感じる人はリアルのユニットへの評価が低い傾向がある。

つまり、リアルの声優の活動の評価とアニメの評価がほぼ比例しており、『ラブライブ!』というコンテンツの成功というのは如何に多くの人に「面白い」と思ってもらえるかということ以外にあり得ないということである。

おもしろい話というのはなんなのか。

では、おもしろい話とは何なのか。まず、物語というのは、最初に課題や問題が生じて、解決するというのが基本構造 が存在し、以下の二つに大別される。

  1. 「欠落したものを元に戻す物語」

    • 『千と千尋の神隠し』のように、何かを失った主人公がそれを取り戻したり、自分自身を再発見したりする話。ITやコンサルティング会社の「導入事例」もこれに近い。「この会社は以前はこういう課題を抱えていて、当社のソリューションを導入して問題が解決しました」というパターン。

  2. 「行って帰ってくる物語」

    • 『天空の城ラピュタ』や『ロード・オブ・ザ・リング』のように、冒険や修行に出て、困難を乗り越えて成長し、あるいは財宝を手に入れて帰ってくる話。寿司職人になるために修行に出る、といったものもこの類型に当てはまる。

『ラブライブ!』の場合、物語の核になるのは「欠落したものを元に戻す物語」に近い。彼女たちにとって「こういう問題があって、それを解決する手段としてアイドルを選ぶ」という部分には、しっかりとした説得力が求められる。

アイドルになるのは変身願望

さて、秋元康がプロデュースし、乃木坂46の公式ライバルとして誕生した、アイドルグループ「僕が見たかった青空」(公式略称:僕青(ぼくあお))に須永 心海(すなが みうな)というメンバーがいる。

須永は、父親を亡くし、その父親との最期の約束が「アイドルになること」であり、そして彼女は、その約束を果たしたのである。

「亡き父との最期の約束でアイドルになった子」というのは、朝日新聞にも取り上げられ、父親の命日である8月30日が奇しくも、僕青のデビュー日でもあったことが取り上げられファンに強い印象を与えた。

アイドルに憧れるということ自体はごくありふれたことである。しかしそれを職業にするというのは大きな決断であり、今の自分や現実に感じる「制約」や「閉塞感」から脱し、芸能界という異なる世界に身を投じることで「自分の置かれた環境を変えたい」という変身願望が根底にあることが多いだろう。

須永も父に先立たれ、「もし僕青のオーディションに落ちたら進学せずに就職をするつもりだった」と述懐しており、本人の口からは明かされていないが、彼女が若き大黒柱として、家庭を支えたいという思いもあるのだろうし、「自分の置かれた環境を変えたい」という動機もあったのではなかろうか。

このようにアイドルというのは動機というのは極めて重要であり、そこに共感やストーリー性を見いだし、初めてファンの心を動かすというのはフィクションもリアルも同じなのではないかと思う。

変身願望=悩み=動機

アイドルになるのは変身願望と指摘したが、そうしたものを支えるのは「悩み」である。先日、『ラブライブ!シリーズ』は最新作が発表されたが、そのキャッチコピーは「イキヅライブ」であり、登場人物がなにかしら生きづらさを抱えてることがタイトルからして示唆されるが、これはすなわち登場人物は何かしらの悩みを抱えているということになるだろう。 しかし、子供の悩みというのは家庭環境か、学校か、あるいは内面的な悩みに大別されるだろう。

悩みの内で、前の二つというのはどうしても大人が絡んでくることは避けられない。しかし、『ラブライブ!』シリーズというのは基本的に大人を出さず、大人は透明化されている。

すなわち、子供たちだけで話が進む作品である。 もし、大人が出てくるとしたら、子供たちだけで話しを広げるのが限界になったときに、話を広げるための一種の舞台装置としてしか存在していない。

一方で、『アイドルマスター』では人気のあるキャラクターは動機がしっかりしていることが多い。

『学園アイドルマスター』の篠澤広は、「簡単で退屈すぎる日々」を嫌がり、一番向いてなさそうな仕事と思ってアイドルになった。これはまさに「変身願望」の表れである。

あるいは『アイドルマスターシャイニーカラーズ』の樋口円香は、アイドルに憧れを抱いていないが、先にアイドルになった幼なじみの浅倉透への共依存関係からアイドルとなった。これも強い動機がファンに共感を与えている。

このようにアイドルというのは「なぜアイドルになったのか」というのが現実・フィクション問わずに常に問われ、そこに共感やストーリー性を見いして初めてファンの心を動かすのではないかと思うし、存在も動機も抽象的なだけでは支持される作品は難しくなってきているのではないか。

おわりに

これから、シリーズが歩む道というのは、二つのうちのどれかしかないだろう。

一つは、これまでのファンを切り捨てる覚悟で、作風や設定を現実的に変えるか、あるいは抽象的な作風のままでも「面白い」と感じさせる新たな軸を発明するかのどちらかである。

しかし、作劇というのは古代ギリシャの時代から試みられてきたものであり、面白いパターンはすでに出尽くしている。「発明」というのは極めて困難である。だからこそ、「なぜアイドルになるのか」という動機にしっかりと説得力を持たせることが、今後の作品の成否を左右するだろう。

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