Vol.530「拝金主義VS貨幣の呪術的価値」
(2025.3.3)
【今週のお知らせ】
※「ゴーマニズム宣言」…ドナルド・トランプという人間は、ついにここまで完全な拝金主義者が現れたかと嘆息するほどの「理念より等価交換のカネ」の人物だった。トランプには、カネ勘定以外の価値観が一切ない。人道主義的な感覚などない。敗者・弱者に対する同情心も全くない。「弱肉強食」の感覚しかない。なにより「国際法」を守る感覚が一切ない!そんな感覚でウクライナ戦争を終わらせようとしたって、ゼレンスキーが飲めるわけがない。本来、お金で「等価交換」ができないものもあるはずではないか?「電子マネー」や「仮想通貨」は“信頼”できるものだろうか?この機会に「貨幣と価値観」について考えてみよう。
※泉美木蘭の「トンデモ見聞録」…華やかで強大な権力の中枢を抜けて、次期天皇と目されていた日々から、いつ朝敵として討たれるかもわからないという状況へと暗転。朝廷のあった滋賀の大津から、奈良の吉野山まで険しい山道を進む大海人の胸中には、運命に対する覚悟を持ちながらも、ぬぐい切れない悲壮感がつきまとっていた。一方、大海人が去った近江大津の朝廷では、太政大臣・大友皇子が、そのブレインとして任命された重臣らとともに政務を仕切っていたが、天智天皇は病床で報告を受けながら、気が気ではなく……。
※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」…マルちゃん製麺の赤いきつねのWeb限定CMが、フェミニストから「性的に見える」と批判が集まり炎上した件をどう思う?10年続くようなロングランのドラマシリーズと、俳優の「老い」をどう考える?「将来」を考えるのと「今」を生きる…人生はどのような生き方が果たして「良い」のか?『おぼっちゃまくん』、インド用に書いた脚本を他の漫画家が日本で漫画にして出版するのはアリ?日米共同記者会見をどう見た?伊藤詩織さんのドキュメンタリー映画が日本で公開未定なのはやむを得ない?…等々、よしりんの回答や如何に!?
1. ゴーマニズム宣言・第559回「拝金主義VS貨幣の呪術的価値」
ドナルド・トランプという人間は、ついにここまで完全な拝金主義者が現れたかと嘆息するほどの「理念より等価交換のカネ」の人物だった。
トランプには、カネ勘定以外の価値観が一切ない。人道主義的な感覚などない。敗者・弱者に対する同情心も全くない。「弱肉強食」の感覚しかない。
なにより「国際法」を守る感覚が一切ない!
そんな感覚でウクライナ戦争を終わらせようとしたって、ゼレンスキーが飲めるわけがない。トランプはウクライナ戦争を終結させてノーベル平和賞までもらおうと期待していたようだが、これほどノーベル平和賞にふさわしくない人間などいない。
トランプは、ただただいつでも「等価交換」できるものがあるのかどうかということを問い詰めていくだけだ。「等価交換」が成立するまでレアアースの権益を得られなければ、ウクライナなんかどうだっていいし、ロシアがどれだけ国際法を無視した侵略をしていようが、知ったこっちゃない。むしろプーチンと仲良くしておいた方が得だったら、何の躊躇もなくロシアの味方もしようというわけだ。こんなのにノーベル平和賞なんかやったら大変なことになってしまうから、その意味からだけは、ゼレンスキーとの会談が決裂してよかったとも言えよう。
わしは最近、お金で「等価交換」ができないものもあるはずだということを強く訴えたいと思っていた。
そこでこの5月にもインドで放送される新作アニメ『おぼっちゃまくん』では、「ともだちんこ」に代わる決まり文句として「フレンドリッチ」というのを考えた。
最小単位の1円硬貨を友情の証として使い、友達をつくることが最もリッチなことであり、これは「等価交換」できるものではないということを示そうとしたのである。
まだインドでの放送も始まっていないのだが、トランプの拝金主義の価値観を見ていると、わしが狙っていたテーマは、見事にトランプの「貨幣と価値観」の問題に嵌っていて、まさに予言的中という按配だ。
「SPA!(2月11日・18日合併号)」掲載の『ゴーマニズム宣言』にも描いたが、わしは子供の頃、正月に母の実家のお寺に行くと、婆ちゃんに「お賽銭集めて来なさい」と言われて、妹と一緒に本堂や毘沙門堂や裏山の八十八か所を回って賽銭を集めていた。
母方の婆ちゃんはその中からお札だけ回収して、小銭をわしと妹にくれた。それは子供にとっては相当の金額だったのだが、そのお金はもう屈託なく漫画を買ったりおもちゃを買ったりして、全く躊躇せずに使っていた。
ところが、父方の婆ちゃんがお年玉にくれた五百円札には、ちょっとショックを受けてしまったのだ。
こんなお金がこの婆ちゃんから出てくるとは思いもしなかった。わしと妹を寝かしつけてもらう時に、おとぎ話を聞かせてくれるだけで十分だったのに。(『よしりん御伽草子』にエピソードを掲載)
わしが行ったら「よしのりちゃ~ん、よしのりちゃ~ん」ってすごく喜んで、どんどんおはぎを出して来る婆ちゃんだった。一個食ったら腹いっぱいになって、もう何も食べられなくなるくらい大きなおはぎだったのだけれど、「もっと食べなさい」とか言ってどんどん持って来るような、本当の田舎の婆ちゃんだった。
近くにお店もないような場所だし、お金なんか持っているとは思ってもいなかった婆ちゃんなのだが、正月に孫が来たら、お年玉をやりたいと思ったのだろう。封筒に五百円札が入っていただけでもびっくりしてしまって、貯金箱に入れたまま、絶対に使えない五百円札になってしまい、今もそのまま持っている。このお札と等価交換できるものなんかないという心理状態になってしまったのだ。
お金というものは割り切って言えば、現代では国家が担保しているものだ。国家の保証があるから等価交換できるのである。
だから国家が担保さえしていれば、国債はいくら発行してもいいとか、外国債じゃなければいいとか、いろいろ言う知識人がいるわけだが、考えてみれば、国家がない時代でも貨幣は存在したのではないだろうか?
以前は、原始時代には「物々交換社会」があって、そこから貨幣が発生してきたというアダム・スミスの唱えた説が通説だったが、近年ではその説は否定されているらしい。
現在ミクロネシア連邦に所属するヤップ島には、巨大でとても持ち運べない石の貨幣「フェイ」があった。漫画の『ギャートルズ』などにも出てきて印象に残っているやつだ。
フェイの直径は30cmくらいから3m近くまで、大きい物は重さ1tを超え、そのいずれもがわざわざ遠い島から切り出され運ばれていたという。もちろんこれは重すぎて大きすぎて、持ち運ぶことなどできないし、取引をしたとしても動かしたり相手に手渡したりすることはできない。
ではどのように使っていたかというと、島内で土地の取引などの高額の決済や、結婚の結納金など相手に誠意を見せなければならない場合に、フェイの所有者が、代金として自分の所有するフェイの所有権を相手に譲渡すると宣言し、譲られた人はこれを記憶し、フェイを所有していることを子々孫々に語り継ぐのだ。そして、それだけで取引が成立していたという。



購入者のコメント
72お金を物体として見たり扱ったりすることで、関わる人の記憶が立ち上り、物語となり、自分との人間的つながりが意識されるのですね。それはお金をただの画面上の数字として見るより遥かに人間性を身につけることにつながるのですね。「フレンドリッチ」
という語の意図が、正しく世界に広まっていって欲しいと思います。私自身振り込みや電子マネーから完全に離れることはできませんが、できるだけ形あるお金のやり取りは手放さずやっていくつもりです。
トランプはウクライナの他、アフリカのレソトにも侮蔑的な言葉を吐いていましたが、中小の国にも生きる人々の社会があり、金には換えられない冒してはならない尊厳があるということを理解できない人間なのでしょう。こんな荒れ地のような人格の者が世界第一の超大国のリーダーということに恐怖を覚えますし、民主主義というもののある種の極点がこのようなものであることに空虚感も覚えますが、チワワのように狼狽えず、反骨心を持って、微々たるものであっても個人としてできる限り立ち向かっていこうと思います。それが、かつて列強諸国の横暴に立ち向かった先祖の精神を受け継ぐことにもつながっているはずです。
木蘭師範の簡潔にして緊張感ある文体で、お話にぐいぐい引き込まれていきます。運命の巨大な弓は大きく引き絞られました。その矢が放たれる時、果たしてどのような轟音が響くのでしょうか?その時さららはどう感じ、どう考え、どう行動することになるのか······?実は全然知識がないため、楽しみです。
ブログでお書きになっていた、壬申の乱について資料に当たることの大変さ(しかも締切を控えての)に同情しながらも、「沼る」ことによって得られる愉楽を裏山鹿と思います。
木蘭さんのトンデモ見聞録・第354回「女帝・持統天皇烈伝〈7〉天智天皇、崩御す」拝読しました。
皇位継承を辞退して出家し、吉野の地へ逃れた大海人皇子。
頼りの弟・大海人皇子を失った天智天皇、自分のもとに残ったのが有力な後ろ盾の無い大友皇子なので不安でたまらない。
そんなに不安なら大海人皇子に「お前しか私の後を任せられる者はいない!」と手紙を書いて使者に届けさせればよかったのに。
天智天皇の崩御後、大海人皇子の読み通り、今まで抑え込まれていた豪族たちの不満が表面化してしまいます。
持統天皇列伝を読んでいると、まるでその時代を生きているかのような気持ちになります。
次回、とうとう開戦。
ゴーマニズム宣言・第559回「拝金主義VS貨幣の呪術的価値」拝読しました。
トランプがウクライナ戦争を本気で終わらせたいのなら、ウクライナを侵略したロシアに対し「ウクライナ侵略をやめろ」と言えばいいのです。
最近言い出したようですが、遅すぎます。
ゼレンスキー大統領にキレてる場合かっ!!
今もロシアはウクライナへの攻撃をやめません。
これではウクライナが戦争を終わらせたくても、終わらせられません。
トランプはプーチンにさっさと赤っ恥かかされればいいのです。
ドラマ「相棒」シーズン5「スウィートホーム」で、実の娘たちにすら「金の亡者」と罵られた男が隠していた財産が「幼い娘たちが描いた絵やぬいぐるみなどの思い出の品」だったというエピソードがありました。
金の亡者と言われた男にも、金よりも大切なものがあったのです。
トランプにはあるのでしょうか。
あったとして、それが政治の場で生かされなければ意味がないのですが。