網野善彦氏を今の学生が知らないことに驚く声もありますが、私の実感だとむしろかつて妙な持ち上げ方だったことを考え直すべきかと思います。
彼が急に注目を集めるようになったのはソ連崩壊後の90年代です。戦中に軍国少年で戦後にマルクスボーイになった年代の人々が、次のよりどころを求める中で反国家主義的な網野氏の歴史がもてはやされ、出版市場もまだ右肩上がりの時代だったので大きな存在感を持ちました。しかしマルクスボーイの年代が引退し死去していくと彼の存在感も薄くなりました。
こうした事情は、今の学生は知らないでしょう。元軍国少年で戦後にマルクスボーイになった人たちがどんな人たちだったか、それも知らないと思います(口を開けば左翼的なことを言うのにカラオケでは軍歌を楽しそうに歌う年代でした)。
だから、かえって今の学生の方が網野氏の冷静な評価ができると思います。