道徳や倫理とは関係ないところで生きる。
不覚にも風邪を引いてしまったと父親に言ったら「腹切れ」と言われた。母親は麻雀に出かけた。明日はボーリング大会があるらしい。誰も私の心配をしない。坂爪家全体のアトモスフィアが「風邪を引いたお前が悪い」と言っている。タイニーティムのセカンドアルバムを聴いた。普通、日本では調和がよしとされる。でしゃばることは御法度で、全体のバランスが取れていることをよしとする。だが、タイニーティムの楽曲は、出演者全員がでしゃばっている。圧倒的で、容赦がない。
新潟と熱海はイギリスとイタリアくらい違う。暇だからブックオフとセカンドストリートに行く。新潟と熱海は本や服の品揃えが全然違う。新潟の方が断然暗く、地中海的なのどかさは皆無で、俺はここで生まれたんだなと思った。熱海は海から日が昇る。新潟は海に日が沈む。澁澤龍彦の快楽主義の哲学を買った。十歳の頃、姉に無理やり読まされた本だ。序文を三島由紀夫が書いている。
サド裁判で勇名をはせた澁澤氏というと、どんな怪物かと思うだろうが、これが見た目には優型の小柄の白皙の青年で、どこかに美少年の面影をとどめる楚々たる風情。しかし、見かけにだまされてはいけない。胆、かめのごとく、パイプを吹かして裁判所に悠々と遅刻してあらわれるのみか、一度などは、無断欠席でその日の裁判を流してしまった。酒量は無尽蔵、酔えば、支那服の裾をからげて踊り、お座敷小唄からイッツァ・ロングウェイまで、昭和維新の歌から革命家まで、日本語、英語、フランス語、ドイツ語、どんな歌詞でもみな諳で覚えているという怖るべき頭脳。珍書奇書に埋もれた書斎で、殺人を論じ、頽廃美術を論じ、その博識には手がつけられないが、友情に厚いことでも、愛妻家であることでも有名。この人がいなかったら、日本はどんなに淋しい国になるだろう。澁澤龍彦「快楽主義の哲学」文春文庫
ナチュラルに人の道を踏み外している気がする。自分が道を踏み外すほど、他人のことをとやかく言えなくなる。世間に怒りを覚える時は「人として」という道徳や倫理を持ち出している時だと思う。だが、彼女が暴漢に襲われた時、暴漢に道徳や倫理を説いても意味がない。道徳や倫理が抑止力にならない人間相手に、通用するものは力だと思う。法律などの国家的な力ではなく、個人的で具体的な力。大事なものを守るための行動規範。道徳や倫理を超えたところにある、自然界の掟。
山口組四代目組長を射殺した石川裕雄は、一年以上地下に潜伏し、福岡のゴルフ場でプレーしていたところを逮捕された。石川はゴルフ焼けで顔がつやつやし、体重も五キロ増えていた。潜伏の期間、ずいぶんと優雅な暮らしをしていた。逃亡というよりも、最後の娑婆生活を楽しんでいた風情である。逮捕された石川は、公判で一切の弁明をしなかった。私がやりました。極刑をお願いします。そう陳述したと伝えられている。石川のふてぶてしさを尊敬する。末期癌だろうがなんだろうが、動ける時に動く。生きるのに必要ない知識ばかりが蓄えられる。この人生を気に入っている。この人がいなかったら、日本はどんなに淋しい国になるだろう。困るのではなく、淋しくなる。あなたがいなくなっても生活は困らないばかりかよっぽど安定するが、淋しくはなる。めちゃめちゃ淋しくはなる。そんな生き方はいいなと思った。
おおまかな予定
3月15日(土)神奈川県横浜市界隈
以降、FREE!(呼ばれた場所に行きます)
連絡先・坂爪圭吾
LINE ID ibaya
keigosakatsume@gmail.com
SCHEDULE https://tinyurl.com/2y6ch66z
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