超凡夫に転生するのは間違っているだろうか


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作:タルタル山賊焼
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7.路地裏


 屋台のバイト終わりに市壁の上で行う鍛練も10ヶ月を過ぎた。全てはロキ・ファミリアに入るためにしていたのだが、結局これも実を結ぶことはなかった。

 ……だから、もう必要はないのかもしれないが自然と足を運び、こうして鍛練をしている。

 

「ハアッ!……フッ!……ヤアッ!!」

 

「太刀筋がズレておるぞ。集中を切らすなよ」

 

「は、はいっす!」

 

 ここに居るのは俺だけではない。俺の無様さに思うところでもあったのか、3回目の入団試験で落ちた次の日に、ロキ・ファミリアのとある眷属が俺の宿に訪ねてきた。

 それからというもの、一人でしていた俺の稽古に僅かな時間だけではあるが、こうして付き合ってくれているのだ。

 

「ふむ、今日はここまででよかろう」

 

「ぜえ……っ!はあ……っ!……き、今日も、ありがとうございますっ!()()()()()()!」

 

 同じファミリアの眷属でもないこんな俺に、鍛練を付けてくださるのは『聖邪決戦』でその命を落とすノアール・ザクセン。

 70歳の老人だが『Lv.4』の第二級冒険者であり、あのフィンやガレス達を指導し鍛えた実力者である。

 

 ───そして、ラウルの前世である騎士ラザル・ディアミッドの上司である、騎士団長ゴォールの魂を宿したネームドキャラ、それがノアール・ザクセンだ。

 

「(ダンメモの『ナイツ・オブ・フィアナ』で、騎士団長ゴォールが出てきたからよく覚えてる。やらかしたキャラではあったけど、何だかんだ人間臭くて嫌いにはなれなかったんだよなぁゴォール。

 まあ、前世のことがなくてもノアールの最期も潔くて、好きな部類だから記憶に残ってたんだろうけどさ)」

 

 さすがに10年以上前の記憶のため所々欠落が出てしまっていた。

 

「(覚えてるうちに、『ラウル・ノールド』がしなければならないことを最優先で書き記したけど、それも全部覚えていたわけじゃない。

 名前もあやふやのキャラクターはもちろん、何だったら顔すらぼんやりとしか覚えていないキャラが多いしな。

 原作を追ってなかったから分かってる範囲もそう多くないし……)」

 

 言ってしまえば、『ダンまち』は主人公であるベル・クラネルの輝かしい栄光を記した英雄譚だ。

 だからこそ、それ以前にあった冒険者達の記録などは全く描かれておらず、あるとすれば外伝やダンメモのストーリーで描かれていたものばかりである。

 要するに、モブキャラのラウル・ノールドの活躍など全然記されていないのだ。

 

「(基本的にラウルってリアクション要員だから、個人で活躍する機会がほとんど無いし、逆にヤバいくらいの危機的状況でしかスポットライト当たらない、両極端なキャラなんだよなぁ)」 

 

 振れ幅がこんなに大きいくせに人気キャラにもなれず、地味キャラでしかないのは不遇が過ぎるだろ。何でどいつもこいつもラウルの扱いが雑なんだよ。

 ……まあ、読者であったときは俺も特に気にしてなかったけど。

 

「ふむ、なかなかものになってきたな。恩恵を貰っていないということを考えれば、オラリオの外でもある程度はやっていける腕だろう」

 

「はぁ……っ、ひゅぅ……っ、ノアールさんのおかげです!ノアールさんが教えてくれなかったら、俺もっと弱かったっすから……」

 

 これは紛れもない本音だ。最初の入団試験でのガレスとの実力試しである程度はやれていると思ったが、ノアールさんとの特訓を通してあれではダメダメだということが分かった。

 剣道の戦い方は実戦じゃあ余りにも隙だらけだ。剣道と剣術で意味合いが異なるのだから、そりゃあ実戦で剣道が通用すると思うことが勘違いなのは明らかだったんだけどさ。

 しかも、ダンジョンじゃあ敵の体格は違うわ、蟻やら兎やら犬やら鳥やらと、人間の構造から逸脱したモンスターばかりで、人間サイズのモンスターなんてそうそう巡り会えないのは当然の話だった。

 ルールに守られる対人戦を想定した剣道では、冒険者としてやっていくのは不可能であったというわけだ。

 

「(まあ、体育で学んだ程度の実力で何言ってんだって話なんだけどさ……まあ、変に実力があったらあったで不審に思われるのがオチだろうけど)」

 

 そんなこんなでノアールさんに戦い方を矯正及び指導されて、それなりのものになったとは思う。教えて貰う前とは雲泥の差だ。

 

「ゴホッ!ゲホッ!……スゥゥ……フゥーー…………ノアールさん、一つ聞いてもいいっすか?」

 

「ん?何だ?」

 

 ロキ・ファミリアのホームである、『黄昏の館』へ戻ろうとしているノアールさんを呼び止めて尋ねる。

 

「どうして俺にここまでしてくれるんですか?

 『入団試験を見てお前さんを鍛えることにした』って言ってましたけど……結局、俺はロキ・ファミリアの入団試験に落ち続けているっす。

 俺なんかよりもロキ・ファミリアの新人を鍛えた方がいいって思わないんすか?」

 

 これはずっと思っていたことだ。

 なんせ半年近く俺に指導し続けている。常識的に考えれば他の団員にこの時間を充てる方がどう考えても建設的だろう。

 

「ふむ……まあ、お前からすれば俺がこうして特訓を付けてやることが不可思議でならんか」

 

 ノアールさんは顎髭を撫でながら、俺の疑問に答えようと頭を巡らしている。

 だが、目蓋を閉じるとまるでこれ以上言葉を探しても意味がないとでもいうかのように、ノアールさんは一つ溜め息を吐いて話し出す。

 

「あの入団試験の立ち振舞いを偶然見ていてな。何故だか分からんがお前を…………ラウルを鍛えなければならんと思ったのだ。

 俺も他のファミリアの眷属になるかもしれん人間に特訓することは、ファミリア間のタブーにはならんが、他のファミリアの利益になりかねんからな。

 進んでやるものではないのは分かっておる。

 だが……そう、言葉にするなら身体が思わず動いた……というべきか。冒険者のこういう時の直感は馬鹿にできんからな。これも運命だと思いお前の下に訪ねてきたということよ」

 

「運命……っすか」

 

 この運命とは何か。そんなの決まってる。

 前世で深い関係だったラウルとノアールが、その縁で引き寄せあったのだ。

 

 つまり、俺ではなく『ラウル』が理由だということ。

 

「(……ま、そんなことだろうとは思ってたけど)」

 

 ラウルの肉体が前世のノアールさんと縁を結んだ。───()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「また『ラウル』か……」

 

「何か言ったか?」

 

「……いえ、何でもないっす」

 

 ノアールさんが帰っていくのを見送りながら、ここ最近胸の中に宿る感情から目を背けた。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

「こちらの席にどうぞ」

 

 客を案内して注文を受け取り、クソ店主にそれを伝えると酒瓶からジョッキに注いで俺に渡して、俺はそれを注文を受けた席に運ぶを繰り返す。

 『豊穣の女主人』の5倍ガラを悪くしたクソみたいな酒場であり、給料はそれなりに払うためここをバイト先にしているが、何故笑われながらこんなことをし続けなければならないのか。

 

「おい、ゴミを外に出してこい。チッ……言われねぇとできねぇのか。これだから分不相応な夢を持つ馬鹿なガキはよォ……」

 

「(お前がこの前勤務終わりにまとめて出せって言ったんだろうが!クソボケハゲ親父がッ!その場その場でコロコロ意見変えやがってッ!ふざけんな……ッ!)」

 

 不満を圧し殺し、言われた通りにゴミ袋を掴み外に出しに行く。息が白くなるほどの気温に身体が震ながら、10m近くあるゴミ捨て場に歩いていく。

 だが、それでも給料だけは良い店だ。クビにされれば鍛練の時間が減ってしまう。辞める訳には───

 

 

「ああ…………いや、もう関係無いのか……」

 

 

 ドサリッとゴミ袋を地面に降ろして立ち止まる。既にアキとの同期になる未来は閉ざされた。

 それはつまり、原作が崩壊したことによりオラリオは敗北し、世界はモンスターが地上に溢れかえっていた古代に巻き戻るということ。

 オラリオに拘る必要なんてもうどこにも無いんじゃないのか……?

 

「破滅は避けられない……オラリオに居る方がそもそも死ぬ可能性が高いんだ。

 なら、遠くにあるメレンに……いや、オッタルと同じ『Lv.7』の化け物が居る……【ナイツ・オブ・ナイツ】だとか言うのが居るらしい、海の上にある『学区』に入った方が長生きできるんじゃないか……?」

 

 生徒として迎え入れてくれるらしい『海上学術機関特区』の入学も、肉体が12歳である俺ならまだセーフの筈だ。

 このまま惨めに過ごして地獄の蓋が開くのを待つぐらいならば、全てを放り投げてこのオラリオを去るべきじゃないか?

 

「もう必死にやることに何の意味もない……」

 

 フラフラと歩き出す。目的地があるわけじゃない……ただもうこの都市から逃げ出したかった。

 

「何だったんだよ……今までのこと全部、全部意味なんて無かったのかよ」

 

 いつも通り目が覚めて、いつも通りに鍛練をして、いつも通りに屋台でバイトをして、夜には酒場で働く。

 これまで通りの無駄で無意味で無価値なラウル・ノールドの毎日が始まるだけ。こんなことをし続けても何が変わるというわけでもないのに。

 

「終わりだろ、こんなの……どうしようもねぇじゃん……俺はできることをしただろ?……俺は何も悪くない…………だって俺にはどうしようもないことだったんだし……」

 

 膝を地面に付けて(うづくま)る。必死に自己弁護をすることのなんて無様なことか。だけど、俺にだって言い分がある。

 

「……何でラウルなんだよ……何でチートの一つも無いんだよ。転生して……生まれ変わってさ……なら、最強の存在になって皆にチヤホヤされる英雄になるもんだろ?

 金も名誉も女も、当たり前に手にできるもんなんじゃないのかよ…………何の旨味もない、苦しいだけの端役に誰がなりたいっていうんだよォ……ッ!!」

 

 本音をぶちまける。ラウルになったときから諦観を抱きしょうがないと割り切っていた……いや、割り切ろうとしていた本音を初めて口にした。

 

 主人公にもなれず、英雄にもなれない。

 欲望を為せず、夢も叶えられない。

 

 精々、自らがなれるとしてもモブキャラ、地味キャラ、端役。その程度でしかない。

 この先、皆が憧れるカッコイイ英雄になることは決してない。どれだけ努力しても、どれだけ命を懸けても、歯車の一つとして世界に貢献すること以外できない……できることがない。

 どん詰まりで生き甲斐なんて何一つ存在しない、部品(パーツ)として生きて死ぬだけの人生。そんなものに喜んでなりたいだなんて考える酔狂な人間なんていやしない。

 

 そんな恵まれない人間が歩む、不憫で取るに足らない行間に差し込まれるのが精々の冒険を、これからしなければならない苦行の未来。

 何をモチベーションにすればいいのか、何を支えにすればいいのかも分からず、適当に思い付いたのが娼館通いをすること。

 ……そんなことをしても、物語の端役でしかない事実は変わらないのに。

 

「それなのに……それにもなれないなんて…………俺は……俺は……どうして…………転生をしてるんだよぉ……ッ」

 

 何故、生まれ直したのかも分からず、何故、自分でなければならなかったのか。理由を聞いても誰も答えてはくれない。

 

 いや、実を言えばそれにも察しが付いている───どうせ意味などないのだろう。

 

 天文学的な確率で偶然このポジションに自分が収まった。きっとそれ以外に理由は無いのだと、直感的に理解してしまえた。

 ただそれだけのお話。

 

 ふと、光り溢れる大通りの向こうから声が聞こえてきた。

 

「ねえ……これって雪?」

 

「おおっ!雪だ雪っ!聖夜祭に雪が降るなんて目出度いな!来年も良い年になりそうだ!」

 

 白い雪がこんこんと降り注ぐ。活気のある表通りが別世界のように感じた。

 

「あら、雪じゃない!この私のようにどんなものにも染められない純白の色ね!この世界すら私の魅力を引き立てずにはいられないようだわ!フフーン!」

 

「……いや、団長の二つ名は【紅の正花(スカーレット・ハーネル)】だろうが。その髪と魔法で白は無理だろ白は」

 

「全く、公衆の面前でいきなり何を言うかと思えばこの団長様は。余り頓珍漢なことを言わないで欲しいのでですねえ……私達も同類だと思われますので」

 

「アリーゼを侮辱するな輝夜!……アリーゼはちょっとアレなだけだ」

 

「いや、そこは褒めてやれよ」

 

「大丈夫よ、輝夜!私みたいに純白が似合わなくても、なんたってアストレア様に見出だされた正義の眷属なんだもの!

 落ち込まないで!全ては何色でも自分の色にしてしまう私の完璧美少女さが原因なのだから!バチコーン☆」

 

「イラッ☆」

 

 俺なんかまるでいないかのように町は賑わい、しんしんと無情に雪は降り積もる。凍えるような寒さに身を震わせながら、一人孤独にポツンと縮こまるしかできない。

 

「ええいっ!本当にどこ行ったんですかヘルメス様!聖夜祭だからと好き勝手に行動して……!」

 

「なあ、アスフィ……私の聞き間違いじゃなけりゃ、なんか団長と性なる時間を過ごすとかなんとか言っていたような……」

 

「な、なななな何ですかそれは!?まさか、自らの眷属()に手を出すとでも!?あっ、あの鬼畜ッ!その辺りの分別はあると思ってましたがそこまで碌でなしだったとは……!

 行きますよルルネ!あの暗躍好きの傍観者気取りに鉄槌を与えます!!」

 

「え、えぇ……もしかして、今日一日これに付き合わされるのか私……?」

 

 オラリオの人々が生み出す喧騒が耳に届く。光りが差さず薄暗い裏路地で自分は何をしているのだろう?眩しく輝かしい人生を送るオラリオの町の住人や冒険者の声ですら鬱陶しく感じる。

 

「俺だって……俺だって、本当だったらそっちに……っ」

 

 理想と現実。描いていた未来予想図が(ことごと)く遠ざかり乖離していく。主人公になれずとも、英雄になれずとも、冒険者には最低限なれると思っていた。

 原作前のロキ・ファミリアの面々と仲を深め、それなりの生活をしているのだと思っていたのに……今、俺が置かれている現状は何だ?

 光に照らされず寒さが肌を刺す痛みで震える日陰者。まるで薄汚れた負け犬そのもののようじゃないか。

 

「(あっ……そうか……)」

 

 ここでようやく俺にも悟ることができた。

 

 

 

「(俺は凡夫(ラウル)にもなれなかったのか…………)」

 

 

 

 俺は負けたんだ。この世界に。

 

「(『ラウル』を超えるどころか、なることもできなかった。追い付くどころか『ラウル』の影さえ踏むことができない……凡夫にすら劣る奴にはこれがお似合いか……)」

 

 笑ってしまっていた。何故かは分からないが口から笑い声が出ていた。それが信じられないほど乾いていたような気がするが、きっと気のせいだろう。

 

「(なら、……誰も『ラウル』のことを知らない場所に行って、ほんの(ささ)やかな幸せを手に入れる……それでいいじゃないか)」

 

 そうだ。そもそも、何で俺がこの世界のために身を粉にして、献身的に尽くさなくちゃならないんだ?

 別にいいじゃないか。二度目の人生を俺の好きなように生きても。物語を成立させなくちゃいけない義務なんてないんだから。

 

「赤の他人であるベル・クラネルが、英雄となるまでの手助けをする使命なんてどこにある?フィン・ディムナの都合の良い手駒になる義務は?

 10年くらいしか知らない赤の他人である、ノールド一家を絶対に救わなくちゃいけない義理は?

 ロキ・ファミリアの潤滑油にならなくちゃならない意義は?神々やオラリオの住人に鼻で笑われながら戦わなくちゃいけない意味は?

 闇派閥(イヴィルス)や強大なモンスターと、命懸けで戦わなくちゃならない大義は?……何もない。もう何の意味もない理由ばかりじゃないか」

 

 もう全てが終わったこと。原作に辿り着くことはなく、世界は破滅を迎える。何をしようと意味はなく、そもそもそれを絶対にしなくちゃいけない動機も無い。

 ───俺は逃げる。この世界の行く末なんて知ったことか。

 

「(どれもこれも、この世界の自業自得だ……フィンが入団を認めずこの世界が終わるのも自業自得。それに対して何も言わないリヴェリアやガレス、そして主神であるロキの判断ミスによる自業自得。

 そして俺なんかを転生させたこの世界の自業自得……運が無かったと諦めろよ)」

 

 しゃがみ込んだ体勢から立ち上がり、雪が積もりつつある地面を一歩一歩足を踏み締めて、裏路地から大通りに向けて歩いていく。きっと聖夜祭でも……いや、聖夜祭だからこそオラリオの内外の交通は盛んな筈だ。

 

「……それに乗っけて貰おう。必要経費はあの酒場でもう稼げてる筈だ。足りなくてもメレンで稼げばいい……『学区』に行けばまだ俺だってやれる……やれる筈なんだ……」

 

 そこで断言ができなくなってしまうほどに、俺の自尊心はボロボロだった。いや、自尊心だけで今の今まで努力してきたと言っても過言じゃない。

 それが崩れてしまったんだから、空っぽになるのもしょうがなかった。そんな心理状態だったからだろうか。俺は後ろから近付いてきたその人物に肩を掴まれるまで気付かなかった。

 

 

「……え?」

 

 

 意表を突かれた。

 世界から弾き出されたとまで思ってたのに、俺の肩を掴むような奴が居るとは思わなかったからだ。

 孤独な場所で孤独に歩いていたんだから、声を掛けるならともかくわざわざ身体に触れてくる奴が居るなんて思わなかった。

 

 そんな混乱の局地に居たからだろうか。その人物が次に取った行動に全く反応できなかった。

 

「───うわあぁあッ!?」

 

 グンッ!と、肩を大男に掴まれたかのような力で引かれ投げ飛ばされる。それは技も何もない純粋な(りょ)力によるものだった。

 その蛮行は表通りに進もうとしていた俺を、灯りが無い裏路地へまるで引き返させるようだ。

 ゴロゴロと転がりながらなんとか受け身を取ろうとするが、なんの前触れもない突然のことであったために、満足にすることはできず身体の節々が痛みを発している。

 もしや、酒場の客が痛め付けに追って来たのかもしれない。『絶対に許さないリスト』に全員の顔は覚えているため、どこのどいつかを知るために顔を上げると、そこには予想外の人物の顔があった。

 

「よぉ、会いたかったぜ?ラウル・ノールドくんよォ?」

 

 ニヤついた笑みを浮かべながら見下ろしてくる男。その服装からして冒険者なのだろう。

 その男に向けて片膝を立てた不恰好の体勢のまま、俺は言葉が溢れ落ちるかのように自然と口が動いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だ……誰だ?お前は……?」

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