手塚漫画は偉大な歴史、身近な現在 マンガ大賞の「チ。」魚豊さん

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 第26回手塚治虫文化賞(朝日新聞社主催)のマンガ大賞に選ばれた「チ。―地球の運動について―」の作者魚豊(うおと)さん(24)が受賞のことばを寄せた。内容は次の通り。

魚豊さん受賞のことば

 この度は名誉ある賞を頂き、大変光栄に思います。ありがとうございます。

 幼い頃、私からすると手塚先生は漫画家というより、寧(むし)ろ歴史的な固有名詞であって、その存在を身近に思う事(こと)など、当然ありませんでした。

 ですので、いざ初めて手塚先生の作品やインタビューを見た時、そのアクチュアルさ、身近さに驚かされました。

 また、時が経って、先生は“キャラクター(記号)”と“物語(意味)”という2つの魅力を繫(つな)ぎ合わせ、豊穣(ほうじょう)な漫画文化の発展と、慧眼(けいがん)な社会批評を繰り出した。なんて話をどこかで聞いて、私はその大仕事に畏敬(いけい)を感じるばかりでした。

 ですが、そのような批評的視座以前に、私の様(よう)な未熟者が学生時代に感じた先生の最大の魅力は、人の、個人の心を動かす“感情”でした。

 この3つ目の魅力は、漫画において表現技法やストーリーテリングに先立つものだと信じてます。

 それ故に最も素朴で、最も前提で、最も困難で、最も重要なものだとも信じてます。

 そして、手塚漫画はそこに立脚された作品だから、偉大な歴史でありながら、身近な現在でもあるのだと思います。

 恐れ多いですが私も、この先人のその背中に憧れたいと思います。

 いつかそういう作品が描けるよう目指したいと思います。

「チ。―地球の運動について―」あらすじ

 舞台は15世紀のヨーロッパ。異端思想がガンガン火あぶりに処せられていた時代。神童・ラファウは飛び級で入学する予定の大学において、当時一番重要とされていた神学の専攻を皆に期待されていた。しかしある日、ラファウの元に現れた謎の男が研究していたのは異端思想ド真ン中のある「真理」だった――!!

魚豊さん略歴

 2018年、『ひゃくえむ。』(講談社『マガジンポケット』)で連載デビュー。2020年から、『チ。―地球の運動について―』(小学館『ビッグコミックスピリッツ』)を連載。本作が、「マンガ大賞2021」第2位受賞、宝島社「このマンガがすごい!2022」オトコ編第2位にランクイン。

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