ダンジョンにひたすら潜るのは間違っているだろうか?


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作:宮枝嘉助
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第4話 【ファミリア】探し


 

 

 

 

「はあ〜……」

 

 オラリオの通りをトボトボと溜め息を吐きながら歩く影が1つ。

 それは、白髪の頭と深紅(ルベライト)の瞳がトレードマークの少年──ベル・クラネル。

 一通りの観光を終えた彼は、ファミリア探しに勤しんでいたのだが、思いの外難航していた。

 

 不審者(アルゴ)の言う事を聞かなかったのか?

 否、この素直な少年が人の助言を無視する訳が無い。

 むしろ、彼が言っていた通りに眷族を持っていない神を探し、直接声を掛けまくっていた。

 だがそれでも断られてしまったのだ。

 

 大体、序章(プロローグ)で述べた神の目的はあくまで真面目な神の場合であって、大半の神はただの娯楽目的で下界に来ている。

 そんな中、眷族を持っていない神というのは()()()()()()()()()()()()()()()神が大半なのだ。

 ただの物見遊山で来ているのにファミリアなんていちいち作るつもりが無い。つまりはそういう事だ。

 

 

 

 

「そこの貴方、元気が無いわね!」

 

 

 

 

 その時、不意に後ろから声を投げかけられた。

 ベルが振り向いた視線の先には、美しい赤髪を後頭部で束ねている()()が居た。

 

「え? 貴女は……?」

「あら? 清く美しい私を知らないなんて、貴方、この都市は初めて(おのぼりさん)?」

「はい、すみません。オラリオには一昨日来たばかりで……」

「ならしょうがないわね! 私は……って、貴方……」

 

 薄()の胸を張りながら活発さを感じさせる声で話し掛けてくる女性が、ベルの顔を見て硬直する。

 それはまるで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……あ、あの?」

「一応訊くけど、貴方、本当に()()()()()()()()()()()()()()のよね?」

「は、はい! えっと、どうしてそんな事を?」

「──あ、あ〜ゴメン、気にしないで! それより、さっき凄く肩を落としてたけど、どうしたの?」

 

 女性は『人違い』と判断したのか、それとも『何か』を直感的に悟ったのか、話を変えた。

 ベルはその事にしばらく訝しんでいたが、元々声を掛けられる程に心配を掛けていた事を思い出し、打ち明ける事にした。

 

「実は僕、冒険者になりたくてオラリオに来たんです。それで、色々な神様にお願いしてみたんですけど、中々受け入れてもらえなくて……」

「そう……貴方は、冒険者になってどうしたいの?」

「えっと……僕は『英雄』になりたい……いいえ、違う、僕は『英雄』になります」

「……それは、何の為?」

「伯母さ(『【福音(ゴスペル)】』)……じゃなかった、お義母さんを笑顔にする為に」

()()()、ね……()()()()……」

「??」

 

 ベルの目的とその志望動機を確認した女性は、何かを考え込むような素振りを見せる。

 ベルはその反応の意味がさっぱり分からず、困惑する一方だ。

 

「……そういえば、清く美しい私の名前を言ってなかったわね。私はスカーレット・ハーネルよ! よろしくね、フフーン!」

「はい、よろしくお願いします。スカーレットさん……って、ん? スカーレット・ハーネル……【紅の正花(スカーレット・ハーネル)】って、ええええええええ!?」

 

 女性の反応の意味はさっぱり分からなかったが、女性の正体を知ったベルは驚嘆した。

 正体を隠す気は全く無く、()()()()()()()()()()をしたかっただけだった【紅の正花(スカーレット・ハーネル)】ことアリーゼ・ローヴェルはあっさりと嘘を認める。

 

「あら? もうバレちゃった☆」

「いやいや、だって【紅の正花(スカーレット・ハーネル)】のアリーゼ・ローヴェルさんって言ったら滅茶苦茶有名人じゃないですか!?」

 

 アリーゼ・ローヴェルは2つの意味で非常に有名である。

 

 まず、本人が最強の女性冒険者の一角であるという事。

 現在、Lv.6に到っている女性冒険者は彼女を含めて7名。その中でも【()()】と並んで『女性最強』の談議で名前が挙がるのが彼女だ。

 

 そしてもう1つは、彼女が所属するファミリア。

 『正義の眷族』──【アストレア・ファミリア】は、構成人数がわずか()()()でありながら全員が上級冒険者であり、その内11名が第一級冒険者に到っているという少数精鋭のファミリアである。

 第一級冒険者の数だけなら【ロキ・ファミリア】や【フレイヤ・ファミリア】よりも多く、()()()の第一級冒険者が居る【ガネーシャ・ファミリア】に次いで第2位だ。

 

「そうそう、そんな有名で完璧な美女である私が名乗ったんだから貴方も()()()()()を名乗りなさい!」

「いや僕が見破っただけで別にアリーゼさんは名乗ってませんけど!? 僕の名前はベル・クラネルです!」

「そう、()()、ね……よろしくね、ベル!」

「は、はい! ……というか何ですか『本当の名前』って……僕ってそんな嘘つきに見えます!?」

「ううん、全っ然。輝夜風に言うなら『糞雑魚(クソザコ)』ね!」

「酷い!? ……って、え? 輝夜さんって、ええ??」

 

 輝夜の名も聞いた覚えがあるベルは、噂に聞く彼女の容姿と『輝夜風』だという言動が全く一致せずに混乱する。

 

「じゃあベル、取り敢えず私について来なさい。主神(アストレア)様に会わせてあげるわ」

「はい! ……ん? ぼ、僕が【アストレア・ファミリア】に!?」

「貴方の『正義』はさっき聞かせてもらったわ! 私としては合格よ! 後はアストレア様の言葉次第ね!」

「え、えええええええええええええっ!?」

 

 驚くベルの手を取り、アリーゼはずんずん進む。

 ベルは女性だらけのファミリアに入団するかもしれない事に対する期待や緊張、そしてアリーゼの手の温かみで顔を真っ赤に紅潮させながら『星屑の庭』へと連行されるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──▲──▶──▼──◀──

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、団長様。どうしたんですか、その殿方は……──」

「オイオイ、いい歳してナンパでもして来た……のか……──」

「なっ!? アリーゼ、男性をここに連れ込むな……んて……──」

 

 ベルがアリーゼと共に瀟洒な白い館の玄関を通り抜けると、出迎えたのは3人の個性的な女性達だった。

 まず1人目は、極東風の着物に身を包んだ黒髪の女性。所作の1つ1つから気品が溢れ、とてもじゃないが冒険者(たたかうもの)には見えない。

 次いで2人目は、桃色の髪が特徴的な小人族(パルゥム)の女性。可愛らしい外見とは裏腹に粗野な言葉遣いが目立つ。

 最後に3人目は、腰まで届く金髪が輝く程に美しいエルフの女性。その言動からは潔癖さが見て取れる。

 

 そんな3人が、何故か3人共()()()()()()()()()()()

 よっぽど男である自分がこの『星屑の庭』に来た事がおかしいのだろうか? と、ベルは女性だらけの場所に居るという場違い感と緊張感を強く感じていた。

 

()()って言うそうよ、輝夜。ああ、街で見掛けて連れて来たって意味では確かにナンパね、ライラ。それに、()()()()()()()()()()()()()()()()()()別に問題無いわよね、リオン?」

「何……? それじゃあ、()()()……!?」

「はぁ? こんな()()があるってのかよ?」

「それは、()()()そうですが。しかし……っ!」

 

 ベルに降り注ぐ困惑と好奇が入り混じった熱い眼差し。

 何故()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、ベルには見当もつかない。だが、少なくとも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ような気がする。

 

「あ、あの! ベル・クラネルです! 『英雄』になる為にオラリオに来ました! よろしくお願いします!」

 

 取り敢えず挨拶だ。これから冒険者仲間になるのに悪印象を与えたくはない。

 ベルは頭を下げながら元気良く挨拶する。

 ──その時、少し空気が張り詰めた。先輩達を差し置いて『英雄』になるだなんて大それた事を言ったのがマズかったんだろうか?

 

「──なら、お手並み拝見と行きましょうかねぇ? ()()?」

「『英雄』になるって事は、アタシ達でも救えない奴も救っちまうって事だろ? ま、程々に期待しとくぜ」

「貴方が本気で『英雄』を目指すというのなら、貴方と私は『同志』であり『好敵手(ライバル)』だ。これからの貴方の『冒険』で見極めさせてもらいますよ、クラネルさん」

 

「おかえりなさい、アリーゼ」

 

 玄関口が姦しかったからなのか、一柱(ひとり)神物(じんぶつ)が出迎えにやって来た。

 例え無神論者であったとしても、彼女を神様ではないと認めない者は皆無であろう。

 それほどまでに、彼女の纏う空気は優しく、正しく、清らかで。胡桃色の長髪や深い藍色の瞳、なだらかでしなやかな肢体を包む純白の衣。慈悲、慈愛に満ちた物腰と、全てを慈愛で包んでしまうかのような双丘。

 これぞ正に『女神』である。そう高らかに宣言したくなる程、彼女は清廉潔白な美しさを持っていた。

 

「ただいま帰りました、アストレア様」

「は、はじめまして! お邪魔させてもらっています」

「はい、どうぞごゆっくり。……あら? 貴方は──」

 

 そんなアストレアですら、ベルを見て瞠目した。

 アリーゼは悪戯が成功した子どものようにニコニコしている。

 

「──……あ、えっと、僕はベル・クラネルです! ギルドの前の通りでアリーゼさんに会って、相談したらここに連れて来てもらって……」

「彼の『正義』ならこのファミリアに相応しいと思って連れて来ました! アストレア様、どうですか?」

「──……ベル、1つ訊かせて頂戴? 貴方は本当にここに入りたいと思っているのかしら?」

 

 アリーゼの問いを受けて、アストレアが1つの質問を出した。どうもアリーゼが半ば強引にここまで連れて来たような印象を受けたからだ。

 その質問に対して、ベルは今の素直な気持ちをそのままぶつける。

 

「えっと……勿論、入れて頂けるなら大変光栄な事だと思います。けど……僕は、僕と神様の2人3脚で始めて少しずつファミリアを大きくして、そしていつか貴女達に追い付き追い越したい!」

「──それでいいのね?」

「……はい、実はお義母さんも『私達を超えるというなら最初(いち)からファミリアを大きくしてオラリオのトップに立ってみせろ』ってオラリオに来る時に言ってたので……」

「……分かったわ。それなら、今度は私に付いて来てもらえないかしら? 丁度最近、()()が下界に降りて来た所なのよ。まだファミリアが出来たって話は聞いてないから、紹介してあげるわ」

「え、本当ですか!? アストレア様、ありがとうございます!」

 

 旅立つ前の義母の指示とアルゴの入れ知恵があったとはいえ、紛れもない本心を話したベルをアストレアは微笑ましく受け入れた。

 

「……そう。私もアストレア様と2人3脚でやって来たから、ベルも同じなのね。貴方のファミリアと一緒に『冒険』する時を楽しみにしてるわ!」

「あらいやですわ、団長様と同じと聞くだけで苛立ちが隠せませんわ……」

「アリーゼが2人居るとか、もう想像するだけでしんど過ぎるぜ」

「2人共、アリーゼを侮辱するな! アリーゼはその……ちょっと……ほんの少しアレなだけだっ!」

「アリーゼさんって本当は嫌われてたりします!?」

 

 アリーゼ達はまさかベルが入団を断るとは思っておらず驚いていたが、最終的にはベルの意志を尊重する事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──▶──▼──◀──▲──

 

 

 

 

 

 

 

 

 ベルが連れて来られた場所はメインストリートから外れも外れた袋小路にある、うらぶれた教会だった。

 廃墟と見間違えてしまいそうな程に建物の所々が朽ちて崩れかかっており、教会のシンボルであっただろう女神像ですら顔が半分しか残っていないという有り様だ。

 

「ヘスティア、居る?」

 

 アストレアは全く躊躇する事も無く玄関口を覗き込む。

 ベルも釣られて覗き込むが、屋内も外観に負けず劣らずの荒れっぷりだった。割れた床のタイルからは土がむき出しになっている所為で雑草が生い茂り、天井には穴が開いていて、穴から差し込む日差しが辛うじて原型を留めている祭壇を照らしていて無駄に神々しい。

 

「誰も、居ませんね」

「いいえ、ほんの少し『神威』を感じるわ。多分奥で寝てるのね」

 

 ベルには全く分からなかったが、同じ神ともなるとほんのわずかに漏れる『神威』の気配も感じ取れるらしい。

 アストレアは構わず進み、祭壇の先にある小部屋に入り、ベルを手招きする。何だかちょっと楽しそうだ。

 小部屋の中を更に進み、棚の裏の階段を下る。そして明かりが漏れているドアを開け放った。

 

「ヘスティア、邪魔するわよ」

「ん……んぅ……ぁ、ふわぁ〜あ……やぁ、アストレアじゃないか、今日はどうしたんだい?」

「──……あ、ぅ……」

 

 紫色のソファーに寝転がって微睡んでいた彼女は、ばっと起きて立ち上がってアストレアを出迎える。

 その幼女と少女の境界線上に位置するような美少女は、これ以上無い程に『無垢』という言葉が似合いそうな雰囲気を纏っており、素人目に見ても善神だと確信出来る『女神』だった。

 艶のある漆黒の髪が耳を隠し、ツインテールにしても腰までの長さを誇る。丸い顔は幼さを強調しているが、その幼さに相反するかのように豊かな胸元に、ベルの目はついつい吸い寄せられてしまう。

 

「今日は貴女の眷族になってくれそうな子を連れて来たのよ」

「えぇ!? それは本当かい!?」

 

 突然の朗報に目を見張るヘスティア。

 ここから先はベル自身が話すべきだと、アストレアはベルの背中を優しく押した。

 

「さあ、頑張って」

「はい……えっと、神様! 僕は、冒険者になって、いつか『英雄』になる為にオラリオにやって来ました、ベル・クラネルです! どうか、僕を貴女の眷族にして下さい!」

「ボクの名前はヘスティアさ! こちらこそよろしくお願いするよ、ベル君!」

 

 

 

 

 ベル・クラネル

 Lv.1

 力:I0

 耐久:I0

 器用:I0

 敏捷:I0

 魔力:I0

 

 《魔法》

 

 【 】

 

 《スキル》

 

 【宣誓一途(リアリス・フレーゼ)

 ・早熟する。

 ・宣誓(ちかい)を違えぬ限り効果持続。

 ・宣誓(ちかい)の丈により効果向上。

 

 【静穏福音(ユノ・メーテルフィア)

 ・魅了、混乱、狂化、咆哮(ハウル)呪詛(カース)に対する超高域耐性。

 ・激昂した際、激昂(いかり)の丈により能力値(アビリティ)超高域強化。

 

 【天空恩寵(ザルド・フェレトリウス)

 ・飲食の際、耐異常を発現。発現済みの場合は強化。

 ・一騎打ちの際、能力値(アビリティ)を超高補正。

 

 

 

 

「こ、これは……!?」

「ヘスティア、眷族(こども)のステイタスの更新をしたらすぐに書き写して『(ロック)』を掛けなさい」

「へ!? あ、ああ、うん?」

「『神聖文字(ヒエログリフ)』が不可視になるように、『神威』を『神の血(イコル)』に込めて刻んで」

「わ、分かった。えっと、こうかな……?」

 

 紹介してもらったからという事もあって、ヘスティアはアストレアの目の前でベル・クラネルに『神の恩恵(ファルナ)』を刻んだ。

 そこでいきなり『スキル』が発現した事に身震いする程驚くヘスティアだったが、アストレアに注意されながらベルの背中に刻まれたステイタスを不可視の状態にする。ちなみにアストレアはヘスティアに正対するように立っていた為、ベルのステイタスは見ていない。

 

「神様? 何かあったんですか?」

「あぁ、いや? 初めて『神の恩恵(ファルナ)』を刻んだからちょっと手間取っちゃってね」

「良かったわね、ベル。早速ギルドに行って冒険者登録してきたらどうかしら?」

「はい! 神様、ちょっと行ってきます!」

 

 アストレアに促され、ベルはステイタスを確認する事も無く早速冒険者登録をする為に出かけていった。

 まあ、通常はステイタスオール(ゼロ)で始まる上にいきなり『魔法』や『スキル』が発現する事もそうそう無いので間違ってはいないのだが。

 

「ありがとう、アストレア」

「……さっきはどうしたの、ヘスティア? かなり驚いていたようだけど」

 

 ベルがこの場に居ない方が話しやすくなると思い、ベルが外に出るように誘導したアストレア。

 気付いていたヘスティアは素直にお礼を言い、先程の態度の理由を述べる。

 

「──いきなり『スキル』が発現したんだ。それも、凄そうなのが3つも」

「それ、私に言っちゃって良かったの?」

「キミとボクの仲じゃないか。それに、流石に『スキル』の内容までは伏せさせてもらうさ」

「それが良いわ。それと、ベルに伝える時は気を付けてね。零細ファミリアの『レアスキル』持ちなんて、他の神が知ったら何をしでかすか……」

「うわぁ……」

 

 アストレアの話を聞いて、色んな神からちょっかいを掛けられまくる光景を幻視したヘスティアは想像だけでげんなりとした。

 

「……それで、アストレア? ()()()()()()()()()()()()()理由は何だい?」

「ええ、ちょっと彼には言えない話なのだけど、実は──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──■──▲──●──☓──

 

 

 

 

 

 

 

 

「えええええええええええ!? 7年前にベル君と会ってたああああああああああ!? まだ下界に居なかったボクの眷族(こども)として!? しかも、たったの半年でLv.5になったって!?」

 

 ヘスティアの絶叫が地下室の中でこだました。

 

「ええ、その時に背中も見せてもらったし、間違い無く貴女の『神の恩恵(ファルナ)』だったわ。オラリオの為に走り回っていたから、それまでどんな『冒険』をしてたかはあまり訊けなかったけれど」

「走り回ってたって……ああ、その頃は確か『暗黒期』とかいう時期だったんだっけ? 確かに一目見て感じたベル君の人格で、もしカオスの気紛れに巻き込まれたなら……うん、どうにかしようとするだろうね」

「彼の活躍で闇派閥(イヴィルス)との闘いはかなり楽になったわ。彼が(もたら)した『未来の知識』のおかげで私の眷族(こども)達は全員生き残れたと言ってもいい。それぐらい、私は彼に感謝してるの」

 

 おかげで5年前(あのとき)に援軍も用意出来たしね、とアストレアは独りごちる。

 

「そっか、そのお礼として彼にボクを紹介してくれたという訳かい?」

「ええ。7年前(あのとき)の彼の介入で少なからず歴史は変わってしまい、放っておくと貴女の眷族(こども)にならなくなってしまう可能性もあったでしょう。だから、まだ恩恵をもらっていない状態の彼を見掛けたら貴女と引き合わせるつもりだったのよ」

 

 貴女が下界に降りて来たって聞いた時は、彼が一体いつオラリオに来るのかしらとずっとそわそわしちゃってたわ、とアストレア。

 

「……でも、たった半年でLv.5になるという事は……」

「それだけの『偉業』を立て続けに達成したって事になるわね」

 

(あんな『スキル』があれば、確かに半年でLv.5になるのは不可能じゃない。……のかもしれないけど……)

 

「一体ベル君はどれだけの苦難に見舞われるっていうんだい……?」

「……だからヘスティア。私の【ファミリア】も協力するから、彼が『英雄』を目指すのをサポートしてあげてね」

「……ああ! ボクの眷族(こども)だからね! 勿論彼の目標を全力でサポートするさ!」

 

 アストレアに聞かされたベルの『未来』を聞いたヘスティアは、ベルが『英雄』になれるように全力でサポートする事を強く誓うのであった……。




 ☆余計な解説(いいわけ)コーナー☆

 【宣誓一途(リアリス・フレーゼ)】について
 大森先生のif小説の『それは遥か彼方の静穏の夢』において、ベル君は『英雄』になる事を決意しています。
 その中に憧憬でも憧れでもないという言葉が出て来るので、相応しい言葉を私なりに考えて当てはめさせて頂きました。

 【静穏福音(ユノ・メーテルフィア)】について
 アルフィアお義母さんと関係がありそうな『スキル』が欲しいな、となりまして。小説名とアルフィアお義母さんの代表的な魔法の詠唱を漢字に。ヘラの別名のユノと、メーテリアとアルフィアを組み合わせた造語にしてみました。
 病気持ちだった母から子への願いが加護のような『スキル』になり、加えてメーテリアさんの逸話を『スキル』に組み込んでみました。

 【天空恩寵(ザルド・フェレトリウス)】について
 せっかくならザルドおじさんとの絆を示すような『スキル』も欲しくなりまして。ゼウスは雷だけじゃなくて天空の神でもあるので漢字はそこから拝借。ゼウスの別名の中に戦争の一騎打ちの神としての名前があるらしかったのでその名を使わせて頂きました。
 これでシルの料理にも耐えられるぞ☆(殴)
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