英雄(ベル・クラネル)を嫌いになるのは間違っているだろうか


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作:カゲムチャ(虎馬チキン)
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30 スピネル=ニーズホッグ


ベル被害者同盟。


「……想定してた中で二、三番目にヤバい展開」

 

 眼前に立ち並ぶオラリオ最強派閥を前に、スピネルはポツリとそう呟いて、彼らの接近を感知した時から用意していた手札を切った。

 ニーズホッグの頭の上に飛び乗り━━緑色の肉で強引に自身と邪竜を繋げる。

 

「グォオオオオオオオオオッッッ!!!」

 

 ニーズホッグが咆える。

 爆弾としての運用がメインとはいえ、単純なカタログスペックだけなら、レベル7相当。

 目の前の最強と同格の怪物が、スピネルという操縦者を得て、理知と暴虐を兼ね備えた化け物へと変じた。

 これなら命と引き換えの力を温存しつつ、強敵達を相手にできる。

 

「やりなさい、オッタル!」

「オオオオオオオオオオオッッッ!!!」

 

 そんな化け物に、冒険者は立ち向かう。

 女神の命令に従い、最強の冒険者が動き出す。

 身長2Mを超える巨漢の猪人(ボアズ)の髪が逆立ち、獣のような咆哮を上げた。

 

「『戦猪招来(ヴァナ・アルガンチュール)』!!」

 

 最強の男は、初手から奥の手を使った。

 膨大な体力と精神力(マインド)を持っていかれる代わりに、擬似的な位階昇華(ランクアップ)を果たすがごとくステイタスを超強化するスキルを発動。

 疑似レベル8。

 力の化身となった(オッタル)が駆けた。

 

「オオオオオオオオオオオッッッ!!!」

 

 砲弾のように飛び出し、ニーズホッグに漆黒の大剣を振りかぶる。

 スピネルは邪竜を操って、肥大化させた腕による爪でオッタルを迎撃。

 男の大剣と邪竜の爪がぶつかり……ニーズホッグの右腕が消し飛んだ。

 

「ッ!」

 

 オッタルの冗談じゃない強さに、スピネルは冷や汗をかく。

 ニーズホッグより彼の方がよっぽど化け物だ。

 このままでは幸運とか関係なしに、圧倒的なパワーで計画が破壊される。

 

(ちょっと早すぎるけど……仕方ない!)

 

 最強に対抗するべく、スピネルは切り札を使った。

 術式によってリンクした他六体の精霊の分身に合図を送る。

 ニーズホッグの頭上に魔法陣が現れ……その瞬間、ニーズホッグが変異した。

 

「ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!」

「ッ!?」

「な、なんだ!?」

 

 邪竜が凄まじい咆哮を上げる。

 突撃しようとしていた強者達の足を強制停止させてしまうほどの、尋常ならざる咆哮(ハウル)

 魔法陣から膨大な魔力がニーズホッグに注ぎ込まれる。

 オラリオを消し飛ばして余りあるほどの圧倒的な魔力(エネルギー)が。

 それを爆弾炸裂のために溜め込むのではなく、送られてくる端から消費して純粋な能力値の強化に使い、ニーズホッグは次元違いの化け物へと変じる。

 

 肉体の強度的な問題で、膨大すぎる魔力に見合うほどの超々々強化はできない。

 身の丈に合わな過ぎる力を使うと、スピネルのように一瞬で命を使い果たしてしまう。

 それでも、肉体が内側から炸裂していくのを、超強化された再生力で強引に相殺し、通常戦闘可能な限界ギリギリまで力を詰め込めば、ニーズホッグは位階の壁を二段階は突き破って昇華した。

 

「グォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!」

 

 位階の壁を二つ飛び越え、邪竜が到達した領域は━━推定レベル9相当。

 今のオッタルすら超える力。

 消滅させられた右腕を瞬きの間に再生させ、超強化ニーズホッグは、その右腕でオッタルを横から薙ぎ払った。

 

「ぬぅ……!」

 

 そんな化け物の攻撃は、さすがの最強の冒険者でも踏ん張れず、吹き飛ばされる。

 彼は超硬金属(アダマンタイト)の壁をぶち破って、どこかへ飛んでいった。

 

「グギュオオオオオオオッッッ!!!」

 

 更に、ニーズホッグの口の中に魔力の塊が発生。

 竜の代名詞、ブレスの予備動作。

 供給される魔力を溜め込む前にあらゆる能力の強化に使っているため、冒険者を全滅させるほどの殲滅爆弾としての威力は無い。

 だが、目の前の空間をフレイヤ・ファミリアごと消し飛ばすくらいならできる。

 

「させないわ! 迎撃!!」

「「「ハッ!」」」

 

 主神の命令により、フレイヤ・ファミリアの魔導士達は、迎え撃つための魔法の詠唱を開始。

 オッタルを除いても最高の人材ばかりが揃う派閥が、本気で邪竜の一撃に立ち向かう。

 

「「「━━━━━━━━━!!」」」

 

 ブレスが放たれた。

 無数の魔法が放たれた。

 何十人もの上級冒険者達が力を合わせた極大魔法と、六体の大精霊から魔力を供給された邪竜のブレスがぶつかる。

 押しているのは……ニーズホッグ。

 

「させん!!」

 

 だが、そこで最強が戻ってきた。

 【猛者】オッタルは、先の攻防におけるダメージなど無いかのように機敏に動き、仲間達が威力を削いだブレスの前に飛び出す。

 

「『銀月(ぎん)の慈悲、黄金の原野、この身は戦の猛猪(おう)を拝命せし。駆け抜けよ、女神の真意を乗せて』!」

 

 そして、オッタルもまた詠唱。

 彼の持つ唯一の魔法の力を手に持った大剣に込めて、振るう。

 

「『ヒルディス・ヴィーニ』!!」

 

 黄金の剣撃が放たれた。

 『最強』の一撃がブレスを割り、ニーズホッグの前に一本の道が出来上がる。

 

「アレン!!」

「言われるまでもねぇ!!」

 

 切り開かれた道を、流星が駆けた。

 フレイヤ・ファミリア副団長にして、オラリオ最速の男。

 【女神の戦車(ヴァナ・フレイヤ)】アレン・フローメル。

 彼はスピネルを戦慄させ、命を削る本気での迎撃を覚悟させるほどの速度で迫り……邪竜の頭部と一体化したスピネルになど目もくれず、ニーズホッグの右肩を穿った。

 

「……ああ、なるほど」

 

 戦闘開始から1分弱。

 オッタルの脅威に思考を割かなければならなかったスピネルは、ここでようやく彼らが他の精霊の分身を無視して、ひいてはオラリオ崩壊の可能性を無視してまで、脇目も振らずにここへ来た理由を察した。

 まず大前提として、あそこで堂々と眷族を従えている女神フレイヤは偽物(・・)だ。

 彼女からは、神ならば必ず持っているはずの『神威』をまるで感じない。

 

 では、何故そんな偽物がわざわざ現れたのか。

 恐らく、スピネルの目を本物から逸らすため。

 もしくは、本物の女神フレイヤとの繋がりが『捜索』に必要だったから。

 アレンはニーズホッグの右肩に緑肉で固定された三人のうち、迷わず『シル・フローヴァ』だけを救い出した。

 彼女の正体は神で、しかもフレイヤ・ファミリアの元団長が経営する店で働いていた。

 ここまでくれば、もうバカでもわかる。

 本物の女神フレイヤは、シル・フローヴァだ。

 

「もっと早く気づきなよ、私……」

 

 まさか最強派閥の主神が、あんな小さな食堂で働いているとは思わなかった。

 ヘスティアのようにバイトをしてるだけの、どこかの弱小派閥の神だとばかり思っていた。

 それでもヒント自体はあったのに、オッタルの気迫に呑まれて、戦闘に思考回路を全部持っていかれていた。

 駆け引きで負けた。

 やはり、自分程度の存在など、歴戦の冒険者達にはあらゆる意味で及ばないのだ。

 

「でも」

 

 遅くとも気づけたのなら、ここからは弱点を集中狙いできる。

 スピネルはニーズホッグに防御を捨てさせ、捨て身の攻撃でシルを狙わせた。

 シル(ヒロイン)自身は『幸運』によって守られるだろうが、守る側の眷族達はタダでは済まないだろう。

 ロキ・ファミリアの【超凡夫(ハイノービス)】ラウル・ノールドを始めとしたメンバー達は死んだ。

 あのふざけた幸運が守るのは、あくまでもベル・クラネルと交流の深い者のみ。

 本当にエコヒイキが過ぎるが、今だけはそれに救われる。

 

「グォオオオオオオオオオッッッ!!!」

「くそっ……!?」

「ついにバレたか……!」

 

 案の定、フレイヤ・ファミリアは攻撃を捨ててでも、シルを守ることに全神経を集中した。

 神が死んで天界へ強制送還されれば、眷族の恩恵は封印される。

 次の主神を見つけるまでは、恩恵を授かる前の一般人同然の状態へと戻ってしまう。

 つまり、シルが死んだ時点でフレイヤ・ファミリアの負けだ。

 彼らはシルを守る幸運の存在なんて知らないのだから、そりゃ是が非でも守るに決まっている。

 

「ガァアアアアアアアアッッッ!!!」

「くそっ……!?」

「あぎゃ!?」

「ぐっ!?」

 

 ニーズホッグが暴れる。

 本来、この邪竜は鈍重だ。

 極大ブレスで冒険者を全滅させる機能のみを追求した存在。

 そうなるはずだった。

 

 しかし、黒幕エニュオがスピネルの提言を聞き入れ、彼女の肉体に刻んだ追加術式を鍵として挿し込むことで、ニーズホッグは爆弾ではなく、六円環の魔力を自身の強化に使って暴れる、次元違いの化け物としての力を発揮する。

 穢れた精霊の加護だけでなく、精霊と親和性の高い妖精(エルフ)の血、それも人間(ヒューマン)の血によって汚れた血が流れていることが幸いした。

 母に『薄汚い血』と蔑まれた半妖精。

 だからこそ、薄汚い妖精だからこそ、穢れた精霊の術式の一部として機能する。

 あまりにも皮肉すぎる話。

 

「コホッ」

 

 だが、こんな無茶は当然、彼女の体に負担をかける。

 自前の本気を出すよりは遥かにマシだが、それでも少しずつ、少しずつ、魔石に入ったヒビが広がっていく。

 命がすり減っていく。

 それでも、こんな小娘が最強の冒険者達とまともに戦えるだけの力の代償と考えれば、安すぎるくらいだ。

 

「ッ……!」

 

 けれど、所詮はまともに戦える止まり。

 スピネルが苦しげに呻く。

 戦況は、一応優勢と言えば優勢だ。

 余波を食らっただけでも余裕で死ねる特大のお荷物。

 そんなものを抱えているという相手の隙に全力で付け込み、ニーズホッグに供給される膨大な魔力を頼りに、超強化された再生力、身体機能、ブレスに任せたガン攻め。

 

 推定レベル9相当の化け物の攻撃から、余波すら通さずに主神を守らなければならない。

 大嵐の中、虚弱体質の足手まといを、風や雨の一滴からすら守れと言っているようなものだ。

 無茶にもほどがある。

 こんな理不尽すぎるハンデがあっては、【女神の戦車(ヴァナ・フレイヤ)】の超スピードも、【白妖の魔杖(ヒルドスレイブ)】の叡智も、【黒妖の魔剣(ダインスレイブ)】の戦闘技能も、【炎金の四戦士(ブリンガル)】の四位一体の神業連携も、まともに機能しない。

 

「『我が名は黄金。不朽を誓いし女神(かみ)片腕(うで)

 焼かれること三度(みたび)、貫かれること永久(とわ)に。

 炎槍(えんそう)の獄、しかして光輝は生まれ死を殺す。

 (くる)え、(くる)え、(くる)え。

 我が身は黄金。蘇る光のもと、果てなき争乱をここに』━━『ゼオ・グルヴェイグ』!!」

 

 オラリオ最高峰のヒーラー【女神の黄金(ヴァナ・マルデル)】ヘイズ・ベルベットの規格外の回復魔法が、主神の盾となった戦士達を不死者のごとく蘇らせる。

 彼女を筆頭とした、フレイヤ・ファミリアが誇る治療師(ヒーラー)集団【満たす煤者達(アンドフリームニル)】がフル稼働する。

 

 最強の戦士達が我が身を盾とし、最高峰のヒーラー達が彼らを強引に立ち上がらせ続け、それでようやく虚弱体質の足手まとい(フレイヤ)を風や雨の一滴からすら守れという無理難題を、どうにか達成できている状態。

 主神を逃がす余裕すら無い。 

 大量の肉壁のシェルターから出たら、その時点でアウトだ。

 シェルターごと動かす?

 下手に壁を動かしてみろ。空いた隙間から破壊の雨が入ってきて終わるぞ。

 

 神々の言葉を借りるなら『無理ゲー』か『クソゲー』としか言えない状況。

 しかし、この状況を避けることは難しかっただろう。

 絶対に失ってはならない主神を攫われ、かつて同格のロキ・ファミリアが壊滅しかけた、地の利を完全に握られているという状況に自ら飛び込むしかなかった。

 ここは怪物の口の中だ。

 剥き出しの弱点を狙われ(舌で転がされ)超強化邪竜に一方的に攻められる(牙で噛み砕かれる)

 圧倒的不利は最初から確定していた。

 ただ、それだけの話。

 ……だが。

 

「オオオオオオオオッッッ!!!」

「ヘバってんじゃねぇぞ、テメェら!!」

「堪えろ!! フレイヤ様に傷一つ付けさせるな!!」

「「「うぉおおおおおおお!!!」」」

 

 彼らの気迫が凄まじい。

 それだけ恩恵の剥奪を恐れている……違う。

 純粋な主神への忠誠心。

 スピネルが何よりも大切にしたかった、なのに黒い炎に呑まれて灰となってしまったもの。

 彼女が理想とした強さ。

 

(……羨ましい)

 

 スピネルは心からそう思った。

 ベルを見た時の黒い嫉妬心じゃない。

 純粋に眩しい。

 

 彼らの数は、戦闘開始当初から随分と減った。

 レベルの低い者達から順に死んでいき、残った者達にも負傷と疲労が無視できないレベルで蓄積している。

 【猛者】ですら傷だらけだ。

 最速の【女神の戦車(ヴァナ・フレイヤ)】など、自慢の足がひしゃげて千切れている。

 最高峰のヒーラー達による回復ですら間に合っていない。

 

 けれど、彼らは倒れない。

 他ならないスピネル自身が、心のどこかで、こんなズルい小娘相手に倒れてほしくないと思ってしまっている。

 シルを守る『幸運』の補正も含まれてはいるのだろうが、そんなものが無くても彼らは倒れないと、理屈ではなく魂が叫んでいる。

 

(我慢比べは分が悪い……!)

 

 フレイヤ・ファミリアが潰れるのが早いか、スピネルが負荷に耐え切れずに死ぬのが早いか。

 そんな我慢比べでは勝てないと感じた。

 いや、たとえ勝てたとしても、このままではベルと戦えるだけの力が残らない。

 それじゃ意味が無い。

 何か、何かもう一押しが欲しい。

 ……そう思っていた、その時。

 

「『燃え尽きろ、外法の業』」

 

 そんな詠唱が聞こえた。

 

「『ウィル・オ・ウィスプ』!!」

「グギャアアアアアアアアアアアアアア!!??」

 

 ニーズホッグがチャージしていたブレスが弾けた。

 魔力暴発(イグニス・ファトゥス)

 自らの魔法を制御できない未熟者が引き起こす自爆現象。

 それを誘発させられ、ニーズホッグの顔面が吹き飛び、スピネルにまでダメージがきた。

 ブレスの威力が強すぎるからこそ、自爆した時のダメージも凄まじい。

 邪竜と怪人の再生能力をもってすれば致命傷にはほど遠いが……実質ブレスを封じられたのは痛い。

 

「今のは……!」

 

 魔力暴発を誘発する魔法。

 スピネルはその魔法の使い手に心当たりがあった。

 偏執的なまでに集めた、あの(・・)派閥の情報の中にあった。

 

「種火がデカいと、花火もデカくなるな!」

 

 そこにいたのは、大剣を背負った赤髪の青年。

 あの忌々しい場所で笑っていた連中の一人。

 ヘスティア・ファミリア団員、【不冷(イグニス)】ヴェルフ・クロッゾ。

 彼がいるということは当然……。

 

「エイナさん! シルさん! ッ!? ウィーネまで……!?」

 

 現れた。とうとう現れた。

 ニーズホッグの肩に埋まっているエイナとウィーネ、フレイヤ・ファミリアに守られているシル。

 彼女達を見て心配そうな、それでいて必ず助けるという決意に満ちた顔をした、世界に愛された英雄。

 

「ベル、くん……」

「ベルさん……!」

「ベル!!」

 

 彼の姿を見て、衰弱したヒロイン達の目に希望が宿る。

 彼ならなんとかしてくれると、そんな信頼に満ちた目だった。

 

「アハハ……!」

 

 そして、スピネルは嗤った。

 仲間達、更に助っ人と思われる強そうな者達を引き連れて現れた英雄様を見て、歓喜の表情で嗤う。

 

「待ってたよ……! ベルゥゥ……!!」

 

 ベル・クラネル。

 世界に、運命に愛された少年が、下界(せかい)の命運をかけた決戦の舞台に現れた。

 世界を救うために、ヒロイン達を助けるために。

 

「来てくれると思ってた……!!」

 

 たとえ、そこに英雄殺しの呪いが待ち受けていたとしても、彼は必ず現れると思っていた。

 だって、『英雄』とはそういうものだから。

 相応の力を手にした以上、必ず最も盛り上がる舞台に上がらなければならない。

 

 彼はいつもいつも、必ず美味しいところを持っていった。

 シルバーバック、片角のミノタウロス、漆黒のゴライアス、黒いミノタウロス。

 なら、世界を滅ぼす巨悪の『切り札(ニーズホッグ)』なんて見逃すはずがない。

 彼を愛する運命が、彼を『主人公』にしたがっている誰かが、必ず彼をここに連れてきてくれると信じていた。

 

 強大な敵(スピネル=ニーズホッグ)は、最強の冒険者達の奮闘によって弱った。

 呪いの発動を妨害できる仲間もいる。

 満身創痍とはいえ、最強の冒険者達もまだ戦える。

 

「ベル・クラネル……!」

 

 【猛者】オッタルが、ベルの名前を呼んだ。

 ああ、この男にすら名前を覚えられているのか。

 目をかけてくれている最強に助太刀し、この窮地から逆転勝利を収めた暁には、きっと一目置かれるどころではない称賛を受けるのだろう。

 実に美味しいシチュエーション。

 舞台裏の誰かの演出が光っている。

 

「さあ、始めよう!」

 

 忌々しい演出家を踏み潰そう。

 忌々しい英雄を踏みにじろう。

 丁寧に丁寧に作られた英雄譚(ステージ)をぶち壊そう。

 運命の都合で犠牲(踏み台)にされた端役の逆襲を見せてやろう。

 さあ━━壊れろ、機械仕掛けの英雄(ヘロス・エクス・マキナ)




ゴッド・ブレイズ・キャノンはロマン。
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